抄録2023年12月超音波分子診断治療研究会

日本超音波医学会(Japanese Society of Ultrasonic Medicine: JSUM)

令和5年度 第4回超音波分子診断治療研究会

日時:2023年12月18日(月曜日)10:00-17:15(入場9:30から)

場所:福岡市科学館 (サイエンスホール)

--プログラム(Program) --

9:55-10:00 開会の挨拶 

<<<<一般演題セッション1>>>> 10:00−10:30

座長 髙橋葉子 (東京薬科大学)

1)マウス骨由来細胞における骨形成分化に対する低出力パルス超音波の作用

〇田渕圭章1),平野哲史1),古澤之裕2),長岡 亮3),大村眞朗3),鈴木信雄4),長谷川英之3)

(1) 富山大学研究推進機構研究推進総合支援センター、2) 富山県立大学工学部医薬品工学科、3) 富山大学工学部知能情報工学科、4) 金沢大学環日本海域環境研究センター)

マウス骨由来細胞の骨形成分化に対する低出力パルス超音波 (LIPUS) の効果を検討した.MC3T3-E1前骨芽細胞様細胞とATDC5軟骨前駆細胞において,LIPUS (周波数1.5 M Hz, DF: 20%,繰り返し周波数: 1 kHz, 強度: 30 mW/cm2) の1日1回20分間の照射は,対照群に比べて有意にこれらの細胞の分化誘導を促進した.LIPUSの作用に細胞骨格のアクチンフィラメント (AF) やこれと細胞外基質の結合部位である焦点接着斑 (FA) 等が関与することが報告されている.MC3T3-E1細胞のベータアクチンをsiRNAにより部分的にノックダウンした時,LIPUSの細胞分化誘導促進作用が有意に抑制された.LIPUSの効果に少なくとも一部AFが関与することが示された.また,FA 関連タンパク質パキシリンやビンキュリンの特異的抗体を用いた観察から,LIPUS照射によりFA数が増加することが示された.LIPUSの骨由来細胞の骨形成分化促進作用の詳細な分子メカニズムは不明であるが,その作用にAFやFAに関連する分子が関与すると考えられる.


2)がん免疫療法の増強に向けたマイクロバブル介在超音波照射の有用性評価

○鈴木亮1、宗像理紗1、小俣大樹1、小山正平2,3、岡田欣晃4、吉岡靖雄4,5,6、青枝大貴7

(1帝京大学薬学部 2国立がん研究センター先端医療開発センター、 3大阪大学大学院医学系研究科、 4大阪大学大学院薬学研究科、 5大阪大学微生物病研究所、 6一般財団法人阪大微生物病研究会、7長崎大学医学部)

これまでに我々は、新たながん免疫療法剤として免疫賦活化核酸搭載脂質ナノ粒子 (D35LNP) を開発し、T 細胞高浸潤性のがん(Hot 腫瘍)に対する有効性を示してきた。しかし、T細胞浸潤性の低いがん(Cold腫瘍)に対するD35LNPの治療効果は減弱した。このことから、腫瘍微小環境(TME)がD35LNPの治療効果に影響していることが示唆された。D35LNPの治療効果増強には、Cold腫瘍のTMEをHot腫瘍のTMEに転換することが重要であると考えられた。そのため我々はTME転換法について検討し、TMEの転換にマイクロバブルと超音波照射(MB+US)によるがん組織傷害が有望であることを見出した。そこで本研究では、Cold 腫瘍に対するD35LNP治療とMB+USの併用効果を検討した。その結果、D35LNPとMB+USの併用治療において抗腫瘍効果が認められた。このことから、MB+USはD35LNPのCold腫瘍に対する治療効果を増強する有望な併用療法になることが示された。

<<<<一般演題セッション2>>>> 10:30-12:15

座長 貴田浩志 (福岡大学医学部解剖学講座)

3)微小気泡動態評価用極細径キャピラリゲルファントムの開発

〇工藤信樹,佐々木東(北海道大学大学院 情報科学研究院、獣医学研究院)

我々は,ソノポレーションや血液脳関門,血液腫瘍関門の開放などをによる超音波治療について研究し,特に微小気泡が果たす役割を検討してきた.特に,血液関門の開放については,毛細血管内の微小気泡が生じる運動を明らかにし,血管に作用を与えるメカニズムを推定することが重要である.そこで我々は,生体と同程度の硬さを有するゲル内に最小径10ミクロンの管腔を作成する技術を開発し,これを用いて作成したキャピラリゲルファントムを用いた微小気泡のダイナミクスの高速度顕微観察を行ってきた.今回の発表では,ファントムの基本特性を明らかにするととともに,赤血球の存在が気泡のダイナミクスに与える影響,蛍光染料による血管外漏出の評価,毛細血管の力学的特性の推定など,このファントムが拓く新しい可能性について述べる.


4) マイクロ流体技術を利用したナノバブルによる超音波造影能・遺伝子導入能の基礎的評価

〇髙橋葉子、山口泰暉、淡路賢斗、根岸洋一(東京薬科大学)

これまで我々は、超音波造影、および遺伝子・核酸導入ツールとしてリポソーム技術を基盤としたナノバブル(NBs)を開発し、その有用性を報告してきた。本研究では、均一性の高い脂質ナノ粒子の調製技術として注目されるマイクロ流体技術を活用し、新たなNBs調製法の開発を進め、その有用性評価を行った。はじめに、マイクロ流路に脂質溶液を超音波造影ガスとともにアプライし、外観も含めた物性を指標に調製条件の比較検討を進めたところ、両者を一定圧以上で流路にアプライすることで、極めて短時間で白濁したNBs溶液が得られた。また、粒子径や個数濃度も従来のNBsと同等であり、超音波造影効果や細胞内遺伝子導入効果を有することも示された。今後はin vivoにおける有用性評価も含めた更なる最適化を進め、本調製法の確立を図る。


5)低周波数超音波とナノバブルによる中枢神経へのmRNAの送達

〇古賀隆之1,2、貴田浩志1、山崎裕太郎1、Feril Jr Loreto B.1、遠藤日富美1、安部洋2、立花克郎1(1.福岡大学医学部 解剖学講座、2.福岡大学医学部 脳神経外科)

従来、超音波とマイクロバブルを併用した薬物送達が臨床への応用が期待され、活発に研究されてきた。マイクロバブルよりも小さい直径1μm以下の超微細気泡であるナノバブル(NBs)は生体組織のより深部に到達可能であるとされ、近年では盛んに研究が行われている。一般的に気泡半径と超音波の共鳴周波数は反比例しており、NBsの詳細な超音波応答性は明らかではない。低周波数超音波に対するNBの応答性を測定した。また一般に周波数が低ければ骨への透過性が上昇するため、低周波数超音波は経頭蓋による治療に適している。我々が行っている低周波数超音波とNBsを用いた中枢神経組織への遺伝子送達について解説する。


6)マイクロバブルと超音波を用いた脳腫瘍へのシスプラチン送達

〇小俣大樹1、萩原芙美子2、宗像理紗1、丸山一雄3、鈴木亮1(1帝京大学 薬学部 薬物送達学研究室、2昭和薬科大学 薬剤学研究室、3帝京大学 薬学部 セラノスティクス学講座)

近年、マイクロバブル (MB) と超音波を用いた血液脳関門 (BBB) オープニング技術が注目され、脳腫瘍を含む中枢神経系疾患治療への応用が期待されている。これまでに我々は血中滞留性の高いMBを開発し、超音波と併用することで効率的にBBBオープニングできることを報告してきた。そこで本研究では、様々ながん治療に使用されるものの脳移行性が低いシスプラチンに着目し、脳腫瘍治療におけるMBと超音波を用いた薬物送達の有用性ついて検討した。脳腫瘍モデルマウスに、シスプラチンとMBを投与し、腫瘍移植部位に超音波を照射した。その結果、シスプラチン単独投与群と比較して、シスプラチンにMBと超音波を併用した群で、脳腫瘍における高いシスプラチン移行量が認められ、生存期間が延長した。このことから、脳腫瘍治療において、MBと超音波を用いた薬物送達法は有用であることが示唆された。


7)集束超音波と高分子複合体を組み合わせた脳選択的AAV送達システムの構築

〇喜納 宏昭3  本田 雄士1,2,  松平 望1,2,  Liu Xueying3 , 片岡一則3,  西山伸宏1,2  (ナノ医療イノベーションセンター3、東京工業大学1, 2)

AAVを用いた遺伝子治療の臨床試験において、肝毒性は深刻な問題の一つである[Nat Biotechnol.] したがって、肝臓や腎臓などの健常組織・臓器への非特異的な蓄積を抑制する新しいAAVデリバリーシステムが早急に必要とされている。 我々は最近、タンニン酸(TA)とフェニルボロン酸を共役させたポリマーからなる生体分子のスマートデリバリーシステムを開発した[Biomacromolecules 2020 Sep 14;21(9):3826-3835, PCT/JP2020/ 021301]。 AAV9を低pHで放出するように設計されたSmartly-Polymer Coated AAV9 (AAV9 ternary complex)は、肝毒性を抑制しながら脳への遺伝子導入選択性を向上させ、FUSシステムとの組み合わせにより脳への遺伝子導入効果を著しく向上することを明らかにした。また、スマートリーポリマーコートAAV9による遺伝子導入の脳内局在を調べた結果、裸のAAV9と同様に、グリアと神経細胞への導入が確認された。我々のデータは、AAVのコーティングは、肝臓へのAAVベクターの蓄積 毒性を回避し、脳へのAAV9の導入を飛躍的に上昇させることが確認された。


8)神経細胞に対するNogo-Aと低強度パルス超音波の影響

〇佐々木東、滝口満喜 (北海道大学大学院 獣医学研究院) 

損傷を受けた中枢神経の再生は困難であり、神経細胞の成長が緩やかなこと、各種再生阻害因子の存在が原因の一つと考えられている。低強度パルス超音波が持つとされる細胞刺激効果によって、神経細胞の神経突起の成長促進および神経軸索伸展阻害因子への拮抗を狙い、in vitroでの基礎検討を開始した。ラット初代培養大脳皮質神経細胞を神経軸索伸展阻害因子の1つであるNogo-A存在下にて培養し、低強度パルス超音波を照射した。光学顕微鏡での経時的観察においては、低強度パルス超音波照射により神経細胞の生存が延長する傾向が示唆された。

9)BBBオープニング後の細胞選択的核酸医薬送達を目的とした配向性制御型抗体修飾脂質ナノ粒子の開発

〇神谷万里子1,2、松本 眞2、小川昂輝1、向井英史1,2、川上 茂1,2 (1 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科、2 長崎大学 薬学部)

我々は, 集束超音波照射による脳血液関門(BBB)オープニングを利用し, mRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNP)を照射部位に対して高効率に送達できることを報告した. 大半の粒子はCD31陽性内皮細胞およびミクログリア細胞へ取り込まれた。本研究の目的は、脳内において細胞選択的にmRNA-LNPを送達するために新規抗体修飾脂質ナノ粒子製剤を開発することである. まず, 抗体のFc領域へ特異的に結合するFc領域結合ペプチド(FcBP)を, 粒子の外側へ配向性を維持した提示が可能となるよう設計したFcBP脂質を設計・合成した. 多数のがん細胞で発現するHER2および抗HER2抗体を選択し, FcBP/抗HER2抗体修飾mRNA-LNPの細胞結合性は, 未修飾群と比較して約100 倍に増加し, ルシフェラーゼ発現も顕著に増加した. このFcBP-抗体修飾システムは, 標的に応じた抗体の選択が可能であるため, 今後の幅広い標的細胞への適用が期待できる.

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12:15-14:00

昼休み 105分間

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<<<<一般演題セッション3>>>> 14:00−14:45

座長 立花克郎 (福岡大学医学部解剖学講座)

10)糖水溶液の種類によるファインバブル生成の比較

〇内山弘規1)・大月竣平1) ・森妃菜1) ・立花克郎2)・松隈洋介1) (1 福岡大学 工学部 化学システム工学科 2 福岡大学 医学部 解剖学教室)

本研究では、単糖類と二糖類の計5種類の水溶液を用いて、マイクロバブルとファインバブルの生成を試みた。気泡は、垂直に気液を高速加振させる方法で生成させた。はじめに、マイクロバブルの発生個数が最も多い条件について調べた。また、それぞれの糖水溶液の物性についても調べた。垂直加振直後に、生成するマイクロバブルは、糖水溶液の種類によらず約25μmであった。次に、マイクロスコープを用いてファインバブルの生成個数を調べた結果、本実験で用いた5種類の糖水溶液の中で、最も多くファインバブルが生成するのは、スクロース水溶液であった。

11)ウルトラファインバブルと超音波照射のバイオフィルム形成への影響

〇立花克郎、高田 徹1(福岡大学医学部 解剖学講座、1腫瘍・血液・感染症内科)

医療現場や口腔内プラークなどバイオフィルムは様々な問題の原因となっている。今のところ有効な対処法は見つかっていない。今回、我々はバイオフィルムに対しウルトラファインバブルと超音波エネルギーを併用した新しい対処法を検討した。培養プレートにバイオフィルムを形成させるキット(in vitro)を用いて、菌(表皮ブドウ球菌)の成育度を足テスることで、ウルトラファインバブル単独または超音波照射との併用した群で比較した。その結果、ウルトラファインバブルのみでもバイオフィルムの抑制が認められた、超音波照射することでさらに効果が促進された。


12) 医療応用に向けたウルトラファインバブルの基礎的検討

〇竹内堂朗、福重香、畑山直之、内藤宗和(愛知医科大学 医学部解剖学講座)

ウルトラファインバブル(UFB)は、生物に対する種々の生理活性作用や、圧壊衝撃による洗浄作用など、様々な特徴を有しており、その応用が図られている。しかし、その作成装置は農業など多量を必要とする産業向けの発展が先行しており、少量、精密、無菌性といった医療やバイオテクノロジーに求められる作成装置の開発は発展途上にある。我々はこれまでに、ベンチュリー構造を有した少量閉鎖型のUFB作成装置を開発し、その装置により作成されたUFBを用いて生理活性作用等を評価してきた。本研究では、種々の作成条件がUFBの物性に与える影響や、界面活性剤や超音波を利用したUFBの医療応用への可能性を報告する。

<<<<招待講演>>>>   14:45−15:30

座長 立花克郎 (福岡大学医学部解剖学講座)

ファインバブルの創薬・創剤における利活用の可能性および経口・経皮適用時の生体への安全性評価

武田 真莉子 (神戸学院大学薬学部 医療薬学領域 製剤系 薬物送達システム学研究室)

ウルトラファインバブル(UFB)は、気体デリバリーキャリアとして、生理活性を有する気体をUFB水として「飲む」、すなわち取り扱いが難しい気体を自己投与剤形として生体が摂取でき、気体の生理活性作用を簡便に利活用できる可能性がある。また、UFBは負電荷を有するコロイド粒子であるため、それ自身が正電荷を有する生体成分との相互作用により様々な作用を発現させる可能性も考えられる。そのような観点においては、UFBは創薬において “新たな医薬モダリティ”と位置付けられる可能性を秘めており、医療やDDS分野における活用が期待される。このような背景から我々は、UFBを長期安定保存できるNanoGAS®水に着目し、生理活性気体を封入したNanoGAS®水を用いて、創薬および創剤における新たな素材としての安全性や有用性を検証し、基礎的知見を蓄積している。本講演では、これまでに得られた上記の知見を紹介し、環境にも生体にも優しい素材であるUFBが医療分野における革新的な創薬・創剤材料になる可能性、あるいは疾病予防効果や健康増進機能を備えた機能水としてヘルスサイエンス領域で社会実装される可能性を議論したい。

15:30  ------休憩------- 15:45


<<<<特別講演>>>>15:45−16:45

座長 工藤信樹(北海道大学大学院 情報科学研究院)

1.「光音響イメージングによる分子診断治療の現況と展望」

西條芳文 (東北大学大学院医工学研究科)

短パルス光を照射した際に生じる光音響波の検出により微小血管を可視化する光音響イメージングは21世紀に最も発展したイメージングモダリティの1つである.光音響イメージングにおける空間分解能と深達度はトレードオフの関係にあり,両者は照射した光の深達度と発生した光音響信号の中心周波数に依存する.当研究グループでは,(a) サブミクロンの方位分解能を有するOR-PAM,(b) MEMSスキャナによる高速イメージングが可能なAR-PAM,(c) 2波長と超音波の送受信が可能なAR-PAM,(d) パラボリックアレイトランスデューサを用いたPAT,(e) リニアトランスデューサとLEDを用いたPATなどの種々の分解能,深達度を有する光音響イメージングシステムを開発あるいは保持している.マルチスケールな光音響イメージングの意義は,OR-PAMによる細胞レベルでのイメージングによる基礎データをPATによる臨床診断に応用可能なことである.光音響イメージングにおける分子診断のプローブとしては,金ナノ粒子や金ナノロッドなどが主に用いられているが,カーボンナノチューブなどの新素材,ICGやメチレンブルーなど既に臨床応用されている物質の形状変化などにより分子診断が一層進むことが期待される.

2.「超音波ガイド下気泡援用HIFU治療における研究開発と動向」

吉澤 晋 (東北大学 大学院工学研究科)

気泡はHIFU治療の機械的,化学的,熱的治療効果を増強できることは以前よりよく知られている.近年になって,強力なHIFUパルスによって体内のキャビテーション気泡を局所的に制御できるようになってきたことから,キャビテーション気泡を利用したHIFU治療の治験が日米欧で次々に開始された.さらに,今年になってHistotripsyという軟部組織破砕治療を行う機器がFDAの承認を得て,キャビテーション気泡HIFU治療は拡大の兆しを見せている.キャビテーション気泡を利用したHIFU治療では,イメージガイドとして超音波が使われることが多い.通常の熱的HIFU治療では,MRガイド方式と異なり,超音波ガイド方式はリアルタイムに治療領域を把握することは難しいが,気泡であればリアルタイムに可視化し,術者に今治療している領域を提示することが可能である.しかも,超音波イメージングでは,気泡エコー信号の非線形性を利用して気泡を強調した画像を得ることができる.本発表では,キャビテーション気泡を熱的に利用するためのHIFU送信系ハードウェア,気泡を高コントランストでイメージングするための超音波送受信方法などについて紹介する.


<<<教育講演>>>>16:45-17:15

座長 ロリト・フェリル(福岡大学医学部解剖学講座)

大気圧プラズマ, 超音波, および放射線の生物作用―活性酸素種の役割

近藤 隆 (名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター)

プラズマは固体・液体・気体に続く物質の第4の状態である. 気体を構成する分子が電離し, 陽イオンと電子に分かれて運動している状態であり, 電離気体に相当する. 近年, 低温大気圧でプラズマ(以下低温プラズマ)を発生させる技術の進歩とともに, これを創傷治癒, 殺菌・滅菌, がん治療等, 多くの医療分野や農業分野への利用が注目されている. 低温プラズマの特徴として, 多量の活性酸素種を生成するとともに, 照射した溶液が生物活性を有することがあげられる. 放射線や超音波も水溶液中に活性酸素種を生成するがその生成機序は異なる.本講演では初めに大気圧プラズマの生成と生物作用について概説する。次に白金ナノ粒子を用いた細胞死を指標に, 超音波, 放射線, および大気圧プラズマとの比較結果について紹介し, 活性酸素種の役割について考察する.

17:15-1 閉会の挨拶