研究内容

中野研究室では以下の3つのテーマを大きな目標に研究をしています。

・新口動物の進化

・後生動物の進化

・海産動物の多様性

具体的には以下の研究を行っています。

1.平板動物の生物学

平板動物は直径約0.5mmのアメーバ状の海産動物で、器官と大部分の組織を欠き、神経細胞や筋肉細胞もありません。その単純な体制から祖先的な特徴を残している動物の一つとみなされ、系統学的研究もさかんで2008年にゲノムも報告されています。しかしながら、発生過程や精子は未だ記述されていません。下田臨海実験センターではこれまで採集の報告がありませんでしたが、私は協同研究者とともに2010年に採集に成功しました。平板動物の発生過程の観察及び有性生殖可能な系統の確立を最大の目的としつつ、下田産の平板動物の形態学的、生殖学的、生態学的、系統学的研究を行っています。

2.珍渦虫の生物学

珍渦虫は、1cm前後の海産動物で、腹側には口があるものの、肛門はなく、中枢神経系や生殖器官、体腔、排出器官など主要な器官がほぼありません。この単純な体制のため、その系統学的位置は長く謎とされてきました。私は2004年から珍渦虫の発生学的・系統学的・形態学的・生態学的研究に取り組んでおり、2011年には協同研究者とともに珍渦虫は新口動物内の新しい門、「Xenacoelomorpha門」に属することを明らかにしました。現在、珍渦虫はスウェーデンでのみ定期的な採集が可能ですが、他の場所からも採集例はあり、今後は下田近辺など日本国内でも珍渦虫を探索していきます。

3.海産動物の多様性

現生のほぼ全ての門には海産性のプランクトン型幼生をもつ種が存在し、多くのグループでは代表的な幼生というものが知られています。しかし、これらの代表型は発生学的研究の進んでいる一部の種に基づいて提案されていることもあり、それらのグループでも大半の種の発生が未報告である場合も多いです。また、発生の記述のある種においても、何十年前に記述されて以来、科学的な報告がその後ない種も目立ちます。本研究では発生学的研究がほとんどない種やまったくない種の発生様式や幼生型を記述し、それらの比較発生学的研究を行うことで幼生型の多様性を明らかにするとともに、そこから共通性を見いだし、後生動物の幼生型の起源やその進化を解明することが目的です。特に無腸類、クラゲムシ、トリノアシなどに注目する予定です。

4.その他

相模湾、駿河湾は世界的に見ても豊富な動物多様性をもっていることが知られており、下田臨海実験センター近辺でも多くの動物種の採集が可能です。この特性を活かして、いろいろなことができればと考えています。