宮子姫物語

九海士の里に住む海士の夫婦は、子宝に恵まれないことから氏神の八幡宮にお祈りしたところ、女の子を授かり、名前を「宮子」と名付けました。ところが大きくなっても宮子には髪の毛が生えず、両親は悲嘆にくれていました。 

そんなある日、母親が海に潜っていると、海底に光り輝くものがありました。それは黄金色の小さな小さな観音様でした。持ち帰った観音様をお祀りして毎日お祈りを続けていると、宮子に髪の毛が生え始めました。髪はどんどん伸び、里の人々は宮子のことを「髪長姫」とうわさするようになりました。 

ある日、宮子が黒くてつやつやした髪をすいていると、ツバメが飛んできてその髪を1本くわえて飛び去りました。 

ところかわって奈良の都で藤原不比等は自分の屋敷につくられたツバメの巣から長い黒髪が垂れているのを見つけました。当時、長い黒髪は美人の証で、不比等は早速、髪の主、宮子を探し出し、養女に迎えいれました。 

不比等の養女となった宮子は、のちに文武天皇の后となり、奈良の東大寺を建立した聖武天皇の母となりました。宮子は長い髪を授けてくれた観音様をお祀りしたいと文武天皇にお願いし、天皇は紀道成に命じて立派なお寺を造らせました。それが道成寺と言われています。