ようこそ!不便益システム研究会のページへ!

不便益システム研究会とは?

計測自動制御学会「部門連携・活性化委員会」の下位組織(以前は先端融合システムズアプローチ創出委員会の下位組織)である不便益WGが主催する形で,2012年7月から2ヶ月に一度ほどのペースで不便益に少しでも関係する話題を提供しあい,議論する場を設定しました.

計測自動制御学会の会員資格や,教員や学生,会社員などにも関わらず,不便益に少しでも興味ある方はお気軽にご参加いただき,活発に議論していただければ幸いです.

参加費は無料です.参加を希望される方は各研究会の参加申込ページからお申し込みください.

また,何か質問がある方は下記のアドレスにご連絡ください.

連絡先


第37回不便益システム研究会の案内


AIは現在進行形で加速度的に発達しつつある.特に,ごく最近になって登場した大規模言語モデルは人間との流暢な対話や高度な資格試験における好成績などを実現し,様々な分野における爆発的な応用可能性を秘めているものとして大いに期待を集めている.一方で,AIが人間の仕事を奪うのではないか,あるいは人間を不要と見なして反乱し,人類を滅ぼすこともあり得るのではないかなど,大きな不安もまた同時に集めている.このような状況において,AIがどこまで自律的であり得るのか,そもそも AIと人間の違いは何か,人間にできて AIにはできないこととは何か,などの問いに答えることは,喫緊の課題である.

本話題提供では,このような問いに答えるためのヒントになると思われる,話題提供者自身の研究に基づく3つの研究成果を紹介する.具体的には,1. 人間の認知バイアス(非合理的な判断を誘導してしまう心理傾向)を実装すると AIの性能が向上する,2.  真性粘菌アメーバはあえて環境を多様に解釈している,3.  AIを天然知能化*すると性能が向上する(と共にカオスの縁領域が拡がる),という研究結果を示す.これらの結果は一見互いに関係ないように思えるかもしれないが,いずれも知能の在り方における不便益的様相において,即ち,通常は非合理的であると想定される在り方がむしろ別の軸での益をもたらしているという点で,共通している.以上の結果を基に,AIと人間それぞれの立ち位置を論じる.

*:天然知能とは早稲田大学の郡司ペギオ幸夫,日本大学の浦上大輔らにより提唱されている概念で,「観測・知覚不可能な『外部』に対しても存在を許容し受容する能力を持つ知能」と定義されている.