溶液プロセスを用いた薄膜作製とそのプロセス・構造評価および電子状態評価
(東京大学 特任助教)
(2016年11月ー)
塗布プロセスを用いて作製した非晶質有機半導体薄膜の分子配向評価
超音波霧化噴霧法を用いた無機、有機無機ハイブリッド薄膜の作製
可視光水分解光触媒を目指した複合アニオン化合物薄膜の作製とその電子状態評価
(東京大学 特任研究員)
(2015年4月—)
① 窒素プラズマアシストPLD法による酸窒化物薄膜の作製
酸窒化物は酸化物よりも狭いバンドギャップを持ち、可視光領域の光を吸収することから、可視光水分解光触媒としての応用が期待されている。本研究ではパルスレーザー堆積法と窒素プラズマソースを組み合わせることによって、高品質な単結晶酸窒化物薄膜を合成することで、高い太陽光変換効率を持つ光触媒電極の作製を目指して研究を行った。
② La5Ti2MS5O7(M=Cu, Ag)光カソード電極におけるピンポイント電子状態解析
La5Ti2CuS5O7 (LTC)、 La5Ti2AgS5O7 (LTA)はそれぞれ1.9 eV、2.2 eVと可視光領域にバンドギャップを持つ酸硫化物半導体であり、可視光水分解光触媒電極として期待されている。特にLTCでは、TiサイトをScやGaなど低価数のイオンで置換することでカソード光電流の増大が報告されている。本研究では、nmオーダーで局所的に電子状態を調べることができる3D-NanoESCAを用いて試料をプローブし、下部電極の影響を最小限に抑えることで、LTC、LTAにおけるGaドーピングの有無による局所電子状態変化を調べた。その結果、カソード光電流の増大が報告されているLTCにおいてのみ、キャリアドーピングに伴う化学ポテンシャルシフトが観測された。このことはホールキャリアドーピングが観測されたカソード光電流の増大の起源であることを強く示唆する結果である。
E. Sakai et al., Nanoscale 8, 18893-18896 (2016).
酸化物薄膜における金属絶縁体転移に関する研究(東京大学、KEK-PF博士研究員)
(2010年4月—2015年3月)
①WドープVO2におけるパイエルス不安定性と電子相関の競合状態
VO2は室温付近で二量体化を伴う金属絶縁体転移を示すことが知られている。このMITが二量体化に伴うバンド構造の変化(パイエルス転移)と電子相関による局在化(Mott転移)のどちらに由来するかという問題は古くから議論されてきた話題であるが、双方の効果が重要な役割を果たしていると現在では考えられている。近年Wを化学ドープすることによって、低ドープ領域(x = 0—0.08)で転移温度が低下する一方で、高ドープ領域(x = 0.08—0.33)では逆に転移温度が上昇するという興味深い振る舞いを示すことが報告されている[1]。本研究では、WドープのVO2に対して、光電子分光、酸素K端吸収分光を用いることで、VO2においてWのドープ量に依存してパイエルス転移が重要な領域からMott転移が重要な領域へと遷移することがこの振る舞いの起源であることを明らかにした。
E. Sakai et al., Phys. Rev. B 84, 1951432 (2011).
②RNiO3薄膜における次元性制御金属絶縁体転移と界面ダイポールの形成
酸化物ヘテロ構造を利用して擬二次元化したLaNiO3(LNO)において新奇な絶縁相が生じることが報告されている。膜厚依存のLNO薄膜をLaAlO3(LAO)基板上に作製し、その膜厚依存の電子状態変化を明らかにすることによって、この金属絶縁体転移が次元性制御によるバンド幅制御によって生じていることを明らかにした。この傾向はPrNiO3薄膜においても同様に見られた。さらに、基板によるLNO薄膜の電子状態の違いを調べることによって、LNO/SrTiO3 (STO)界面において界面ダイポールが形成されることを明らかにした。
E. Sakai et al., Phys. Rev. B 87, 075132 (2013).
E. Sakai et al., Appl. Phys. Lett. 104, 171609 (2014).
青色LED用新規透明電極の開発(神奈川科学技術アカデミー・常勤準研究員)
(2009年4月〜2010年3月)
神奈川科学技術アカデミーでは透明機能材料グループに所属し、機能性透明酸化物に関する研究を行った。具体的にはNbをドープした二酸化チタンを透明電極として、青色発光ダイオードの透明電極として応用することを目指した。二酸化チタンベースの透明電極では、二酸化チタンが化学的に安定であることから、デバイス構造作製の困難さが問題となっている。本研究では、濃硫酸をエッチング液として用い、最適な温度で処理することで、二酸化チタンが適切な速度で溶解することを明らかにした。このエッチング技術とプロセス技術と組み合わせることで二酸化チタンを望むデバイス構造へと加工することが可能になる。
J. Ohkubo, Y. Hirose, E. Sakai, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 50, 018002 (2011).
遷移金属ドープ二酸化チタンにおける室温強磁性発現機構の解明(同博士課程)
(2006年4月〜2009年3月)
指導教官:長谷川哲也 教授
室温で強磁性を示す希薄磁性半導体(diluted magnetic semiconductors: DMS)である遷移金属ドープの二酸化チタンの室温強磁性発現機構の解明を目指して研究を行った。本研究では、鉄ドープ二酸化チタンにおいて強磁性の発現は単純なキャリア量のみでは決まらないこと、強磁性発現には鉄近傍の電子状態変化が不可欠であることを明らかにした。
E. Sakai et al., Appl. Phys. Express 3, 043001 (2010).
E. Sakai et al., J. Mag. Mag. 333, 130 (2013).
深さ分解磁気円二色性(XMCD)による磁性薄膜の研究(東京大学学部・修士課程)
2003年4月〜2006年3月
指導教官: 太田俊明 教授
X線磁気円二色性(XMCD)に深さ分解能を付加した深さ分解XMCDを用いて磁性薄膜の磁気異方性の研究を行った。深さ分解XMCDをCu基板上のNi薄膜に対して適用し、CO分子の吸着によりNi薄膜表面の軌道磁気モーメントだけが弱まることで、容易磁化方向が回転する原因になっていることを明らかにした。
K. Amemiya, E. Sakai et al., Phys. Rev. B 71, 214420 (2005).
K. Amemiya, E. Sakai et al., Phys. Rev. B 72, 201404(R) (2005).