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上山大信(うえやまだいしん)

135-8181 東京都 江東区 有明 3-3-3

武蔵野大学 工学部 数理工学科 教授、アーティスト

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研究内容

模様を科学する

 

数学とシミュレーションで解き明かす、自己組織化の神秘

 

身のまわりの様々な模様


自然界には様々な模様が見られます。動物園や水族館に行けば、生物の表皮模様の多様さに驚かされます。シマウマやキリンの模様をじっくり観察すると、それぞれの個体によって模様が微妙に異なる事もわかります。また、我々の生命を支える重要な器官である心臓は電気的に制御されていますが、その電気が心臓表面上を螺旋状に流れ出すと心室細動と呼ばれる死に至る危険な状態になります。砂漠には人知れず風紋ができあがり、空を見上げれば季節によって様々な形態の雲が観察されます。部屋に置いてあるサボテンも、その形状のユニークさと同時に、よくよく見るととげが渦巻きのように並んでいることに気が付きます。木々を見上げると、細かく伸びる枝の形、空を覆って光を逃すまいとする葉の巧妙な配置に驚きを感じます。これらの「模様」は生物現象、物理現象と様々ですが、いったいどのような仕組みでできあがるのでしょうか。

数学とコンピュータを用いて、パターン形成の謎に迫る


私は数学とコンピュータを用いて自然界に見られる様々な模様(パターン)が出来上がるメカニズムを探る研究を行っています。具体的には、対象となるパターン形成現象に関する数理モデル(主に偏微分方程式)を導出し、コンピュータを用いてその方程式の解を求めます(シミュレーションと呼びます)。作成した数理モデルが対象となる現象に対して適切であれば、その方程式を数学やコンピュータを用いて詳しく調べる事で模様ができあがる仕組みを理解する事ができます。そのようにして求めた偏微分方程式をシミュレーションすると、縞々模様や螺旋模様、雪の結晶のような模様、時間と共に細胞分裂のように分裂し増殖する模様など、時間的にどのように模様が出来上がるかといった情報も得ることができます。方程式の解といえば数字という印象が強いと思いますが、このような複雑な模様が方程式の解なのです。私は、シミュレーション技術と分岐理論と呼ばれる数学の理論を用いて、複雑な振る舞いを示すこれら方程式の解の出自を調べ、実際の現象に関して理解を得る研究を行っています。これらの知見は、例えば生じる事が好ましくない模様(心臓上に現れる螺旋波など)の制御にも役立つと期待されています。

自己組織化機構を応用に繋げる

これら自然界に見られる模様形成の特徴は、最終的に出来上がる規則的で美しい模様について細かな指示を与えることなく、勝手に出来上がるところにあります。このような、自律的に構造が出来上がる現象を自己組織化と呼びますが自然界の模様形成は、生物・非生物の区別なく、ほぼ全て自己組織化によって出来上がります。手をかけることなく規則的な模様を作り出す自己組織化は究極的な物作りであり、生物はそのような自己組織化をうまく活用して模様や形を作っています。私はそのような自己組織化を数理的に理解するだけでなく、工学的な応用に繋げる研究も行っています。例えば東京湾の形状をコンピュータに入力し、東京湾の形状内で模様形成の方程式をシミュレーションすると、東京湾の複雑な形状に合わせるように斑点模様が自動的に現れ配置します。それら斑点の位置をつなぎ合わせることで規則的で一様な三角形の集まり(これを三角形メッシュと呼びます)を得ることができます。このように、複雑な領域を三角形の集まりで表現することは、例えば東京湾における海流のコンピュータシミュレーション等を精密に行う為に欠かせません。生物は自己組織化の宝庫ですので、今後も数学とコンピュータを活用した解析を用いて神秘的な現象に切り込み、有用な知見を得るべく研究をすすめたいと思います。 

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