Research

時間生物学研究室は2003年4月に富岡憲治名誉教授の岡山大学への着任により発足しました。

2021年に富岡教授が退官後は、吉井が研究室を引継ぎ今に至っています。


私たち地球上の生物は、24時間周期の環境変化の中で生きています。繰り返し起こる24時間の変化に適応するために、多くの生物は体内時計(概日時計)を持っています。夜寝て、昼には活動するという一般的な私たちの行動は、古くはバクテリアから続く生命の根本的な活動です。そのリズムは、体内時計によって生み出されています。

当研究室の研究テーマは、その「体内時計の謎に迫る」ことです。


キイロショウジョウバエの脳には体内時計を制御する神経細胞群があります。約150個の神経細胞群が“時計細胞”つまりリズムを生みだす神経細胞群であると言われています。

私の疑問は,なぜショウジョウバエのように比較的単純な動物でさえ,脳内にそれほど多くの時計細胞が必要なのかということです。

2009年の論文で私たちは,光に強く同調する細胞と,温度に強く同調する時計細胞群があることを報告しています(Yoshii et al., 2009, J Biol Rhythms)。また,雌雄の相互作用に影響を受ける時計細胞も発見しました(Hanafusa et al., 2013)。つまり,それぞれの時計細胞は別々の役割を持っており,150個の時計細胞達が互いに影響し合って,環境に適応したリズムを生みだしているのではないかということが考えられます。

この仮説を証明するためにキイロショウジョウバエの高度な遺伝学的手法を用いて,現在様々な角度から時計細胞の神経ネットワークを研究しています。

キイロショウジョウバエの脳は比較的少数の神経細胞より構成されています。このことから,神経ネットワークを研究する上で非常にすぐれた実験動物と言われています。わずか700μm程度の小さな脳が我々の大きな脳と同じように体内時計を持つのです。キイロショウジョウバエの脳を研究することで,より複雑な脳の解明にも貢献することができます。

コラム

「脳の中の体内時計 ~キイロショウジョウバエの研究より~」



キイロショウジョウバエの脳と時計細胞