Research
研究テーマ 「イトゴカイ科多毛類の系統分類学的研究」
イトゴカイ科(Capitellidae)ってなに?
- ミミズやヒルなどと同じ環形動物門に属するゴカイのなかま
- 触手(感触手や副感触手)や足(疣足)を持たないシンプルな形,まるで糸やひものよう
- 他のゴカイにはある見分けるための形質(分類形質)がほとんどなく,細かい剛毛の観察などが必要→同定に非常に手間がかかってしまう
- 体の長さは0.5~50 cm,太さは0.05~1 cm程度
- 干潟や砂浜,アマモ場などでよく見られる
- 汚泥域に生息できる種は水質浄化システムとしての利用が提案されたこともある(特許がとられていた)
- 汚泥内に含まれる毒物の耐性実験なども行われている
- ゲノム配列がすでに決定されており,進化発生学的な研究の材料としても多く用いられている
研究内容
1.日本のイトゴカイ相の解明
目的: 日本国内に「どんなイトゴカイが,どこにすんでいるのか」を調べる
日本国内には12属16種のイトゴカイ類の生息が報告されている(2015年9月時点).しかしながら,「種名はわからない(種同定されていない)」もしくは「世界中どこにでもいる種(広域分布種)」とされていることが多い.これらのほとんどは生態学的な研究や環境調査などによる報告であり,詳細な形態観察やDNAの塩基配列の決定はほとんど行われていない.
そこでまず,日本国内に「どんなイトゴカイが,どこにすんでいるのか」を調べている.さらに,「DNAバーコーディング」や「メチルグリーン染色法」などの簡単な同定方法の確立も視野に入れて,研究を行っている.
方法
- 日本各地を飛びまわり,日本中のイトゴカイ類を集める
- イトゴカイ類の形の観察を行う
- 実体顕微鏡で体の形を観察(体節の数や剛毛の配置など)
- 光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて剛毛などの細部の構造の観察
- メチルグリーンを用いて体の染色を行い,体表がどのような模様に染色されるかを観察する
- DNAの塩基配列を決定する
結果
- イトゴカイの分類学的研究
日本産Mediomastus属について
- 属の定義以下の4点で他属と区別可能(Tomioka et al. 2014)
- 囲口葉(第一体節)に剛毛が無い
- 胸部体節が10~12体節
- 第二体節から第五体節の背腹に一対ずつ針状剛毛束(Capillary chaetae)を有する
- 第六体節以降は背腹に一対ずつ被覆鉤状剛毛束(Hooded hooks)を有する
- 世界より14種が知られている
- Tomioka et al. 2014において,既知14種が同定可能な検索表を示している
- 日本国内において,種レベルでの報告が行われている種は以下の5種である(Tomioka et al. 2014; 今島 2015).
- オビイトゴカイ Mediomastus californiensis Hartman, 1944
- ワーレンイトゴカイ Mediomastus warrenae Green, 2002
- ツメカクシイトゴカイ Mediomastus opertaculeus Tomioka et al., 2013
- Mediomastus duobalteus Tomioka et al., 2014
- Mediomastus hanedaensis Tomioka et al., 2014
- 種レベルでの同定が行われている例は少なく,上記以外にも更なる種が生息してる可能性が高い.現に,今島(2015)において,種名未確定ではあるが異なる2種(サンリクイトゴカイ,モロイソイトゴカイ)が報告されている.
2.イトゴカイ類の系統関係の解明
coming soon...
3.イトゴカイ類の...
coming soon...