モンゴルは中国とロシアに隣接する国で、岩の多い広大な大地と遊牧民文化で知られています。首都はウランバートル。1990年代初頭に社会主義体制から大統領制に移行し、鉱工業を中心に経済成長を遂げました。2000年代に入ると鉱物資源の下落や自然災害による農牧業への打撃などを背景に成長率が鈍化し、貧富の格差が広がり、職を求めて地方から首都ウランバートルへの人口流入が始まりました。
伝統的な移動式住居は、モンゴル語でゲル と呼びます。現在、人口の約320万人のうち、約140万人が首都ウランバートルに住むといわれています。日本の4倍もの国土の7割が放牧地ですが、すでに国土面積の8割が砂漠化している説もあります。人口に占める遊牧民の割合は2割と減少傾向にあり、定住化が進みつつあるといいます。
そんなウランバートルには集合住宅が多いですが、ゲルもよくみかける。牧草地を求めて移動する必要のない、都市に定住するためのゲルです。家賃が安いという理由でゲルに住む人もいれば、家の庭に建てたゲルにあえて住む人もいます。
2019年5月に寒さの厳しいこの国で、政府は石炭の使用禁止を発表しました。
モンゴルでは現在でも、多くの家庭で石炭が使用されている。それにも関わらず、このような大胆な政策に踏み切った背景にあるのが、深刻な大気汚染です。
人口の集中も理由です。
2018年の時点でモンゴルは約320万人の国民を抱えるが、そのうち約45%が首都に集中しています。
ウランバートルのあらゆる健康被害にはPM2.5(微小粒子状物質)が関係するとされます。大変小さいために、肺の奥へと入り込みやすく、呼吸器への影響に加えて循環器系への影響をもたらします。2016年には1,800人が家庭内での大気汚染で、1,500人が屋外での大気汚染が原因とされる病気で亡くなったと推測されています。
中でも重篤な被害を被っているのが幼い子どもたちです。
ウランバートルに住む子どもたちの間では、肺炎が異常に蔓延しています。2018年は前年と比較して、肺炎による子どもの死傷者数は40%増加し、肺炎を理由とした子どもの外来患者数は76.8%急増しました。