研究内容

Research Topic

X線衛星XRISM

本研究室が関わる一番大きな衛星プロジェクト.宇宙機関(JAXA, NASA, ESA) 、日本の20を超える大学、メーカ一など、皆で力を合わせて実現させる実験.物理実験学の技術や知識でプロジェクトに貢献.目玉の検出器が極低温で動作するマイクロカロリメータであり、本研究室の主軸となる実験装置.

星や銀河、そしてその間を吹き渡る高温ガス「プラズマ」に含まれる元素やその速さを測ることで、星や銀河、銀河の集団がつくる大規模構造の成り立ちをこれまでにない詳しさで明らかにすることを目指します。特にブラックホールを中心とした宇宙の進化や高エネルギー宇宙現象の解明を目指して研究を進めています。

「ひとみ」衛星のミッションを引き継ぎ、宇宙の高温プラズマにおける物質循環・エネルギー輸送過程と天体の進化の解明を進めて、
1.宇宙の構造形成と銀河団の進化
2.宇宙の物質循環の歴史
3.宇宙のエネルギー輸送と循環
を研究するとともに、超高分解能X線分光による新しいサイエンス開拓を目指してます。(JAXAのページ : https://www.jaxa.jp/projects/sas/xrism/index_j.html)

「ひとみ」衛星の成果は、天文月報にまとまっておりますので、

http://www.asj.or.jp/geppou/contents/2019_05.html

http://www.asj.or.jp/geppou/contents/2019_06.html

http://www.asj.or.jp/geppou/contents/2019_07.html
の「ひとみ」衛星特集号ご覧ください。

宇宙物理学研究

X線衛星XRISMによる精密X線分光により、ブラックホール近傍の高温ガスの正体を明らかにしたい。巨大ブラックホールや、中性子星やマグネター,超新星残骸,銀河,銀河団など,精密X線分光を軸として、様々な高エネルギー宇宙物理学のテーマに挑戦する.

ブラックホール周囲に形成される「降着円盤」や「自由落下に近い降着流(コロナや高温電子雲と呼ばれる)」の性質および激しいX線強度変動の研究を進めてきた.BH連星の中でも最も有名な「はくちょうざX-1 (Cyg X-1)」を中心に,様々なBH研究を進めていきます。

BH連星は,質量降着率がエディントン光度の数%以下の場合,約100keVの電子温度のコロナからの熱的コンプトン放射が卓越します.「すざく」衛星の50-300 keVを担うGSOシンチレータの応答関数の構築や較正に取り組み,BHコロナの温度計測に着目し、電子温度やX線の明るさが数秒以下でどう変化するかを観測的に明らかにしました。

参考 : https://www.riken.jp/press/2013/20130404_2/index.html

このような研究を通じて、「約100万度の低温円盤と約10億度の高温コロナがBHの周囲に共存する」という新しいBH降着流の観測結果を調べてきました。

新しい分野やテーマへの挑戦も進めます.AGNの多波長観測,中性子星やマグネター,超新星残骸,銀河,銀河団,系外惑星など,幅広く研究を展開していきます。機械学習を宇宙の研究に取り入れていて、(e.g., 一戸くん論文) 今後も新しい解析技術をどんどん取り入れていきます。

X線分光
装置開発

X線の観測装置は、市販品で済む場合はほとんどなく、自分で装置を設計し、作る事から始まることが多いです。特に、宇宙の観測に使うような超高性能の検出器を作るためには、最先端のテクノロジーを駆使して、新しい装置、特にまだ誰も作ったことがない最高性能の装置を作る必要があります。宇宙の研究と一見すると、少し違うような印象があるかもしれませんが、観測装置を自分で作ることで、宇宙からの光をどう捉えて、どう自分が検出できる形にするかを考えることで、物理の理解が深まり、それが独自な宇宙の研究をひねり出すためには必要な基礎体力になります。

この研究室では、次世代のX線カロリメータである超電導遷移端検出器(Transition Edge Sensor)の開発も進めています.TESは,超伝導–常伝導の相転移に伴う抵抗値の急激な変化を利用する将来のX線衛星で採用され,今後も宇宙X線観測の主軸となる.これを自分の手で製作して動かして、将来の宇宙応用に向けて想像力とサイエンス検討を進めていきます。

このような基礎研究は、日本の極低温実験の大学や、理研や産総研などの研究所、海外の研究機関とも協力して進めています。

TES応用実験

TESは宇宙観測のために開発された精密X線分光装置ではありますが、地上での用途が広がりつつあります。J-PARCのハドロン実験,ミュオン実験,SPring-8の試料測定TES応用に成功し、分子雲の地上再現実験など多くの地上応用実験を進めています。宇宙実験と地上実験の良いところを融合して、新しい宇宙物理実験を目指しています。

TESは超伝導検出器のなかでも、超高感度のセンサーなので、それを動かせる技術だけでも十分に獲得する価値があるものです。正しく動くには、装置の仕組みだけではく、電源周りや、グラウンドの設計、振動や電磁環境の制御など、様々な現象への理解が一つ一つ定着していることが大切になります。これは宇宙で観測装置を持って行く場合には、どれも必要な技術です。地上の実験を通じて、宇宙に装置を持って行くための研鑽を積み、将来の新しい宇宙観測を切り開く力をつけて、未来のまだ誰も考えたことのない新しい宇宙観測を目指しましょう。

TES基礎開発

そのほか、TESの基礎開発も国内の共同研究者(産総研、宇宙研、都立大、埼玉大)と協力して、立教大学でもなるべく基本的な要素からX線観測機器の開発を目指しています。学生さんも自分の手で一つ一つものづくりをして、データを取得して、データを解析し、全行程を経験することで、ものづくりの基本を習得することを目指しています。