立教大学理学部物理学科 山田研究室は2020年4月にスタートしました。X線衛星XRISMに搭載される精密X線分光器(マイクロカロリメータ)の開発およびそれを用いたブラックホールや銀河/銀河団など宇宙でおこる高エネルギー現象の解明を目標としています。将来に向けて、次世代の精密分光装置である超伝導転移端検出器(Transition Edge Sensor)の開発と、それを用いた様々な地上実験も進めています。ついに、2023年9月7日、X線衛星XRISMがHII-A 47号機から打ち上げられました。
X線は透過力が高いので、ブラックホール近傍を見透すことや、宇宙の中でも激しい現象を捉えるのが得意です。温度は1000万度を超えるようは高温で、身の回りの鉄や銅も気体として存在している世界を対象にしています。そういう直感が効かない世界を物理学を使って、何が起こっているかを想像したり、観測で検証するのがX線を用いた宇宙の観測的研究です。目標は、「宇宙X線観測を通して、宇宙の進化やブラックホールと銀河の関わりなど、未だに残る宇宙の謎を一つでも解明すること」です。
2021年に打ち上げ予定のX線衛星XRISMに搭載される精密X線分光器(Resolve)の開発をしています。山田研では室温デジタルエレキにより波形処理を主に担当しています。宇宙空間で50mKという極低温でX線検出器を動作させるため、宇宙用の冷凍機など特殊な宇宙技術が結集しています。
将来のX線衛星に向けた超電導遷移端検出器 (Transition Edge Sensor; TES) の開発もしています。次世代のX線衛星でも主力のセンサーで、自分たちで製作して測定し、宇宙で動作させるための想像力を育みます。
宇宙観測向けに開発された精密X線分光器を用いた様々な実験
宇宙星間分子の地上再現実験
ミュオン原子を用いた電子相互作用の検証
放射光での物質分析、はやぶさ2の試料分析に向けた準備
など、宇宙と地上の実験の良さを融合させて、よりよい実験技術を追求していきます。
宇宙X線データを用いた天体解析も進めています。最先端のソフトウェア技術や機械学習と組み合わせた研究も進めています。ブラックホールの周囲に形成される冷たいガスと高温ガスの織りなす不思議な現象の解明や、ブラックホールと銀河の共進化の素過程の理解など、知りたいことは尽きません。
立教大学理学部博士課程2年の酒井優輔さんは、マイクロクエーサーSS 433に対し、Chandra衛星で得られたデータにデコンボリューションを適用し、中心部の秒角スケール構造を解析しました。その結果、中心から約1.7秒角離れた東西の二つのピーク構造と、螺旋状の構造を新たに発見しました。これらは光速の約26%で放出されるジェットからの放射を示唆し、さらに空間分割スペクトル解析と電波観測との比較から、非熱放射の可能性を支持する結果が得られました。
詳細は、原論文を参照ください。
立教大学理学部物理学科の山田真也准教授、立教大学大学院理学研究科物理学専攻の酒井優輔さん(博士課程後期課程)、大阪大学大学院理学研究科の川室太希助教、理化学研究所の長瀧重博主任研究員、松浦俊司上級研究員、東北大学の山田智史助教らによる研究グループは、欧州宇宙機関(ESA)が運用するX線天文衛星XMM-Newtonがこれまで約24年間にもわたり取得してきた大規模な宇宙のX線変動データから、量子コンピュータと機械学習を組み合わせた量子機械学習モデルを構築し適応することで、113件の異常なエネルギー(X線)放射現象を捉えることに成功しました。
立教大学理学部博士課程3年の小湊菜央さんは、超新星残骸カシオペヤ座A北東部のフィラメント構造において、非熱的X線放射の10年単位での増光を発見しました。このフィラメントは高い粒子加速率を示しており、形状の変化や局所的な振る舞いの違いから、磁場や周囲物質との複雑な相互作用が示唆されました。
詳細は、原論文を参照ください。
Kominato ら(2025, PASJ)に基づき再構成。
立教大学理学部物理学科の北本俊二特別専任教授、山田真也准教授、澤田真理助教らが所属する研究グループによるX線分光撮像衛星(XRISM)の観測成果に関する論文が、イギリスの科学雑誌「Nature」に2025年5月15日(日本時間午前0時)に掲載されました。
本研究成果では、XRISMの優れた分光能力により、超巨大ブラックホールから吹き出す風が、予想外に複雑な速度構造を持つことが明らかになりました。
従来のような滑らかな風ではなく、弾丸のようなガスがぶつぶつと飛び出す様子が示唆され、これらの弾丸が持つ非常に大きなエネルギーは、銀河とブラックホールの共進化に新たな可能性を示しています。
理学部物理学科の山田真也准教授ら4名の共同研究が、公益財団法人高エネルギー加速器科学研究奨励会の2024年度奨励賞(小柴賞)を受賞しました。
本賞は、2002年ノーベル物理学賞受賞者でカミオカンデ実験によりニュートリノ天文学を切り拓いた小柴昌俊博士の功績を讃えて設けられ、素粒子分野などの基礎科学における測定器技術の開発研究において、独創性に優れ国際的にも評価の高い業績をあげた研究者及び技術者に贈られます。
詳細は、立教大学のニュースをご覧ください。
立教大学理学部博士課程1年の酒井優輔さんは、超新星残骸における全領域で固有運動を計算する手法を考案し、Chandra X線衛星が観測した超新星残骸カシオペア座Aを用いて原理実証しました。
詳細は、原論文を参照ください。
立教大学理学部物理学科山田真也准教授、東京理科大学創域理工学研究科先端物理学専攻修士2年の二之湯開登を筆頭に、同研究科同専攻所属の内田悠介助教、幸村孝由教授らの研究グループは代表的なブラックホール連星「はくちょう座X-1」のX線偏光観測衛星IXPEによる偏光観測により、1秒スケールの増光現象に付随して偏光の状態が変化することを世界で初めて発見しました。この発見は、短時間変動における偏光情報の解析手法を確立したことにより実現しました。
本研究成果は、アクセスが難しかったブラックホール近傍のダイナミックな構造変化について偏光を用いて観測的に示した初めての例になります。これにより、ブラックホール近傍の強重力場での降着流の物理の検証につながると期待されます。
詳細は、立教大学のプレスリリース、原論文をご覧ください。
立教大学理学部 山田真也 准教授、東京大学大学院理学系研究科 高橋嘉夫 教授、日本原子力研究開発機構 蓬田匠 研究員、高輝度光科学研究センター(JASRI) 宇留賀朋哉 任期制専任研究員、新田清文 研究員、関澤央輝 主幹研究員らは、超伝導転移端検出器(Transition Edge Sensor; TES)の利用を推進する複数の研究機関との共同研究を行っています。
今回、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL37XUにおいて、マイクロビームX線を用いた蛍光XAFS(X線吸収分光法)分析のための検出器として世界で初めてTESを適用し、通常の半導体検出器では捉えることのできない、実環境試料中の微量のUの分布状態を把握することに成功しました。
詳細は、立教大学のプレスリリース、原論文をご覧ください。
立教大学理学部修士課程2年の酒井優輔さんは、宇宙の天体解析技術として、宇宙X線衛星での世界最高精度の空間分解能を誇るChandraの観測画像を全領域で観測画像を鮮明化する画像デコンボリューション法を実装し、超新星残骸カシオペア座Aを用いて原理実証しました。
詳細は、原論文を参照ください。
2023年度の立教大学理学研究科物理学専攻修士論文発表会において、本研究室の酒井優輔さんが最優秀賞を受賞しました。
立教大学理学部修士課程2年の酒井優輔さんは、宇宙X線衛星で世界最高精度の空間分解能を誇るChandraの観測画像を鮮明化する独自手法の開発に成功し、超新星残骸カシオペア座Aを用いて原理実証しました。
詳細は、原論文、立教大学のプレスリリース、Chandraニュースページを参照ください。
立教大学理学部修士課程2年の土岡智也さんは、超新星残骸カシオペア座Aの噴出物の元素の逆転層の形成過程を解明を目指し詳細に解析し、その結果、残骸進化の初期、あるいは超新星爆発時の噴出物の逆転を示唆する手がかりを発見しました。
詳細は、原論文を参照ください。
2021年度の立教大学理学研究科物理学専攻修士論文発表会において、本研究室の土岡智也さんが最優秀賞を受賞しました。
立教大学佐藤寿紀助教が率いる国際共同研究グループの成果がNature誌に掲載され,4/22号の表紙を飾りました。 本研究では大質量星の超新星爆発メカニズムの要である「ニュートリノ加熱」の痕跡を世界で初めて発見し,宇宙物理学上 の未解決問題の解明に大きく貢献しました。
詳細は、原文、立教大学のプレスリリースを参照ください。
2020年度の立教大学理学研究科物理学専攻修士論文発表会において、本研究室の大塚駿平さんが最優秀賞を、菅谷知博さんが優秀賞を受賞しました。
立教大学理学部修士課程2年の土岡智也さんは、超新星の非対称爆発の機構に着目した超新星残骸G350.1-0.3のX線解析から、爆発放出物の高速移動の測定に成功しました。詳細は、原論文を参照ください。
立教大学理学部 博士課程1年の日暮凌太さんは、超新星残骸 RX J1713.7-3946のChandra衛星のX線データを詳細に解析し、X線で輝くコンパクトなホットスポット("hot spots")を複数発見しました。詳細は、原論文を参照ください。