天然有機化合物の全合成を基盤とする包括的な有機合成化学
〜反応開発から創薬研究まで〜
天然有機化合物 (天然物) はユニークな生物活性や構造を持つものが多く、
薬やケミカルツールの種となる可能性がある自然が生み出した奇跡の分子です。
しかし天然からの単離効率が必ずしも良いとは言えず、
そのポテンシャルを活かしきれていない天然物が数多くあります。
そこで私達はそのような天然物の秘められた能力を引き出すべく、
有機化学的に合成する「全合成」により希少な天然物の化学的供給を目指します。
そのコンセプトは「シンプルな反応で複雑な分子を効率的につくる」です。
場合によっては全合成のための新たな反応も開発し、
オリジナルの「ちょっと変わった」全合成経路の構築を目指したいと思っています。
また、全合成を達成して終わりではなく、そこからがある意味スタートです。
活性の向上や毒性の低減などを目的とするオリジナルの誘導体合成や、
作用機序解明のためのケミカルツールの創製を通じて、
創薬研究やケミカルバイオロジーへと展開します。
最近の主な成果 (業績一覧はこちら)
<1> 生物活性を有する天然有機化合物の効率的な全合成
NEW!! アムホテリシン B 活性増強作用を有する shodoamide C の全合成と絶対立体配置の決定 (Org. Lett. 2025, 27, 3777.)
アルケニルシランに対するredoxラジカル環化反応を鍵とする habiterpenol の第2世代全合成 (Org. Biomol. Chem. 2023, 21, 6129.)
Bilobalide の全合成 (Nature 2019, 575, 643. J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 18599. 有機合成化学協会誌 2022, 80, 766-767.)
など
<2> 天然物合成を指向した新規反応開発/天然物合成で見出した新規反応開発
ホモプロパルギルアルコールの one-pot ラクトン化反応の開発 (Org. Lett. 2021, 23, 2831.)
など
<3> 天然物を基盤とする、創薬を指向した構造活性相関研究
Complex II 選択的阻害剤 atpenin A5 の構造活性相関研究 (Tetrahedron 2019, 75, 3178. など)
SOAT2 選択的阻害剤 pyripyropene A の構造簡略型誘導体の創製 (ChemMedChem 2018, 13, 411.)
など