統合的枠組みによる呼吸循環調節系の制御機構の解明とその応用研究を行っています。
We are conducting research to elucidate the control mechanisms of the respiratory and circulatory control systems using an integrated framework and exploring their practical applications.
私の研究室では、呼吸制御システムの動作原理をシステム的に理解するシステムバイオロジー(Systems Biology)研究に取り組んでいます。ヒトや動物が有する運動に対する身体の適応能力や生体システムの安定性維持のための生理学的メカニズムを明らかにすること、また、その機能向上や回復を目的とする最適な運動プログラムを開発することを目指しています。
これらの研究がトップアスリートのパフォーマンス向上や、幅広い年齢層を対象とした人々のQuality of Life(QOL)向上、疾患患者を含む多様な人々の健康的な生活を改善し、将来的な疾病予防や健康寿命の延長につながることを望んでいます。
In my laboratory, we are engaged in Systems Biology research to systematically understand the principles of operation of the respiratory control system. We aim to clarify the physiological mechanisms of physical adaptation and homeostasis maintenance in response to movement inherent in humans, and to develop optimal exercise programs that will improve athletic performance, improve the quality of life (QOL) of diverse people of various ages including those with various diseases, and contribute to the extension of healthy life span and future disease prevention. We are working hard every day to achieve these research results.
ACADEMIC RESEARCH
研究テーマ
~呼吸・循環器を制御する生体調節系の動作原理を解明する~
Unraveling the operating principles of the biological regulatory systems that control the respiratory and circulatory systems
生体の統合的呼吸・循環調節機構の解明とシステム同定法を用いた新しい評価指標の開発に関する研究
生体の統合的呼吸・循環調節機構の解明
呼吸の化学調節と脳循環調節の相互連関機構の解明
循環器系の神経性・体液性の制御機構の解明
Research on clarifying the integrated respiratory and circulatory regulatory mechanisms in living organisms and developing new evaluation indicators using system identification methods.
Elucidation of the integrated respiratory and circulatory regulatory mechanisms in living organisms
Clarification of the interrelated mechanisms of chemical regulation of respiration and cerebral circulatory control
Elucidation of the neural and humoral control mechanisms of the circulatory system
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~運動に対する呼吸・循環・代謝システムの短・長期適応機構を解明する~
Clarifying the short- and long-term adaptation mechanisms of the respiratory, circulatory, and metabolic systems in response to exercise:
運動負荷ストレスや長期運動トレーニングによる生体システムの適応メカニズム(トレーニング効果)の解明研究
運動時の呼吸・循環調節機構(呼吸・循環系ダイナミクスのメカニズム)の解明
長期運動トレーニングによる生体システムの適応メカニズムの解明
高位中枢による予測的・見込み的制御(フィードフォワード制御)が運動準備期および運動開始時の呼吸・循環系応答に及ぼす影響
Research on the adaptive mechanisms of the biological system (training effects) due to exercise stress and long-term exercise training
Elucidation of respiratory and circulatory regulatory mechanisms during exercise (mechanisms of respiratory and circulatory system dynamics)
Clarification of the adaptive mechanisms of the biological system due to long-term exercise training
The impact of predictive and anticipatory control (feedforward control) by higher centers on respiratory and circulatory system responses during exercise preparation and at the onset of exercise
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~呼吸・循環器疾患の病態生理機構を解明する~
Elucidating the pathophysiological mechanisms of respiratory and circulatory diseases
慢性心不全の呼吸異常の成因解明と治療戦略に関する研究
睡眠時や運動時において顕在化する心不全の呼吸異常(浅速呼吸、運動時換気亢進、周期性呼吸、睡眠時無呼吸等)の成因解明
心不全患者の呼吸異常是正(QOL向上)を目的とした、非薬物療法(運動療法、酸素療法、CPAP療法、ヨガ、鍼等)の効果検証とその作用機序の解明
生体調節系の異常にもとづく疾患の病態解明と、重症度評価法の開発および治療戦略の構築
Elucidation of the causes of respiratory abnormalities in chronic heart failure and research on treatment strategies
Elucidation of the causes of respiratory abnormalities in heart failure (shallow rapid breathing, exercise-induced hyperventilation, periodic breathing, sleep apnea, etc.) that become apparent during sleep or exercise
Verification of the effectiveness of non-pharmacological therapies (exercise therapy, oxygen therapy, CPAP therapy, yoga, acupuncture, etc.) for correcting respiratory abnormalities in heart failure patients and improving their quality of life (QOL), and elucidation of their mechanisms of action
Elucidation of disease pathogenesis based on abnormalities in the biological regulatory system, development of severity assessment methods, and establishment of treatment strategies
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COMMUNITY
地域社会に育てられ、機会あるたびに恩返し新しい発見が発明に。
日常生活において、我々の体は様々な運動ストレスに曝露され、無意識のうちに時々刻々とダイナミックな生理的応答を生じます。血圧・心拍数の上昇、発汗、呼吸変調といった反応は、生体の恒常性維持機構によって精緻に制御されています。運動の種類(上肢・下肢運動)や強度に応じて生理応答のパターンは異なり、急性ストレスに対しては神経性調節による即時的な呼吸循環応答が、慢性ストレスに対しては液性調節による遅延性応答が作用し、恒常性が維持されます。長期的な運動ストレスは構造機能の質的変化をもたらし、トレーニング適応という生理学的適応現象を引き起こします。
**運動生理学(Exercise Physiology)**は、運動時の生体反応メカニズム(急性応答)と、継続的運動による身体的変容メカニズム(慢性適応)の両面から、高代謝状態における生理現象を科学的に探究する学問です。臨床医学およびスポーツ科学領域では、VO₂max(最大酸素摂取量)やAT(嫌気性作業閾値)などの生理学的指標が広く活用されていますが、運動中の制御システムの詳細については未解明の課題が多く残されています。
ここ数十年で、運動生理学は多くの分野に影響を与え、特にスポーツ科学、リハビリテーション、健康管理などにおいて重要な役割を果たしてきました。今後も、運動生理学はさらなる進展が期待されています。
運動生理学の分野では、神経科学、生理学、代謝学、運動制御などの多様な分野を結びつける統合的なアプローチが求められています。今後、これらの分野を結びつけるための技術や方法がさらに進歩することで、より深い洞察が得られるようになるでしょう。
また、運動生理学においては個人差が大きく、同じトレーニングでも個人によって効果が異なることが分かっています。今後、個人化されたトレーニング方法を開発することで、より効率的かつ効果的なトレーニングが可能になるでしょう。個人の遺伝子、環境、ライフスタイルなどの要因に応じた個人化されたアプローチが注目されるようになると思われます。これにより、個人の能力や限界をより正確に予測し、それに基づいた効果的なトレーニングや健康管理が可能になるでしょう。
運動生理学においては、身体の反応を測定するための多様な方法が用いられますが、より正確な測定方法の開発が求められています。例えば、非侵襲的かつリアルタイムに身体の変化を測定できる技術の開発が期待されます。
また、人工知能技術の発展により、膨大なデータを分析することが可能になりました。運動生理学でも、人工知能を活用することで、より正確な予測や診断が可能になると考えられています。また、トレーニングプログラムの最適化や、リスクマネジメントの向上などにも役立つことが期待されています。
運動生理学は、健康において運動が果たす役割について研究する分野でもあります。今後、運動が慢性疾患の予防や治療にどのように影響を与えるかについての研究が進むことが期待されます。
運動が各器官系に与える多面的な影響について研究が進むことで、以下のような知見が得られるでしょう:
心血管系への影響
心拍出量の改善と心機能の向上
血管内皮機能の改善による動脈硬化の予防
高血圧、冠動脈疾患、心不全などの心血管疾患の予防や治療
末梢循環の改善と血流動態の最適化
呼吸器系への影響
肺機能の維持・向上と呼吸筋力の強化
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行抑制
喘息症状の軽減と呼吸器感染症の予防
換気効率の改善と酸素利用能力の向上
脳・神経系への影響
認知機能の改善と神経可塑性の促進
脳血流の改善による脳血管疾患の予防
パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患の予防や症状改善
うつ病や不安障害などの精神疾患の改善
免疫系への影響
免疫機能の調節と炎症反応の適正化
自己免疫疾患や慢性炎症性疾患の予防や治療
感染症に対する抵抗力の向上
加齢に伴う免疫機能低下の抑制
代謝系への影響
インスリン感受性の改善とグルコース代謝の最適化
脂質代謝の改善による脂質異常症の予防や治療
糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの代謝性疾患の予防や治療
骨密度の維持・向上による骨粗鬆症の予防
筋骨格系への影響
筋力・筋持久力の維持・向上
骨密度の増加と骨質の改善
関節可動域の維持と変形性関節症の予防
サルコペニアやフレイルの予防
これらの多角的な研究により、運動を活用した包括的な予防医学や治療法の発展が期待されており、個々の疾患に応じた運動処方の確立が重要な課題となっています。
生理学研究は、生物の正常な機能や生命現象のメカニズムを分子・細胞・組織・器官・個体レベルで包括的に理解し、健康状態の維持機構や疾患の発生・進行過程についての科学的知見を深める分野です。生理学は基礎医学の根幹をなす学問であり、臨床医学、薬学、生命工学などの応用分野への橋渡し的役割を担っています。
現代の生理学研究は、従来の器官系別のアプローチから、分子レベルから個体レベルまでを統合したシステム生物学的理解へと発展しており、精密医療や個別化治療の基盤となる重要な知見を提供しています。
生理学の分野においても、運動生理学と同様に、多様な分野を結びつける統合的なアプローチが不可欠となっています。神経科学、生化学、分子生物学、細胞生物学、病理学、免疫学、内分泌学などの知見を統合することで、生理学的プロセスの理解が飛躍的に深まり、健康や疾患についての新たな知見が得られるでしょう。
統合的研究の具体例
神経-内分泌-免疫系の相互作用メカニズムの解明
代謝-循環-呼吸系の統合的制御システムの理解
遺伝子発現から表現型までの多階層的解析
オルガノイドやマルチオーガンチップを用いた器官間相互作用の研究
新たな技術の飛躍的進歩により、従来では不可能であった生理学的プロセスの詳細な追跡と測定が可能になりました。これらの先端技術を生理学研究に応用することで、より精密なデータが得られ、従来の概念を覆すような新たな知見の発見が期待されます。
主要な革新技術
イメージング技術
超高解像度顕微鏡(クライオ電子顕微鏡、STORM、PALM)
リアルタイム生体内イメージング
多光子顕微鏡による深部組織観察
PETやMRIの高解像度化
分子解析技術
シングルセル解析(scRNA-seq、scATAC-seq)
プロテオミクス・メタボロミクス解析
エピゲノム解析技術
空間トランスクリプトミクス
機能解析技術
CRISPR-Cas9などの遺伝子編集技術
光遺伝学(オプトジェネティクス)
化学遺伝学的手法
パッチクランプ法の高度化
データ科学技術
機械学習・深層学習の応用
ビッグデータ解析プラットフォーム
システム生物学的モデリング
デジタルツイン技術
生理学研究は、正常な生理的プロセスの理解に加えて、疾患の発生・進行メカニズムの解明において中核的な役割を果たしています。今後、疾患の分子基盤についての研究がさらに進展することで、根本的な治療法の開発や個別化医療の実現が期待されます。
重点研究領域
がん研究
腫瘍微小環境と免疫逃避機構
がん幹細胞の生物学的特性
転移メカニズムと血管新生
薬剤耐性獲得機構
神経変性疾患
タンパク質凝集と細胞死機構
シナプス機能異常と神経可塑性
神経炎症と小胶細胞活性化
血液脳関門機能障害
代謝性疾患
インスリン抵抗性の分子機構
脂肪組織の内分泌機能
腸内細菌叢と宿主代謝の相互作用
概日リズム異常と代謝障害
心血管疾患
血管内皮機能異常と動脈硬化
心筋リモデリングと心不全
不整脈の電気生理学的機序
血栓形成と線溶系の調節
自己免疫・炎症性疾患
免疫寛容破綻機構
慢性炎症の分子基盤
自然免疫と獲得免疫の連携異常
組織修復機構の破綻
超高齢社会を迎える現代において、健康寿命の延伸と老化に伴う疾患の予防・治療は最重要課題の一つです。生理学研究においては、細胞老化から個体老化まで多層的な老化メカニズムの解明が進められており、アンチエイジング医学の発展に大きく貢献しています。
老化研究の主要テーマ
細胞老化機構
テロメア短縮と細胞周期制御
ミトコンドリア機能異常と酸化ストレス
細胞内品質管理システム(オートファジー、UPS)の破綻
炎症性老化(inflammaging)の分子基盤
臓器・組織老化
幹細胞機能の低下と組織再生能力の減退
血管老化と循環機能の変化
筋萎縮(サルコペニア)の進行機序
骨代謝異常と骨粗鬆症
システム老化
神経系の老化と認知機能低下
内分泌系の変化とホルモン産生低下
免疫系の老化(免疫老化、immunosenescence)
概日リズムの変調
長寿因子の探索
長寿遺伝子(FOXO、SIRT1など)の機能解析
カロリー制限の分子機構
運動の抗老化効果
環境要因と遺伝的素因の相互作用
これらの多角的な生理学研究により、以下のような社会的貢献が期待されます:
精密医療の実現:個人の遺伝的背景や生理的特性に基づいた最適な治療法の選択
予防医学の発展:疾患発症前の早期介入による健康寿命の延伸
創薬の効率化:疾患メカニズムの詳細な理解に基づく革新的治療薬の開発
再生医療の推進:幹細胞生物学の知見を活用した組織再生技術の確立
生理学研究は、基礎科学から臨床応用まで幅広い分野との連携により、人類の健康と福祉の向上に不可欠な知識基盤を提供し続けることが期待されています。
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