7. 運動処方の基礎と実際
CSM’s GUIDELINES FOR EXERCISE TESTING AND PRESCRIPTION
運動処方の指針
原書第7版、第8版
運動負荷試験と運動プログラム
American College of Sports Medicine
ACSM登録臨床運動生理学者の知識、技術および能力
一般的なこと(運動生理とそれに関連したサイエンス) p360
有酸素運動、レジスタンス運動、柔軟運動への慢性の反応が心臓血管、呼吸器、筋骨格、神経筋、代謝、内分泌、免疫系の機能に及ぼす効果について説明できる。
ほとんど体を動かさない人と、トレーニングをしている人の、安静時および運動時の酸素摂取量、心拍数、平均動脈圧、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍出量、駆出率、分時換気量、呼吸数、一回換気量の典型的な値を知っている。
酸素摂取量、最大酸素摂取量、平均動脈圧の決定因子について知っていて、これらの値が有酸素運動もしくはレジスタンストレーニングでどう変化するかを知っている。
環境因子が運動への生理的反応をどのように変化させるかを説明でき、環境の状況および患者の健康状態で推奨する運動を適切に調整することができる。
活動的なライフスタイルが健康に良いことを説明でき、ほとんど体を動かさないことが健康に危険であることを説明でき、US national reports of physical activity (US Surgeon General, Institute of Medicine, ACSM, AHA)がキーポイントとして推奨していることについて要約することができる。
健康の改善または維持につながるかもしれない運動への生理的な適応について説明できる。この健康には代謝(たとえばメタボリックシンドローム、糖代謝および脂質代謝)、心血管(たとえば動脈硬化症)、筋・骨格(たとえば骨密度)、免疫系(たとえば風、病気)の健康を含む。
有酸素運動およびレジスタンス運動トレーニングへの適応のメカニズム、たとえば最大または最大下酸素摂取量、乳酸と嫌気性閾値、心筋酸素摂取量、心拍数、血圧、換気(無酸素閾値を含む)、筋骨格、生体エネルギー、免疫機能の変化または維持について説明できる。
安静臥床を含み、体を動かさないことによる生理的影響について説明でき、これを防ぐ方法について説明できる
運動時の異常な兆候を認識し、対応できる
Section Ⅰ健康の評価、リスクの判定および運動の安全性
第1章 身体活動に伴う有益性とリスク
A 身体活動と体力に関する用語 p4
1. 軽度(3METs未満)、中等度(3~6METs)、激しい強度(6METs以上)に分類される一般的な身体活動のMET値 表1-1参照
B 最新の勧告に対する公衆衛生的展望 p5
1. 専門家および一般市民に、毎日行う身体活動への有益性を認識してもらうこと。
2. これらの有益性を得るのに必要な身体活動の量と強度がこれまで運動による生理的なトレーニング効果を得るのに必要と考えられていたものよりも低いことに注意する。
↓
少しの身体活動でも実行しないよりはよく、身体活動がより多いほうがある程度は少ないより健康には良い。身体活動量を増加させることによって、一般市民の得られる健康への有益性は、潜在的に莫大なものである。→生理的・代謝的・心理的な指標の改善がみられる。多くの慢性疾患や早期死亡のリスクを減少させる効果がある。
D 運動に伴うリスク、運動に関連する危険性。p10
高強度の身体的活動は、心臓突然死や急性心筋梗塞の危険性を急性かつ一時的に高める。ここで重要なのは、運動により心血管系発作が誘発されるのは、すでに診断がついているのか、潜在性であるのかにかかわらず、心疾患が存在する場合だけであることを銘記すること。心臓に異常のない人では、運動により、心血管系発作が誘発されることはない。したがって、運動することによる危険性は、どのような集団においても心疾患の有病率に依存する。
United States Department of Health and Human Services. Physical activity and health : a report of the Surgeon General, 1996.
Kesaniemi UK, Danforth E Jr, Jensen MD, et al. Dose-respon issues concerning physical activity and health : an evidence-based symposium.
Med Sci Sports Exerc. 33: S351-358, 2001.
2007年AHAは「運動と急性心血管イベント:リスクから展望へ」という科学的勧告を発表した。
第7章 運動処方の一般的な原則
ストレッチング
●ストレッチングとは
●ストレッチングの種類とその特性
伸張の持続時間による分類
パートナーの有無による分類
●ストレッチングの目的
A. 疲労回復
B. 柔軟性の向上(関接可動域の拡大)
C.ウォーミングアップあるいはクーリングダウンとして
●ストレッチングの効果
●ストレッチングの実際
●ストレッチング実施上のポイントと注意点
A トレーニングの原則 p136
スポーツトレーニングの目標
健康にして充実した身体の全面的な発達
スポーツ種目別の適応能力の開発と充実
スポーツ技術の習得と練磨
意志の強化とスポーツマンシップを基礎としたマナーの向上
スポーツにおける戦術の習得
スポーツトレーニングについての知的理解
スポーツトレーニングの5つの内容
体力のトレーニング
技術のトレーニング
戦術のトレーニング
意志のトレーニング
理論のトレーニング
スポーツトレーニングの5つの原則
全面性
漸進性
個別性
反復性
意識性
体力の構成
●身体的要素
○行動体力
形態
体格
姿勢
機能
敏捷性
筋力
パワー
持久性
平衡性
協応性
柔軟性
○防衛体力
構造
器組織の構造
機能
温度調節
免疫
適応
●精神的要素
○行動体力
○防衛体力
意志
判断
意欲
精神的ストレスに対する抵抗力
身体的要素
体力の三次元展開図面上の各種競技力構成の体力特性
Z軸 筋力(力)
パワー 力の持久性
[パワー型:スプリンター、相撲、重量挙げ]
Y軸 スピード(速度) X軸 持久力 (時間)
スピードの持久性 (スタミナ)
[スタミナ型:マラソン]
[スピード型:卓球 フェンシング]
体力トレーニングの仕組み
専門的からだづくりトレーニング
スピードのトレーニング
力のトレーニング
柔軟さのトレーニング
巧みさのトレーニング
持久性のトレーニング
バランス獲得のトレーニング
全面的からだづくりトレーニング
身体の調和的発達のためのトレーニング
総合的スポーツ適応能力の発達のためのトレーニング
D トレーニングの構成内容 p138
ウォーミングアップ
クールダウン
E 心肺系の運動処方 p141
1. 運動の様式
2. 運動の強度
運動強度は、心拍数を計ることで簡単に計算できます。
運動強度 = (運動時心拍数-安静時心拍数) / (最大心拍数ー安静時心拍数)x 100
(例)20歳、安静時心拍数80(拍/分)の人が、運動時心拍数110(拍/分)の運動をした場合
仮に、この人の最大心拍数が200(拍/分)とすると、
運動強度=(110ー80)/(200ー80) x 100= 25
つまり、この人の場合、運動時心拍数が110(拍/分)になるような運動をすると運動強度が 25%(最大の25パーセント)ということになります。
※最近になって、最大心拍数のより正確な予測法が導入されている。
Gellish RL, Goslin BR, Olson RE, McDonald A, Russi GD, Moudgil VK. Longitudinal modeling of the relationship between age and maximal heart rate. Med Sci Sport Exerc. 38: 149-1592007.
最大心拍数=206.9-(0.67 x 年齢)
★運動負荷テストによる呼吸循環機能(最大酸素摂取量)の推定・評価プログラム。
Excel Fileを公開しています。
算出プログラムファイルをダウンロードする場合はユーザー名、パスワードが必要です。
3. 運動の持続時間
F エネルギーの消費目標 p151
ACSMの勧告では、身体活動量および・または運動によって消費する一日の目標カロリー量は150kcal~400kcalとしている。
→あらゆる原因による死亡つまり全死亡のリスクを20~30%減少させる身体活動量である。
United States Department of Health and Human Services. Physical activity and health : a report of the Surgeon General, 1996.
Haskell WL, Wolffe JB Memorial Lecture. Health consequences of physical activity: understanding and challenges regarding dose-response.
Med Sci Sports Exerc. 26: 649-660,1991.
H トレーニングの特異性 p155
I レジスタンスエクササイズの処方 p157
レジスタンス運動
●健康づくりとレジスタンス運動
●トレーニングの目的
●形態測定、身体組成の評価
●体脂肪測定法の説明
水中体重秤量法
インピーダンス法
キャリパー法
●レジスタンス運動の運類
A. 筋の活動様式から見た分類とその特徴
等尺性筋収縮:アイソメトリックトレーニング
等張性筋収縮:アイソトニックトレーニング
等速性筋収縮:アイソキネティックトレーニング
B. 運動様式から見た分類
●アイソトニックトレーニングの実際
A. 適切なプログラムの立案の基礎
B. 基礎体力の養成
C. 目的別トレーニング
最大筋力向上のための条件
筋肉肥大のための条件
筋パワーの増大のための条件
筋持久力向上のための条件
D. 最大筋力の測定法
E. フリーウェイトトレーニングとマシントレーニング
長所と短所
身体各部のレジスタンストレーニング
胸部のトレーニング種目
上肢の筋群(上腕部・前腕部)のトレーニング種目
肩腕部・腹部の筋群のトレーニング種目
背部の筋群のトレーニング種目
下肢の筋群(脚部・臀部)のトレーニング種目
●アイソメトリックトレーニングの実際
●自重や身近な用具を使ったトレーニングの実際
●サーキットトレーニング
A. 運動プログラムの手順
B. サーキットトレーニングのバリエーション
『スポーツトレーニングとは、運動刺激に対するからだの適応性を利用し、意志力を含めた人間のスポーツ能力の強化・発達をさせる過程である。』
筋力トレーニングの基礎
1.筋力トレーニングの効果
2.筋力トレーニングの原則とその処方の条件
3.筋力トレーニング・プログラムの作成
1.筋力トレーニングの効果
1)運動筋を支配する神経の働きが増す効果
トレーニングに伴う筋力の増大は、筋肉そのものの肥大と筋肉を支配している神経回路ともいうべき神経インパルスの機能向上によって起こると考えられている。筋力トレーニングを始めたばかりのころは、筋肥大を伴わない筋力増加が見られるが、これは神経インパルスの電気信号発射が頻発になり、運動に反応する神経が活性化されるためである。このあとトレーニングを続けると筋肥大を伴って筋力も増していく。
2)筋肥大、筋力、パワー・アップの効果
筋力トレーニングは筋線維を太くするとともに、筋原線維の数も増やすので、トレーニングを続けると筋肥大が生じ、その分、筋力がアップすることになる。パワーとは力と速さの積であらわされる。人体でいえば力は,すなわち筋力であり,速さは筋収縮の速度というわけで,筋力トレーニングで最大筋力を高めることによってパワーも向上する。
3)シェイプ・アップの効果
筋力トレーニングを適正に長期間実施すれば,筋力アップだけでなく体型をある程度変化させることが出来る。相対的に引き締めたい部分,バルク・アップしたい個所等、負荷の調整,処方の仕方によって随時可能である。また、筋力トレーニング実施後、数時間は基礎代謝が増す効果や、筋量の増大効果によって、安静時代謝量が増すため、エアロビクス運動と組み合わせて行えば、より効果的なダイエットが可能となるだろう。
4)整形外科的疾患の予防,治療の効果
例えば捻挫,肉ばなれ,腰痛等は、筋力の低下やその部位の筋肉,靭帯、腱などが弱いこと、拮抗している筋肉における筋力のアンバランスなどが生じているために起こると考えられる。これを強化、是正すればそれらの予防になるはずである。受傷後のリハビリテーション・エクササイズとしても筋力トレーニングは原因療法の重要な手法として有効といえる。
5)生活習慣病の予防,治療の効果
最近、高血圧や糖尿病といった生活習慣病に対する筋力トレーニングの効果が注目され、その有効性が報告されている。筋力トレーニングの重要性は、今後、さらにモータリゼーション化が進むであろう現代人の生活において、ますますクローズアップされることだろう。
6)精神(気力)活性化の効果
強い筋活動は大脳を活性化しやる気を起こさせるという。精神疾患を持つ人,例えばノイローゼ患者等に筋力トレーニングを処方して好結果を得たという報告もなされている。
2.筋力トレーニングの原則とその処方の条件
1) トレーニングの原則
(1)過負荷(オーバーロード)の原則
(2)意識性(自覚性,意欲性)の原則
(3)全面性の原則
(4)漸進性の原則
(5)個別性(専門性,特殊性)の原則
(6)継続性(反復性)の原則
(1)充血法(flushing system)を採用する。
同一運動種目を続けて多数セットやるか,同一筋群を何種目かの運動で多角的連続的にトレーニングする。一般に初心者にあっては全面的筋力アップを主体に,多種目少セット制を採用し,鍛錬者にあっては専門的筋力アップに重点をおく,少種目多セット制を採用することが好ましい。
(2)大きな筋肉から小さな筋肉へと強化する
人間の身体動作は必ず大きな筋肉がゆっくり動くことから始まる。そして、加速した段階で中位の筋肉が動きだし、さらに加速した段階で小さな筋肉が動き、より小さな筋肉へと移っていく。その結果、末端を最も速く動かすことが可能となる。このことは大きな筋肉から小さな筋肉へと順番にトレーニングを進める必要があることを意味している。
(3)抗重力筋を強化する
人間は運動を実施しているしていないにかかわらず重力の影響を受けている。この重力に対して姿勢を保持するために緊張している筋肉のことを抗重力筋という。重力に対して姿勢を保持する筋肉をしっかりさせておかなければ、地球上での快適な生活や運動パフォーマンスの向上は考えられないだろう。 重力の影響を最も受けやすい筋肉への刺激をおろそかにした筋力トレーニングは存在しないはずである。
(4)拮抗する筋肉をともに強化する
筋肉は基本的には伸びた状態から収縮する際に力を出す、ほとんどの場合、その筋肉と拮抗している筋肉(反対側で相反する動きをする筋肉)が収縮しながら力を出している。この拮抗している筋肉のバランスを考えずにトレーニングすれば、一方向の収縮力が強くなりすぎたり、反対に弱くなりすぎて、単に運動効果が望めないだけでなく故障や怪我の直接の原因となるはずである。
(5)上半身よりも下半身を強化する
人間は全身の筋肉量の約2/3は下半身に集まっている。身体のバランスをとるという意味では、運動時間や質、量的要素などすべての面において上半身と下半身の運動の割合は1:2が理想的であるといえる。上半身のトレーニングばかり行い、大切な下半身への刺激をおろそかにするならば身体のバランスを悪くし、これもまた、故障や怪我の原因となり得るだろう。
(6)呼吸循環器系のトレーニングも重要である
筋肉を作る蛋白質を運んだり、トレーニングによって生じた疲労物質をすばやく取り除くのは呼吸循環器系の力である。呼吸循環器系の能力の向上、すなわちエアロビック運動を無視した筋力トレーニングは決して望ましいものとはいえないだろう。
2)トレーニング処方の条件
(1)筋力トレーニングの種類
アイソメトリックス(Isometrics;等尺性)トレーニング
筋肉がその長さを変えないで緊張を持続している状態で行われるトレーニングのことをいう。筋収縮の様式は、筋肉が動かないところから等尺性筋収縮(isometric contraction)、あるいは静的収縮とよばれている。動かない壁を押すとか手のひらにものを乗せて保持するといった場面に相当する。
メリット
a. 短時間に簡単にトレーニングできる。
b. 用器具がなくても,何処ででもトレーニングできる。
c. 疲労が少ない(エネルギー消耗が少ない)ので頻繁にできる。
d. スティッキング・ポイント(sticking point)の集中的強化ができる。
e. 緊張筋(tonic muscle)の活性化に特に効果的である。
f. リハビリテーション・エクササイズの一部として行う筋力強化方法として活用できる。あるいは中・高年者用の筋力トレーニングとしても安全で,オーバー・トレーニングに陥り難いので効果的である。
デメリット
a. 動きのトレーニングには不向きである。
b. 持久力のトレーニングとしても不適当であろう。
c. 運動が単調で興味に欠ける。
d. 努責が持続しやすい。中・高年者あるいは呼吸循環器系に若干トラブルのある人,例えば本態性高血圧者などには努責は極力避けるべきである。
e. 関節角度特異性がある。
アイソトニックス(Isotonics;等張性)トレーニング
筋肉がその長さを変えながら収縮する状態で行われるトレーニングのことをいい,筋収縮の様式は、その時の張力が一定なので等張性収縮(isotonic contraction),あるいは筋肉が動くので動的収縮といっている。動的運動では筋肉はこの状態で収縮している。さらに細かくみれば,筋肉が短縮する状態と逆に伸長する状態がみられる。前者を短縮性筋収縮(concentric contraction),後者を伸長性筋収縮(eccentric contraction)といっている。例えば手に重りを保持し,肘をまげながら前腕を上方に上げてそれをまきあげる時は上腕二頭筋は短縮性筋収縮の状態にあり,逆にその重りを下におろすときは上腕二頭筋は伸長性筋収縮の状態にあるといえる。
メリット
a. 自由に動作がコントロールできる。アイソメトリックスが動きの一部分をとらえて実施するのに対して,アイソトニックスは連続的動作として実施でき,フォームや動きの速さ,リズム等も考えて実施できる。
b. したがって専門的筋力トレーニングとしてはアイソメトリックスよりも行いやすい上、効果的である。
c. エネルギーの消耗が多いので筋肥大や筋持久力のトレーニングには有効である。
d. アイソメトリックスより興味あるトレーニングができる。現在どの位の重量で何回位できるといったような達成感が満足できるのでかなり興味深くできる。
デメリット
a. 危険を伴うことが比較的多い。特にヘビー・ウエイトでのクイック・リフトやスクワット,ベンチプレス等では重大な事故につながることがある。
b. トレーニングの効率という点ではアイソメトリックスに幾分劣る。すなわち疲労感が強いのでトレーニングを頻繁にはできない。
c. 取り扱いが幾分煩雑である。
d. 用器具,特にマシーン類は高価である。
e. 格納する,あるいはセットするのに広いスペースを必要とする。
アイソキネティック(isokinetics;等速性)トレーニング
何れの筋力トレーニング法も一長一短があり,何れが優れているということは一概には言えない。原則的にはトレーニングの目的によって両者を使い分けることが肝要である。
(2)筋力トレーニングの強度、時間、頻度、期間の条件
(反復回数、セット数)
強度(Strength or Intensity):できるだけ強い抵抗をかけたほうが筋力増大効果は大きいといわれている。ただし、強度の条件は、筋肥大を目的で行うか、集中性を高めるために行うかによって異なる。筋肥大を主体に筋力アップを目指す場合は、一般的には最大筋力の約70%以上の負荷が必要。これに満たない負荷をかけ続けても、思ったような筋力アップは期待できない。
持続時間 (Duration):トレーニングの種類によって異なる。
頻度 (Frequency):個人差や運動様式のちがい(Isotonics or Isometrics)によって、一概にはいえないが、トレーニングの内容(種目、強度)によって、1日~4日の休息期間が必要。ビギナーやトレーニングレベルの低い者は十分な休息を入れて行う必要がある。
アイソメトリックストレーニングの処方の条件
アイソトニックストレーニング処方の条件
3.筋力トレーニング・プログラムの作成
筋力トレーニング・プログラムを作製するにあたって、上述のトレーニングの原則及びその処方の条件を踏まえた上で、以下の点を考慮するとよい。
1)プログラム作製上考慮すべき条件
(1) トレーニングの目的
体力づくり・シェイプアップの一環
スポーツトレーニングの一部
リハビリテーション・エクササイズの一部
(2) 利用可能な用器具,施設
(3) 個人の諸条件
年齢・性・経験・体力・運動能力等
2)プログラム作製上考慮すべき原則
個人個人によって筋力トレーニングの目的は異なる。しかし、一部のボディー・ビルディングを目指している人や、リハビリテーションを目的にトレーニングを行っている人を除けばすべての人に共通していることがある。それは、トレーニングを行うことで日常やスポーツ活動における身体動作、技術動作そのものが改善、向上されることが、その最終目標であるという点である。そのことを常に意識して、トレーニング・プログラムを作成することが極めて重要であろう。以下に、考慮すべきいくつかのポイントを上げた。
3)筋力トレーニングの代表的システム
普通,筋力トレーニングはセット法(set system)を採用する。これはレペティション・トレーニング方法であり,強い運動を完全休息を入れながら反復実施する方法である。しかし筋肉は馴化の早い組織であるから,トレーニング刺激のバリエーションを考慮することが重要である。以下にトレーニングの変数を考慮しながら重量の変化,フォームや速さの変化,運動種目の組み合わせの変化等を入れて筋肉に多角的刺激を与えるトレーニング・システムを紹介する。
(1)最高10回反復法(10RM System)
各セットとも10RMで実施する方法。運動量が多く筋量を増やすため、シーズンオフのトレーニングに適している。
(2)ピラミッド法(Pyramid System)
セット毎に重量を漸増,漸減していく方法。特に大筋群について強力な筋力を必要とする場合、この方法は有効。
(3)交互反復法(Super Set System)
2種目の運動を選んでこれを1スーパーセットとして行う方法。
(例)
拮抗運動または拮抗筋を選ぶ方法
同一筋群を選ぶことのできる異なった運動種目を選ぶ方法
強い運動と弱い運動を組み合わせる方法
(4)マルチ・パウンディジ法とフォースト・レペティションズ法
(Multi poundage System and Forced Repetitions System)
各セットの間にインターバルをおかずに、何セットかを続けて行う方法
ある運動を重りが上がらなくなるまで続行し、その時点で重りをいくらか落とすという方方法。そしてインターバルをおかずに落とした重量でまた上がらなくなるまで続行し、それを繰り返す。1つの重量を上がらなくなるまで行うのではなく、あらかじめ重さに合わせた回数を設定しておくという方法もある。
(5)パーシャル・レインジ法(Partial Range Method)
パーシャル・レンジとは可動域を限定して行う筋力トレーニングのこと。※可動域を目いっぱい使う動作はフルレンジという
例えばベンチプレスだとバーベルが胸につくまで下さずにバーベルを押し上げる動作を繰り返すトレーニング法のこと。
(6)スプリットルーティーン;分割法(Split Routine)
運動種目や運動強度、体のトレーニング部位を日によって分けて実施する方法
(7)プレイグゾーション法(Pre Exhaustion System)
スーパーセット法の応用で、2種目の組み合わせ方にさらに工夫を加えています。
(8)レスト・ポーズ・トレーニング(Rest Pause Training)
マルティ・パウンディジ法の応用。1~3RMの重量で始め、継続不可能となったら休息(15~20秒)を入れ、この間にすばやく重量を減らして1~2回実施する。
トレーニング機器使用についての諸注意
準備運動(ストレッチ)、ウォーミングアップを十分に行う。
エリア内清掃など衛生面に留意する(飲食禁止)。
エリア内を移動する時は、(特に寝た姿勢などで)他のトレーニングを行っている人に注意する。
タオルを持参する。シートや器具について汗はふき取っておく。
トレーニング動作は一定のリズムで行い、怒責による心臓・血管系への負担を避けるため、極力、呼吸を止めないようにする。
器具を使用する時は、あらかじめ不備や故障がないかチェックする。
トレーニングは、必ず2人以上1組で行う。1人が運動を行っている間、他の1人が動きや機器のチェックを行う。周囲の状況にも注意を払う。
負荷は軽めのものから行う。特にトレーニングの初期では、動作に習熟した後に負荷の増量を行う。
トレーニングを行う足場に注意する。上履きは必ず着用する。
床からウェイトを持ち上げるときは、背をのばし、胸をはるようにする。
トレーニング実施中体に異常を感じたら、直ちに運動を中止する。
トレーニング機器の上で休まない。また機器の上に物を置かない
ウェイトトレーニングは、以下の基本動作を組み込んだ、運動方法です。
「押す(プレス)」⇔「引く(プル)」
「上げる(レイズ)」⇔「下げる(ダウン)」
「巻く(カール)」⇔「伸ばす(エクステンション)」
ウェイトトレーニングの運動方法の名称に、必ず、プレス・プル・レイズ・ダウン・カール・エクステンションという用語がつくのは、その動作を表しているからです。
3)筋力トレーニングのメニュー
筋トレメニュー一覧 (筋肉大全)
大胸筋
ベンチプレス ナローグリップ・ベンチプレス
ワイドグリップ・ベンチプレス インクライン・ベンチプレス
デクライン・ベンチプレス ダンベル・ベンチプレス
ダンベル・フライ インクライン・ダンベル・ベンチプレス
インクライン・ダンベル・フライ プッシュアップ(腕立て伏せ)
ディップス
大腿、下腿
スクワット
重要なポイント
「膝をつま先からださないように」
「腰を丸めない」
⇒「骨盤前傾を保ったまま、股関節の軽度屈曲」
ナロースタンス・スクワット
ワイドスタンス・スクワット クォーター・スクワット
フルスクワット シッシー・スクワット
ヒンズー・スクワット シングルレッグ・スクワット
ブルガリアン・スクワット フロント・ランジ
サイド・ランジ レッグ・プレス
レッグ・エクステンション レッグ・カール
カーフレイズ シングルレッグ・カーフレイズ
ドンキー・カーフレイズ
上腕二頭筋
バーベル・カール ダンベル・カール
インクライン・ダンベルカール ハンマーカール
コンセントレーション・カール プリチャーカール
バックハンド・カール ケーブル・カール
上腕三頭筋
ワンハンド・トライセプス・エクステンション トライセプス・キックバック
ライイング・トライセプス・エクステンション トライセプス・プレスダウン
バーベル・トライセプス・エクステンション リバース・プッシュアップ
ケーブル・トライセプス・エクステンション ナロー・プッシュアップ
サイドライ・トライセプス・エクステンション ナローグリップ・ベンチプレス
前腕
リスト・カール リバース・リスト・カール
肩の筋トレ
肩
フロント・レイズ サイドレイズ
リア・レイズ ショルダー・プレス
フロント・プレス バック・プレス
アップライト・ローイング シュラッグ
背中(上) 広背筋
チンニング インクライン・チンニング
ラットマシン・プルダウン ワンハンド・ダンベル・ローイング
ベントオーバー・ローイング プルオーバー
ケーブル・ローイング
背中(下) 脊柱起立筋
デッド・リフト バック・エクステンション
バック・レイズ ボディーアーチ
腹筋
クランチ ツイスト・クランチ
サイド・クランチ シットアップ
ツイスト・シットアップ ドラゴン・フラッグ
レッグ・レイズ1 レッグレイズ2
ヒップ・レイズ ヒップ・スラスト
Vシット ニートゥチェスト
サイドベンド リバース・トランク・ツイスト
シザーズ トランク・カール
リバース・クランチ
臀部
ヒップ・リフト バック・キック
フロント・ランジ プローン・シングル・レッグレイズ
ワイドスタンス・スクワット ヒップ・アブダクション
首
レスラー・ブリッジ リバース・レスラー・ブリッジ
ネック・エクステンション ネック・フレクション
サイドネック・フレクション
筋肉大全
J 柔軟性の運動プログラム p162
K トレーニング効果の維持 p165
第8章 心疾患患者の運動処方
E 心疾患患者の持久性運動トレーニングの利点 p193
F 心疾患患者のレジスタンストレーニング p194
H 特殊な心臓病患者集団
心筋虚血
狭心症患者への運動処方とトレーニングの考え方
うっ血性心不全
心不全患者への運動処方とトレーニングの考え方
第9章 運動処方に影響するその他の疾患
D 高血圧 p221
E 肥満 p225
F メタボリック症候群 p229
J 肺疾患 p239
第10章 小児と高齢者に対する運動負荷試験と運動処方
Section Ⅳ 付録
付録D エネルギー代謝の計算 p299
A VO2の測定
B エネルギー消費の推定・代謝計算
C 代謝計算の活用
付録E 環境的考察 p315
A 暑熱と湿度
B 寒冷・風・雨
C 高所暴露
付録E 環境的考察 p326
A アメリカスポーツ医学会(ACSM)の認定と公表
B ACSM認定プログラム
D ACSM認定のための知識、技術、および能力
●メッツ METS(metabolic equivalents)
様々な身体活動におけるMETSに関する表
身体活動時の代謝量が、安静時の何倍に相当するのかを示す尺度のこと。メッツとは、当該身体活動におけるエネルギー消費量を座位安静時代謝量(酸素摂取量で約3.5 ml/kg/分に相当)で除したもの。
※1METは、「座位安静時代謝量(酸素摂取量で約3.5 ml/kg/分に相当)」。すなわち、1メッツで運動(活動)しているときには、体重1kgあたり・1分あたり・酸素3.5mlを使いってエネルギーを消費していることになる。座位安静時代謝量の2倍に相当する運動(活動)は2METs、3倍に相当する運動(活動)は3METsと表す。
●エクササイズの身体活動量に相当するエネルギー消費量
簡易換算式:エネルギー消費量 (kcal) = 1.05 x エクササイズ (メッツ・時) x 体重 (kg)
すなわち、60kgの体重の人が2 METsに相当する運動を1時間行った際のエネルギー消費量を求めると、1.05 x (2 METs x 1時間) x 60kg = 126 kcal となる。
本実習では、各自の1MET、すなわち、「座位安静時代謝量(1分あたりの酸素消費量)」を実測しているので、この値を用いれば、より正確な数値を求めることができる。
1リットル(1000ml)の酸素消費量は約5Kcalのエネルギー消費量に相当するため、
本実習で求めた、座位安静時の1分あたりの酸素消費量が250mlならば、
5 kcal x 250ml/1000ml = 1.25 kcal のエネルギー消費量に相当することになる。
この値は1METsに相当する。現測定時点であなたは、約1.25kcal/分の代謝を行っていることになる。
仮に、その状態で24時間(1440分)安静にしていれば、1.25kcal/分 x 1440分= 1800 kcalのエネルギーを消費することになる。この値は、上記に述べた座位安静時代謝量(1METs)に相当する。
実測値に基づき、3 METsに相当する運動を1時間、2 METに相当する運動を2時間行った際のエネルギー消費量を求めると、(1.25 kcal/分 x 3 METs x 60分) +(1.25 kcal/分 x 2METs x120分) = 225 kcal + 300 kcal 、トータル525 kcal 運動時にエネルギーを消費したと計算される。
morinomiya.univ.lecture.1@gmail.com
〈健康づくりのための運動基準・指針〉
健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)(PDF:1,216KB)
健康づくりのための運動基準2006(PDF:519KB)
これらの英語版、中国語版及び様々な運動の強さを表したメッツ値表は独立行政法人国立健康・栄養研究所のHPよりご覧頂けます。
健康づくりのための運動に関する文献は、財団法人健康・体力づくり事業財団のHPより検索することができます。
■ガッテンコラボ:脳科学で 食欲がコントロールできた!
※ NHKあさイチ2011年9月28日放送
【ガッテンで大反響!脳科学で食欲抑え体重激減】
◎専門家ゲスト:坂田利家(大分医科大学名誉教授、久恒病院 生活習慣病科)
●食欲を抑えられない深~いワケ
●人間の食欲を増進させるものあぶら、甘み、うまみ、ストレス、睡眠不足、グルメ情報、香り、見た目 などなど。→食欲を意志の力で抑えるのはとっても難しい。
●世界初の発見!食欲を抑えるのは脳内のヒスタミン
大阪大学医学部第二薬理学講座
●150キロの男性も“噛(か)む”で大幅減量
●食べて食欲が抑えられる、夢の食品!
ヒスチジン(脳内でヒスタミンに変化)を含む食品:本マグロ、カツオ、ぶり、さば、さんま等(赤身魚や背の青い魚に多く含まれる。)