5. 運動と呼吸・循環システム
呼吸・循環系
(1week)
【3.血液】
6話 血液の成分 8分
7話 血液の豆知識 7分
【4.循環系】
8話 心臓のしくみ 11分
9話 血管丸暗記大作戦 8分
10話 静脈と胎児循環 5分
11話 リンパ系 3分
【5.呼吸器系】
12話 上気道 5分
13話 下気道 6分
14話 呼吸のポイント 8分
15話 呼吸の調節 6分
生物のしくみ
オマケ2話「体内の恒常性」 7分40秒
運動の持続と呼吸循環系
呼吸循環系の機能の指標と調節機構
運動に伴う呼吸循環機能の変化
運動時の酸素利用
トレーニングによる呼吸循環系の適応
運動と血液・体液
ヒトの呼吸循環器系、その秘めたるパワー
ヒトの呼吸循環器系は「省エネ優等生」
運動をすると心臓の鼓動が速くなり、息が上がります。普段より血液が多く送り出され、呼吸循環器がフルに働きます。この状態からわかることは、ヒトは普段、呼吸循環器の能力をセーブして使っているということです。そもそも呼吸循環器は運動時を前提に能力設計されていて、安静時には最大能力の約5~15%しか使っていません。いわば省エネ運転しているようなものなのです。
運動によって心肺機能は強化される
ヒトの呼吸循環器系が機械と違うのは、より強い運動に適応していくところです。運動すると、ヒトの身体には瞬間的に急激な負荷がかかります。そのため身体は運動に対し、最大限の準備をして態勢を整えます。特に自律神経系は瞬時に反応し、心肺機能や筋肉の代謝機能を運動負荷に応じて制御します。長期的に運動を続け、それを繰り返すことで、心肺機能や筋肉が強化されていきます。アスリートの身体や身体機能がどんどん変化し、記録更新がなされるのはこういう理由です。
パフォーマンスの数値化が医療現場でも役立つ
しかし、どのような運動をどの程度の時間をかけて行えば、呼吸循環器系のはたらきが変化していくのか、理論的にははっきりしていません。今までは経験則を元に指導やトレーニングが行われてきました。運動生理学の研究でこれらの数値を体系化できれば、アスリートにとってはトレーニングの最適化につながり、また一般の人たちの健康を保つための運動指導にも役立ちます。さらに呼吸循環器系の疾患のある患者さんにも、運動を一つの検査手法や療法として用いることができるようになります。安静時に検査してもわからなかったことが、運動負荷を与えたときに明らかになることもあるでしょう。
運動生理学というとスポーツのイメージが強くありますが、医療の現場で役立つ可能性も高いのです。医療現場での運動に対する理解を深め、高い知識を持つ指導者を育てていくことが運動生理学の今後の大きな課題と言えます。
(吸い込まれた空気→肺ガス交換→肺循環)
心臓のつくり → かえるの解剖→ かえるの心臓→ ラットの心臓
運動の持続に対する呼吸循環系(心臓、肺、血管系など)の役割を理解する。
呼吸器の働きと構造
循環器の働きと血液の循環経路
心臓の働きと構造
血管の役割と構造
呼吸系の機能の指標
循環系の機能の指標
呼吸機能の調節
循環機能の調節
運動時の呼吸の変化
運動時の心拍数の変化
運動時の1回拍出量の変化
運動時の心拍出量の変化
運動時の血圧の変化
有酸素性体力としての最大酸素摂取量、無酸素性代謝閾値(AT)を理解する。
酸素摂取量の変化
無酸素性閾値(換気性閾値)
最大酸素摂取量に影響する因子
酸素借と酸素負債
最大酸素借
持久的トレーニングと呼吸系の適応
持久的トレーニングと心臓の適応
持久的トレーニングと血管
運動に対する体液(血液、水分)の果たす役割を理解する。
② 循環調節機構について (7~8月)
解剖と生理(動脈圧受容器反射のしくみと血圧・心拍数調節機構)
演習(脳循環、心拍出量、血圧、心拍数(ECG, R-R間隔)の測定・実習)
データ解析手法
③ 呼吸調節機構について (9~10月)
解剖と生理(化学受容器反射のしくみと呼吸の化学調節機構)
演習
(分時換気量、Flow-Volume曲線、中枢及び末梢化学受容器感受性の測定・実習)
データ解析手法
④ 体温調節機構について (10~11月)
解剖と生理(温度受容器反射のしくみと体温の中枢末梢調節機構)
演習(深部温(鼓膜温、皮膚温)の測定・実習)→未整備
データ解析手法
ビデオクリップ(呼吸)
ビデオクリップ(循環)
https://youtu.be/WBwPhWAP394
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潜水動物の呼吸調節について
ペンギンの潜水能力
生態学と進化
記事 : ペンギン達のヘモグロビンは「特別製」かもしれない07年12月08日(土)Penguins Safely Lower Oxygen to "Blackout" LevelsNational Geographic News 12/7
ペンギンというのは「餌を獲得する為に水に潜る鳥」なのですが、非常に長 時間水中で魚を追う能力を持っている、という事が知られています。今回、 南極大陸の厚い海氷に人工的に空けられた「穴」を使って研究が行われ、 ペンギン達が他の生物種なら「Blackout」と呼ばれる意識が消失してしま うようなレベルの非常に低い酸素濃度で活動できている事が報告されました。
研究対象になったのは「Emperor penguins(コウテイペンギン)」で、 実験の為に人工的に厚い氷が存在している領域に空けられた「穴」から 漁に出かけ、同じ場所に戻ってくるように仕掛けが作られました。ペンギン達の「肺(気嚢)」の中に設置された小さなセンサー群によって、 潜水中の彼らの状態が測定され、背中にくくりつけられた装置に無線信号が 送られて記録されたのだそうですが、それによると最長潜水時間は「23分」 だったそうです。もちろんその間、逃げ回る魚を高速で追いかけているので すから … 驚異としか言いようがありません。コウテイペンギンのヘモグロビンと血中タンパク質のmyoglobin(ミオグロ ビン)の濃度が、他の生物よりも高い事は知られているそうです。
同じbody mass(身体質量)で、彼らは人間のおよそ2.5倍の量の酸素を貯蔵している そうです。ですが、肺に存在する酸素のレベルが今回の研究が明らかにしたような非常 に低いレベルになってしまうと、普通の生物のヘモグロビンはそこに存在す る酸素を「取り込めない」のだそうです。それは酸素を必要とする組織に それが届けられず、損傷が生じてしまう事を意味します。また、脳の酸素 不足は「Blackout(気絶)」という状態を引き起こします。水中でそれが 起きたら命が失われます。研究者達は、潜水をする生物種では酸素の貯蔵と消費に関連して様々な適応 が生じているが、「ヘモグロビンの酸素拘束力」も非常に高いのかもしれない、 という仮説を提唱しました。そういった事が判ってくると、人間に生じる低 酸素状態での組織損傷やそれに対する防御手段の研究にもプラスなのだそう です。なににせよ、極寒の南極大陸で辛抱強くデータを集めてくれた人達の努力に お礼を申し上げたいと思います。データが科学の基礎なのですから。新しい研究によって、Emperor penguins(コウテイペンギン)が、 非常に酸素貯蔵能力が高い形式の血中タンパク質を持っているかもし れない、という事が示唆されています。そのタンパク質が、彼らが 一回の息つぎによって20分以上も水面下に潜るという事を可能にして いるのかもしれないそうです。
今回の研究では、南極大陸に生息しているのpenguin(ペンギン)達が、 これまでに野生動物達で記録された中で最も低い血液酸素レベルで、 海氷の下の長い漁獲遠征から戻ってきている、という事が明らかにされて います。専門家達は、他の生物がそのような低いレベルまで酸素を使い果たして しまったとしたら、意識は消失し、身体の組織の損傷に苦しめられる事 になるだろう、と語っています。今回の研究結果は、「emperor(皇帝)」と名付けられている最も大きい ペンギン達が、hemoglobin(ヘモグロビン)と呼ばれる、肺から身体の 組織に酸素を運搬している血中タンパク質の「hyped-up version(非常 に強力なバージョン)」を持っているかもしれない、という事を示唆し ています。
他の生物種では、ヘモグロビンは、酸素の濃度が低い場合には、効率的に 酸素を取り込んで身体の組織に運ぶ、という事は出来ないのです。切実に それが必要とされている状況であっても、肺に取り込まれた酸素を完全に 利用するという事は、他の生物では不可能な事なのです。ですが、ペンギンのヘモグロビンは非常に「高感度」であるように思われ ます。それは鳥の気嚢の中に最後に残された酸素を拾い上げて、それを 生命の維持に重要な役割を果たしている器官に届けている様なのです。「私達は、Emperor penguins(コウテイペンギン)が、他の生物とは 異なった酸素拘束力を持つヘモグロビンを持っているという事によって、 血液中により多くの酸素を蓄える事が可能なのだ、という仮説を立てて います」、と今回の研究を率いたサンディエゴのScripps Institution of Oceanographyに所属するPaul・Ponganisは語っています。「そのことによって、肺に取り込まれた酸素を完全に使用する事が可能に なるでしょう。またそれは、低い酸素圧のもとでもより大きな酸素含有量 を提供する事になるでしょう。つまり組織には一切損傷が生じないのです」
今回の研究結果は、「Journal of Experimental Biology」誌の最新号の issueとして掲載されます。ペンギン達は広大な海洋で狩りをするコウテイペンギンは広大な海洋で、魚、イカ、オキアミといった生物を 捜し求めている時に、565メー撮るという深さにまで潜ることができます。ペンギン達は、酸素を貯蔵する能力と、酸素の消費率をコントロールする 能力を増加させる事を助ける為に、数多くの適応を遂げています。例えば、コウテイペンギンではヘモグロビンと血中タンパク質のmyoglobin (ミオグロビン)の濃度は、より高く成っています。それはコウテイペン ギン達が同じbody mass(身体質量)で、人間のおよそ2.5倍多く酸素を 貯蔵する事を可能にするのだ、とPonganisは強調しています。またペンギン達は、長時間の潜水の際に心臓の拍動速度を1分間あたり5回 という割合にまで遅くすることによって、酸素を保存してもいるのです。 それは彼らが魚を追いかけている間でも、同様なのです。「水中に潜る活動をする動物たちが、なぜ低酸素レベルとより少ない血流 のもとに置かれても組織の損傷を被らないですむのか、という事を理解で きれば、そのような損傷が人間でどのように発生するのか、そしてどの様 にすればそれが防げる可能性があるのか、という事に関する私達の理解が より良いものになるかもしれないのです」、とPonganisは語っています。
今回の研究を行うために、Ponganisと同僚達は南極大陸の南部に有る McMurdo Soundに設置された、「Penguin Ranch:ペンギン牧場」研究 設備に仮住まいし、野生のペンギン達の血管中の酸素レベルをモニター しています。「ranch」の上に存在している海氷の厚い層は、科学者達によってあけ られたダイビング穴の部分でだけ、割れています。他の空気を得られる 氷の割れ目は、ペンギン達が到達するにはあまりに遠い位置に存在する 事になります。ですから、潜水して魚を追ったペンギンたちは、その後 に同じ位置に戻ってこなければならないのです。今回研究されたペンギン達では、気嚢の中に小さなセンサーが複数設置 されていました。それらはペンギンたちの背中に縛り付けられた特別な レコーダーに、データを送っていたのです。装置によって記録された潜水の大部分は、6分未満の長さでした。ですが なかには非常に長い時間を潜っていたものがいたのです。最も長く潜って いたコウテイペンギンは「23分」という時間を潜り続けていたのです。そ れはこれまで知られているコウテイペンギンの潜水時間のなかでの最長か もしれません。
バンクーバーのUniversity of British Columbia(ブリティッシュコロン ビア大学)でdiving duck(潜水ガモ)の生理学について研究している David・R.Jonesは、「潜水をする生き物達の能力は、驚くべきものです。 彼らは、呼吸器系と血液中に蓄えられた酸素のほとんどすべてを使い きる、という状態に自らを置くことが出来るのですから」、と語ってい ます。Jonesは、Ponganisと同僚達が南極大陸の過酷な寒さの中で、ペンギン達 の血液酸素データを集めたというのもまた「凄い事」なのだ、と付け加え ています。「これはダイビング生理学の分野への、本当に重要な貢献なのです」「コウテイペンギン」、「ヘモグロビンと潜水能力」
「科学ニュースあらかると」掲載記事とより抜粋
高山における血液ガス動態(低酸素環境下における)
●エベレスト山頂で、10分間酸素を使用せず測定
肺胞ガス及び動脈血液ガス推定値
動脈
高度 大気圧 吸気PO2 肺胞PO2 PaO2 PaCO2 pH SO2
8848 (summit) 253 43 35 28 7.5 >7.7 70
Sea level 760 149 100 95 40 7.40 97
West JB, Hackett PH, Maret KH, et al. Pulmonary gas exchange on the summit of Mount Everest. J Appl Physiol 1983;55:678-687.
Arterial Blood Gases and Oxygen Content in Climbers on Mount Everest
Michael P.W. Grocott, M.B., B.S., Daniel S. Martin, M.B., Ch.B., Denny Z.H. Levett, B.M., B.Ch., Roger McMorrow, M.B., B.Ch., Jeremy Windsor, M.B., Ch.B., and Hugh E. Montgomery, M.B., B.S., M.D. for the Caudwell Xtreme Everest Research Group
N Engl J Med 2009; 360:140-149January 8, 2009
●エベレスト山頂登下山登山家10名を対象に動脈血液ガスを実測
高度8400m 大気圧272mmHg
平均PaO2は 24.6 mm Hg (19.1 ~ 29.5 mmHg)
平均PaCO2は 13.3 mm Hg (10.3 ~ 15.7 mm Hg)
Arterial Blood Gases and Oxygen Content in Climbers on Mount Everest
N Engl J Med. 360:(2) 140-149 January 8, 2009
呼吸管理に関する最近の知見
PEEP or No PEEP — Lung Recruitment May Be the Solution
Arthur S. Slutsky, M.D., and Leonard D. Hudson, M.D.
N Engl J Med 2006; 354:1839-1841April 27, 2006
Ventilation of an ex Vivo Rat Lung.
positive end expiratory pressure
PEEP:positive end expiratory pressure 呼気終末陽圧
呼気の気道内圧きどうないあつがゼロにならないように一定の圧をかけること。
肺胞の虚脱を防止し,血液の酸素化を改善する。
Sanford Levine, M.D., Taitan Nguyen, B.S.E., Nyali Taylor, M.D., M.P.H., Michael E. Friscia, M.D., Murat T. Budak, M.D., Ph.D., Pamela Rothenberg, B.A., Jianliang Zhu, M.D., Rajeev Sachdeva, M.D., Seema Sonnad, Ph.D., Larry R. Kaiser, M.D., Neal A. Rubinstein, M.D., Ph.D., Scott K. Powers, Ph.D., Ed.D., and Joseph B. Shrager, M.D.
N Engl J Med 2008; 358:1327-1335March 27, 2008
CONCLUSIONS
The combination of 18 to 69 hours of complete diaphragmatic inactivity and mechanical ventilation results in marked atrophy of human diaphragm myofibers. These findings are consistent with increased diaphragmatic proteolysis during inactivity.
人工呼吸器の長時間導入により呼吸筋(横隔膜筋)の委縮が生じる
Atul Malhotra, M.D.
N Engl J Med 2007; 357:1113-1120September 13, 2007
"Wake up and breathe" for patients with respiratory failure.Agarwal R, Srinivas R, Gupta D. Lancet. 2008 Apr 26;371(9622):1413-4; author reply 1414-5.
Daily interruption of sedatives, spontaneous breathing trialsの組み合わせによるweaning protocolにより、1年後生存率の改善、人工呼吸器管理時間の減少・在院日数、ICU滞在日数が減少。
Reference
>>>>>>>>>>>>>>>LINK >>>>>>>>>>>>>>>>
LECTURES:
Alveolar-Arterial Equilibration
Evaluation of Respiratory Function Tests
心拍出量
VO2 (ml/min, STPD)=Q(L/min)*(CaO2-CvO2) mlO2/L血液
CO2=(mlO2/100ml)
=[So2(%) x0.01 x 1.34 mlO2/g Hb x (Hb)]
+ (0.003 mlO2/mmHg/100 ml x PO2)
CaO2 動脈血O2含量
CvO2 静脈血O2含量
Hb ヘモグロビン
脊椎動物の赤血球に含まれる鉄を含む色素(ヘム)とタンパク質(グロビン)とからなる複合タンパク質。肺から全身へと酸素を運搬する役割を持つ。酸素と可逆的に結合するという特徴がある。
色は鉄イオンがあるため赤色。酸素と結合すると鮮紅色、酸素を離すと暗赤色になる。
成人のヘモグロビンの構造は、αとβの2種類のペプチド鎖が各々2本ずつ存在し、合計4つのサブユニットより構成される。
標準値 : (男性) 13.3~17.4g/dL
(女性) 11.2~14.9g/dL