病態分子薬理学研究室は平成27年4月から始まった新しい研究室です。健康と病気に関わる新しい概念「亜鉛シグナル」を研究しています。キーワードは亜鉛トランスポーター・亜鉛シグナル・創薬です。
1:亜鉛トランスポーターとは
亜鉛は生命に必要な元素であり、その欠乏は成長の遅れ・脱毛・皮膚炎・神経機能の異常・免疫力低下などをもたらします。亜鉛の低下は偏った食事や老化によっても引き起こされます。このように重要な亜鉛を細胞内外に運ぶ分子が亜鉛トランスポーターです。
2:亜鉛シグナルとは
亜鉛トランスポーターが輸送する亜鉛は「情報の運び屋」として機能しており、このような亜鉛の働きは亜鉛シグナルと呼ばれています。
3:亜鉛シグナルの異常が病気をもたらす
最近、亜鉛シグナルの異常が病気に関わることが明らかになり、薬剤開発の視点から亜鉛シグナルが注目されています。
研究を通して伝えたいこと:「研究マインド(探究心)」と「不撓不屈(諦めない心構え)」
探究心を養いたい, 実験でドキドキしてみたい, 何かを発見したい, 学会で発表してみたい, 世界と勝負したい, etc, そのような学生さんの見学と相談を歓迎します。
すべての生命体において亜鉛は必須要素である.:
亜鉛は生体における存在量としては鉄の次に多い必須微量元素であるにもかかわらず,亜鉛が生命維持の必須要因であるその理由については今まであまり注目さ れてこなかった。 一方,最近の遺伝学や分子生物学の発展によってにわかに“亜鉛生物学”が注目を浴びている。 「なぜ亜鉛は生命に必要であるのか?」:長く問われてきたこの問題に,「亜鉛によるシグナル伝達:亜鉛シグナル」をキーワードに解明するのが本研究室の目 標である。
研究内容:「亜鉛シグナルの生理的意義の解明と制御方法の開発」
がんにおける亜鉛シグナルの役割解明
皮膚と毛髪の発生における亜鉛シグナルの役割解明
神経における亜鉛シグナルの役割解明
創薬:亜鉛シグナルを制御する方法の確立
1:本研究室における亜鉛生物学の原点は,細胞内シグナル伝達の研究にある(図1):
細胞内シグナル伝達の活性化に伴う細胞機能の誘導に亜鉛トランスポーターが関わることを見出して,その生理的意義と疾患における関与について 分子・細胞・個体レベルの研究手法を用いて追求した。その結果,亜鉛トランスポーターを介する亜鉛がシグナル因子として機能すること, この亜鉛シグナルが様々な生理現象や病態形成に関わることが明らかになってきた。