まずは悩みを吐き出してみよう
まずは本機能の開発目的ですが、相談者が気軽に悩みや気持ちを吐き出せる場所を作ることが挙げられます。
例えば、カウンセリングでは目の前のカウンセラーと一対一で話しながら、自分が今抱えている悩みや負の感情を開示していきます。
しかし、相談者の方は以下の4つの心理的ハードルを感じているのではないでしょうか?
初対面の人と話す緊張
「利害関係がない人」に話すことで周囲には話しにくいことを話せるというのが、カウンセリングの一つの特徴であると考えられます。そのため、心理職は血縁、友人、同僚等の「カウンセリング以外の人間関係がある人へのカウンセリングの提供は基本的に行わない」し「カウンセリング以外の関係を持ってはいけない」とされています。(多重関係を避けるといいます)
つまり、初めてのカウンセリングの時点で相談者とカウンセラーは必ず初対面になりますが「初対面の人にいきなり自分のことを話すのは緊張する」と思うのもしごく自然なことではないかと思います。
負の感情を話したときの(カウンセラーの)反応が怖い
カウンセラーとはいえ、初対面の人に自分の負の気持ちを話すのはハードルが高いものですし、何から話していいかを迷う人も少なくないと思います。また、普段の生活の中で自分の心情を他人に詳しく話す機会は少ないですから「自分の気持ちを正直に話したらどう思われるだろう」という不安は、どうしても拭えないかもしれません。「こんなことくらいで相談してすみません」という言葉を耳にすることもあります。辛い状況にあっても、そのための助けを求めたり、辛い気持ちを吐き出すということは案外難しいと感じる方は多いのではないかと思いますし、それは心の専門家と言われる人が相手であっても感じるものではないかと思います。
カウンセリングに対する世間的なイメージ
加えて、現状の心理支援(カウンセリングなど)はすでに深刻なこころの不調を抱えた人が受けるものというイメージも強いです。中には「自分はカウンセリングを受けるほどじゃない」という表現をする方もいます。
そのため、「相談に行っても大丈夫だろうか」と心理的ハードルを感じる方もいるかと思います。
カウンセリングで何ができるのかよくわからない
カウンセリングを受けることで何ができるのかわからないという人も少なくはないかと思います。話したところで解決されるわけでもないし、結構値段は高いし、話すことの意味はなんだろうか、そもそも自分がカウンセリングを受ける必要があるのかよくわからない、そんな方もいるのではないでしょうか。
このような理由から、実際に相談するまでにあれこれ考えてしまい、なかなか相談に行く勇気が出ないという方は多いのではないかと考えています。
そこで「相談をしたい気持ちがないわけではないけど、実際に相談するには抵抗がある方」の役に立てるものはないかと私たちは考えました。それがAIアシスタント「AIコマちゃん」です。
AIの情報処理には限界もあります。見当違いな回答をすることもありますし、中には正しい情報が得られないような場合もあります。使用する上での注意は必要ではありますが、AIだからこその良さもあるのではないかと私たちは考えました。
それは「人間ではない」ということです。
AIは常に「一定」
人に悩みを話すとき「相手にとって負担になってしまうのではないか」「ひかれてしまうんじゃないか」「どんな風に思われるんだろう」「あんなこと言わなければよかった」そんな考えが頭の中を巡ってしまうことは少なからず経験される方もいるのではないでしょうか。
しかし、AIは恐ろしいほどに「一定」です。気分のムラがあるわけではないし、話している間に顔色を伺う必要もない、普段なら我慢するようなことでも言ってしまえる、言葉の裏表もありません。だからこそあまり気を使わずに話すことができます。
必ず返答が返ってくる
「ペットは余計なことを言わずに聴いてくれるからいい」と飼っているペットに話を「聴いてもらう」人はいるものです。他にも、植物やぬいぐるみなど、自分にとって身近なものに話を「聴いてもらっている」人もいます。とはいえ、身近な存在だと暗い話ばかりしているとペットが可哀想に感じる方もいますし、返事がないことが寂しく感じるという方もいます。
その意味では、利害関係もなく、顔色を伺わずに話を聞いてくれて、情報処理に基づいて、一定の返答はしてくれるAIには、代替し難い「安全感」の側面があるのではないかと私たちは考えました。
返答に過度な期待をせずに済む
人は辛い気持ちを抱えて相談するときに「この気持ちを話したらわかってくれるんじゃないか」「少しでもいい方に向かうことができるのではないか」そんな希望をかけているのではないかと思います。そんな希望がある中で、自分の気持ちを否定されたりすることは、かえって辛い状況になるし、もう誰にも自分の気持ちは打ち明けないようにしようと思ってしまうこともあるかと思います。
しかし、AIであれば過度な期待をしないで「こんなものか」と思えるかもしれませんし、AIが労いの言葉をかけてくれると「思ったよりも嬉しい」と思うこともあるかもしれません。その「ちょうど良さ」みたいな一面がAIにはあるのではないかと考えたわけです。
本来であれば、人との関わりは傷つきながらもやりとりを継続する中で作り上げていく側面もあると思うのですが、そのためにはある程度の安心感のようなものも大事だと思います。特に、今時点で余裕もなく辛い気持ちがいっぱいな状況であるとしたら、まずは気持ちを落ち着かせる方が先決です。だからこそ、一人で自分の気持ちを抱え込んでいる人が、少しでも心を開放できる場所があると良いと思っています。
そこで私たちは、本格的な心理支援を利用する前に、まずは気軽に自分の心にため込んだマイナスな気持ちを吐き出せる場所を用意しました。
普段はなかなか自分の気持ちを正直に吐き出せない人でも、AI であれば他人にどう思われるかを気にせずに気持ちを吐き出しやすいと考えたのです。
また、実際の相談に行こうとしても「何を話したらいいのかわからない」という方もいるでしょう。そのような方にとっては、とりあえず思ったことを書いて気持ちを整理することや、相談をする前の想定練習のようなものも使えるのではないかと考えています。
このようにAI アシスタントには「気持ちを開示する練習台」としての役割が大きいと考えています。
AI アシスタント機能は ChatGPT をベースにした機能で、神社にいる狛犬になぞらえて「コマちゃん」と名付けています。この機能は自身の悩みについて AI アシスタントのコマちゃんにチャット形式で話ができるというものです。
見た目は Omamori のチャット画面と変わりませんが、チャット画面にメッセージを送ると上の動画のように ChatGPT が生成した回答が出力され、チャット形式で会話や自分の悩みやアイデアに対する壁打ちができます。
会話の返信は比較的すぐにくるので、対人のときに比べてスムーズに感じるかもしれません。不具合などが生じた場合に、すぐに返信がこない場合もあるかもしれませんが、その場合は不具合について教えていただけると助かります。
なお、AIアシスタントの利用は連続で最大30分です。また、一度利用するとその後12時間は利用できなくなります。
例えば、あなたが12:15に最初の投稿を行ったとします。この場合、12:15~12:45の30分間は自由にやりとりを行うことができます。
そして12:45になるとコマちゃんからの返答は一旦ストップし、12時間後の0:45までやりとりの送受信ができなくなります。ただし、過去のやり取りの内容を閲覧することは可能です。
詳細は Omamori docs に記載したので、こちらも合わせてご覧ください。
※現在は一度チャットルームから出てしまうと再度利用することができません。この仕様は近々修正する予定ですが、予めご了承ください。
使いやすさや心理支援の入り口が期待できる一方で、使う前に知っておいて欲しいこともあります。詳細は後編の記事で説明しますが、この記事でも注意点と簡単な説明を掲載しておきます
AI アシスタントはあなたとの会話を情報を処理してお返事をしています
AI アシスタントはあなたの発言を「情報」として受け止め、それについて一定の返事や問いかけをするように設定がされています。なので、相談者の感情を汲み取ったり、寄り添うというよりは、一定の返信をしてくれるところが特徴です。その点は人間とは違いがあるということを覚えておいてください。
出力内容の正確性は保証できません
AI アシスタントは ChatGPT を使って開発していますが、出力する内容が必ずしも正確とは限りません。「間違えることがある」ということをご理解いただいたうえで、利用は自己責任でお願いします。弊社においても間違いについては責任を追うことができませんが、誤った内容を適切にしていけるように取り組んでいこうと考えていますので、何か誤りなどがあった場合には情報を共有いただくなど、ご協力いただけると助かります。
やりとりのデータがOpenAI社に利用されることはありません
AI アシスタント上でなされたやりとりのデータはOpenAIの学習には使われません。OpenAIに送信されたやりとりのデータはOpenAIのポリシーに基づき、悪用防止と監査のために30日保持された後に削除されます。
AIアシスタントはあなたのタイミングで利用を中断してOKです
本機能は30分までの利用が可能ですが、もちろんAI アシスタントの利用をやりとりの途中で中断することも可能です。利用制限の12時間が経過すれば再度続きからやりとりをすることが可能です。AIが相手だとしても、悩みや辛い気持ちなどをやりとりしているとしんどくなる場合もあります。AI アシスタントの利用が過大な精神的負担を生じさせる場合は、AI アシスタントの利用を中止してください。中止したことによってあなたが不利益を被ることはありません。
AI アシスタントでは利用者に質問を多めにするように調整しています
AIアシスタントは、質問を通して自分の悩みや話したいことについて内省をしていくような設定になっています。なので、比較的質問が続くようなことが考えられます。しかし、質問をされて答えることには結構エネルギーを要するものです。質問が続くことにうっとうしさを感じたり、投げかけられた質問によってかえって傷ついてしまったりすることが考えられます。AI アシスタントからの質問が続くことで精神的な負担を感じるケースも想定されますので、念頭においていただき、しんどいときには利用を中断するようにしてください。また、質問がしんどいと感じたら「質問ばかりされると疲れてしまう」ということを話してみるのも、気持ちを伝える練習になるかもしれません。
今回ご紹介した AI アシスタントは、悩みを抱えている人の思考を整理したり、鬱屈とした気持ちを吐き出す場所として、あなたの生活をサポートできると確信しています。
また、AI アシスタントでは現在 GPT-3.5 Turbo を使用していますが、今後GPT-4 を導入することも検討しています。より使いやすく、皆さんの生活のサポートに有用なものに進化させていきたいと考えています。
もちろん AI アシスタントだけでなく、Omamori 全体のアップデートも進めていきます。今後も多くの方が心理支援に取り組みやすい社会を実現すべく、スタッフ一同邁進してまいります。