今後、流行第2波などにより研究縮小を余儀なくされる可能性があることを想定し、研究継続に必要な人員確保のために、通勤頻度を減らす工夫(テレワークや時差出勤など)や公共交通機関以外を用いた通勤を推奨することと合わせて、職場と自宅の間の距離やその通勤経路に伴うリスクを考慮した出勤体系を想定しておく必要があります。なおその際、職員間に業務負荷の格差や、出勤による感染リスクへの不安に伴うストレスが発生する場合もあるため、業務負荷の格差を是正する工夫や感染防止対策の徹底などを図り、またこうした計画を予め周知して理解を求めておくことが望まれます。
➤経団連 職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について
➤厚生労働省 職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について
感染流行期だけではなく感染終息後も、「新しい生活様式」の普及浸透や第2波への対策の必要性を想定した研究計画が必要になります。感染流行期は、例えば「卒業が近い学生や若手研究者の研究」「短期のスポンサーシップの研究」などを優先すること、また研究室の人数制限やフィジカルディスタンス確保を想定した研究室レイアウト等を考慮した運営計画を立てることなどが、「研究成果の創出」と「研究者・学生の健康や安全を両立」するために必要です。
なお、競争資金による研究については、文部科学省等での相談窓口が設置されています。
➤文部科学省 感染拡大の予防と研究活動の両立に向けたガイドライン
➤Stanford EH&S COVID-19 Research Restart Plan
新型コロナウイルス感染症対策に伴う外出自粛・仕事や研究活動の制限等により、一部の業務の延期や変更・中止が必要となる可能性が高まっています。予定の業務計画遂行の困難さに伴う焦りや段階的な出勤再開後の長時間作業等から、身体的・心理的負担が急激に高まることが想定されます。出勤を伴う勤務開始前から、段階的な出社に伴う業務計画について関係者で相談する機会を設け、再開後の長時間労働やメンタルヘルス不全のリスクを減らしましょう。
パンデミックのような非日常下では、人は短期的には不適応や過適応を起こす可能性が高まります。感染症に対する不安も人によって異なり、軽視することはできません。更に、職員それぞれの置かれた異なる背景(家庭・経済的状況等)や、職場内コミュニケーション質・量の変化が加わって、結果的に業務量格差が生じることが想定されます。指示と報告の齟齬や、人間関係の悪化も起こりえます。①ストレスが増え不安が増すことは自然なことです。それぞれの不安を認め合いましょう。②Web会議やチャットなども利用して、いつもより意識的にコミュニケーションの質や量を確保し、業務量格差を是正しましょう。③不調が生じたら、積極的に職場内で共有しましょう。また上司は積極的に1対1で部下の不調有無を確認しましょう。長引く不調(目安2週間以上)は、早期に相談機関や病院に繋がることが重要です。
<管理監督者>係員や若手職員と、段階的な出社を伴う勤務に切り替わる際の業務計画について話し合い、今後無理なスケジュールとならないよう相談する時間をあらかじめ確保してください。チームミーティングに加え、1対1ミーティング、業務担当毎のグループミーティング、など、意識して様々な単位でコミュニケーションを確保してください。 直接顔を合わせることが難しい時期も、Web会議等により定期的に実施してください。部下の不調に気づいたら、本人と1対1で話す時間を確保し、必要に応じて早めに相談窓口に繋いだり受診を勧めましょう。
<係員・若手職員>働き方の変化により大きなストレスを感じるのは自然なことです。上司に、働き方が変わる前後の業務計画について早い段階で相談しましょう。また、自分だけですぐにできるストレスマネジメントも取り入れてみましょう。もし心身不調が続いていると感じた際には、早めの休養に加え、周囲の人に相談することも重要です。合わせて、学内外の相談窓口を適宜利用しましょう。
➤こころの耳「新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)」
➤CDC Employees: How to Cope with Job Stress and Build Resilience During the COVID-19 Pandemic
感染症流行時に滞っていた業務などが再開となり、一気に業務が増加することが予想されます。過重労働によって脳・心臓疾患の発症のリスクが増加し、うつ病などの精神疾患を発症することもあります。過重労働対策として、まずは事業所全体として過重労働が起こりやすい状態であることを共有してください。また、他にも「不規則な勤務形態になりすぎないよう夜勤や交代勤務の形態に気を配る」「出張を行うような場合COVID-19対策でストレスがかかりやすいことが予想されるため、回数が増えすぎないようにする」「本人の勤務形態や勤務時間がわかるシステムを整え、必要に応じて産業医や産業保健スタッフにすぐに連携をとれるようにラインケアの重要性を管理職に認識させる」といったことを行ってください。脳・心臓疾患の発症リスクとして高血圧や糖尿病といった生活習慣病も挙げられます。生活習慣病がある場合には定期的な医療機関の受診を忘れないようにしてください。COVID-19の感染予防対策が長期にわたることで精神的ストレスとなることも予想されます。誰にでも感染のリスクはありますので、体調不良の時には無理して出勤するのではなく、休養を取るといった習慣を組織全体で作り、仮に感染した場合に責任を追及されるようなことがないように啓発を行ってください。
➤職場のあんぜんサイト 過重労働対策
➤こころの耳 過重労働対策
➤厚生労働省 脳心臓疾患労災認定基準 過労死と労災保険
➤厚生労働省 精神障害の労災認定
室内の人口密度を上げないために、出勤・登校のシフト管理しましょう。研究室管理者等の許可を得ずに、シフト外の時間帯に勝手に出勤・登校しないようにルールを守りましょう。カレンダーアプリなどで在室者のシフトをシェアしたり、室内入口のボードなどに在室者を記入して、室内の人数を把握することも有用です。
研究室のレイアウトを図面などで確認のうえ、その室内の面積に応じた在室人数を設定しましょう(例えば、培養室などの狭い室内では1名まで、25平方メートル以内の室内では多くても2人、など)。
3密回避のためには、在宅で作業をできる環境を用意することが有用です、例えばデータの分析などは在宅で実施することが望まれますが、その際はセキュリティ管理を適切に実施してください。
原則として2m以上離れて在室または実験できるように室内をレイアウトしましょう。床にマークをするなどの方法も有用です。安全管理等の理由により、やむをえず複数の人が同時に操作を行う必要がある研究施設や設備等においては、マスクやゴーグルを着用したり、アクリル 板・透明ビニールカーテン等による遮蔽等の措置を行いましょう。なお、状況に応じて、燃えにくい素材を使ったり、適切な消毒剤を用いて表面消毒を行いましょう。
また、関係者以外の建物内部への出入りは極力避ける必要があり、外部業者の出入りも制限を求められる場合があります。部局での運用を確認のうえ、必要に応じて、外部業者との接点をできるだけ減らすための発注・納品・検収方法を見直しましょう。
学外および学内のサプライチェーンが従来通りに稼働していない可能性があることから、実験の開始前には、必要な物品が揃っているかを確認しましょう。
実験に必要な機器や試薬等はもちろんですが、マスク等の顔を覆うガードや、作業後に消毒等が必要な場合(例:呼吸用保護具やレーザー用保護めがねを共用している場合など)の消毒液等、感染防御に必要な物品が準備ができているかを確認してください。これらの準備が整わない場合は、物品の準備または代替え手段が準備できるまでは、実験の実施を見送ってください。
出勤・登校者の制限で作業者が減ることは、作業の安全確保においてはデメリットになります。実験中はもちろんですが、機器や試薬管理の実験前安全確認、実験後の片付けにおける安全確保を従来以上に徹底しましょう。掲示物やチェックリストなどで作業者に啓発をすることも有用です。
また、単独で長時間の実験や共同施設を利用する場合、作業者の安全を確保する観点から、利用開始前・終了時の記録や、作業者への定期的な声かけ、万が一の際の連絡体制の整備などの安全対策を講じてください。
また、感染防止の観点からは、狭い室内での作業は一人作業が望ましいですが、一人では安全を確保できない実験研究の場合は、実験パートナーとは2m以上のフィジカルディスタンスを保って直接コミュニケーションを取るようにしましょう。それが困難な場合は実験を延期するか、止むを得ず接近する場合は双方でマスクを着用するなどの感染防止対策を徹底のうえ、参加者も最小限にするなどの対策をしてください。
➤文部科学省 感染拡大の予防と研究活動の両立に向けたガイドライン
➤東京大学 研究再開時のチェックリスト(PDF)
➤Stanford EH&S COVID-19 Research Restart Plan