生物資源の超低温保存技術は、細胞、組織、生殖細胞などを長期にわたり安定的に保存し、貴重な遺伝資源を将来へ継承するための基盤技術であり、農学、水産学、医学、生命科学、材料化学、物理化学を横断する重要な研究領域です。一方で、凍結・融解の過程で生じる氷晶形成、脱水、ガラス化、細胞膜やタンパク質への損傷など、保存の成否を左右する現象には未解明の課題が数多く残されています。本研究集会では、「ガラス」と「氷」をキーワードに、超低温保存を支える物理化学的研究から、実際の生物資源保存への応用まで、さまざまな視点から考える機会とします。
今年のテーマは、「ガラス」と「氷」 ― 超低温保存を解く ―
低毒性な双性イオン液体をはじめとする新しい凍結保護剤の研究に取り組む黒田浩介先生、中性子散乱などを用いて、生体物質や食品中の水・ガラス状態・ナノ氷晶を読み解く中川洋先生、魚類の生殖細胞・精子凍結保存と水産遺伝資源の利用に取り組む藤本貴史先生をお招きし、超低温保存に迫ります。化学が保存液を変え、物理計測が氷と水のふるまいを捉え、水産生物学が遺伝資源保存の現場と未来をつなぐ――それぞれの研究は、超低温保存技術の開発に関わる方にとって直接的な示唆を与えるだけでなく、低温環境が生命に及ぼす影響をどのように理解し、制御し得るのかという学術的な問いとしても大変興味深い内容です。
異なる研究分野から超低温保存を見つめることで、「なぜ保存できるのか」「どうすればより良く保存できるのか」を考え、今後の研究や技術開発につながる場となることを期待しています。超低温保存技術の開発に関わる研究者・技術者の皆さまはもちろん、その基礎となる物理化学的現象やガラス化、氷晶形成、遺伝資源保全に関心のある方々のご参加を心よりお待ちしております。
オーガナイザー 田中大介