研究テーマ
人間の生活と天然の水域生態系との調和を常に考えています
水族環境学という性質上、野外調査が多くなります（ただし、インドア派向けのテーマもあり）。2019～2023 年度に野外調査の対象とした水域は、田辺湾の養魚水域と非養魚水域（和歌山県白浜町、本学水産研究所）、田辺湾干潟（白浜町）、種苗生産現場（和歌山県すさみ、奄美大島）、クロマグロ養殖場水域・サンゴ海域（奄美大島）、都市部沿岸域（大阪湾）、滋賀県琵琶湖水系、高知県物部川などです。現場での海洋観測・調査を行うと同時に、現場から分析用の試料を持ち帰り、研究室で分析し解析するというのが基本的な実験研究の流れになります。また、天然環境で起こっている現象を詳細に把握するためには、それをシミュレーションする室内実験が必要になります。そのような場合には、魚類の飼育実験や微生物の培養実験を研究室で行います。フィールド調査とラボ実験のバランスがとれた研究ができるのも本研究室の特長で、アウトドア派、インドア派、ともに活躍しています。
① 魚類養殖場水域の物質循環および環境保全
養殖場⽔域の⽔柱・底泥の微⽣物（ウイルス、細菌、動・植物プランクトンなど）の群集構造と現場の様々な⽣理活性（光合成活性、呼吸活性、タンパク質分解活性など）を調べる。特に、⿂類のイケス養殖という⼈間の経済活動が、現場⽔域の物質循環過程に及ぼす影響を明らかにする。
フィールド：和歌山県白浜・白浜実験場、鹿児島県奄美大島・奄美実験場など
キーワード：⽔質分析・微⽣物機能・台⾵の功罪・薬剤耐性菌・乳酸菌など
② クロマグロ養殖と共存する周辺水域のサンゴの微生物学的特性
奄美⼤島のサンゴ礁のあるクロマグロ養殖場⽔域と⾮養殖場⽔域の⽔質・底質調査・サンゴ礁の群棲状況・⽔⽣⽣物の多様性・微⽣物⽣態学的解析を⾏う。養殖場⽔域に棲息するサンゴに共在する細菌の特性を調べることで、養殖場とサンゴが共存している謎について迫り、さらにはサンゴ礁保全に資する知見を得ることを目指す。
フィールド：鹿児島県奄美大島・奄美実験場など
キーワード：⽔質分析・有機物分解・微⽣物多様性機能・台⾵の功罪など
③ 天然干潟の水質浄化能
干潟の有する⽔質浄化能⼒を微生物学的に再評価し、沿岸域に干潟が存在することの重要性を再発見する。とくに、和歌山県⽩浜にある天然⼲潟を中⼼に調査し、養殖場に干潟が隣接していることにどのような意義があるのかを発信することを目指す。アオサの存在する⼲潟がもつ⽔質浄化機能を解明する。
フィールド：和歌山県白浜・白浜実験場など
キーワード：⽔質分析・有機物分解・アオサ・微⽣物多様性と機能・台⾵の功罪など
④ 水族飼育水および魚類腸内や体表の微生物生態学
仔稚⿂の陸上飼育⽔槽やエビの養殖池には、独⾃の飼育⽔⽣態系が形成されている（構成⽣物：仔稚⿂やエビ、動物プランクトン、微細藻類、細菌類、ウイルス）。養殖対象⽔族の減耗を低減するために、⽔質形成に関わる微⽣物群ならびに養殖対象⿂介類の消化管内や体表の細菌群を明らかにし、種苗⽣産のために有効な飼育⽔⽣態系の「⽔作り」を試みる。
フィールド：和歌山県すさみ・すさみ事業場、鹿児島県奄美大島・奄美実験場など
キーワード：微細藻類・腸内細菌・体表細菌・プロバイオティクス・病気予防・常在菌など
⑤ 天然水域における病原性微生物の生態と感染環
養殖アユで近年最も問題視されているのは、冷⽔病という細菌性の疾病である。この冷⽔病菌の天然⽔域における⽣態・感染伝播経路は全く不明であり、有効対策が⽴てられていない。そこで、本菌の⽣態を明らかにし、冷⽔病発⽣防除の⼀助とする。また、冷⽔病菌の研究と同様の戦略で海の養⿂場⽔域における⽩点⾍の⽣態解析や電気による制御の検討も⾏う。
フィールド：琵琶湖河川、和歌山県白浜・白浜実験場など
キーワード：冷⽔病・⽩点病・アユ・ニジマス・マダイ・病気予防など
⑥ 食料生産・水産分野等での有用微生物の探索
環境負荷ゼロの究極の⿂類養殖を微⽣物の⼒を利⽤して構築する。例えば、ふなずし発酵飯や養殖場底泥から分離した微⽣物を使って、病気の予防や処理に困る死⿂やアオサの速やかな分解を⽬指す。ふなずし乳酸菌の抗菌能⼒の評価と養殖⿂への投与実験も⾏う。
フィールド：研究テーマに応じて様々な場所
キーワード：ふなずし・乳酸菌・クラゲ・プラスチック・分解・抗菌・プロバイオティクス、腸内細菌、細菌新種探索など
研究の一コマ
奄美実験場にて
白鳳丸航海にて
養殖場水質調査中
実習の途中で
調査魂
実験のひと時
つかの間のひと時
でも、調査はしっかり