光計測装置等の光学デバイスにおいてこれまで光学系は精密性や安定性のために硬質な材料を用いることが一般的でしたが、私たちの研究室では透明で柔軟性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)をベースとした柔らかい光学系を提案しました。PDMS光学系の特徴として、光路・光軸の安定、他材料の混合・分散による光学機能の付与、加法製造が挙げられます。これらの特徴を活かしたプリンタブル光学デバイスの開発研究を行っています。
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本研究では、サツマイモの重要病害である基腐病を対象として、感染の有無や初期症状を非破壊かつ早期に検出するための光計測技術の開発に取り組んでいます。
サツマイモ基腐病は、外観だけでは感染初期の判別が難しく、生産・流通・貯蔵の各段階において迅速な診断技術が求められています。そこで本研究では、UV 蛍光イメージングや FTIR 分光法を用いて、感染個体と健全部の分光的な違いを捉える手法を検討しています。
近年の研究では、病原菌による感染そのものの検出に加え、植物が感染に応答して生成するスコポレチンなどの防御応答物質に着目しています。これらの自発蛍光や赤外吸収特性を指標とすることで、病徴が明確に現れる前の段階でも感染の兆候を捉えられる可能性があります。
本研究は、植物病害の診断を単なる外観判定に頼るのではなく、植物内部の生理応答を光学的に検出することを目指すものです。将来的には、農業現場や選果・貯蔵工程で利用可能な、高感度で実装性の高い病害検出技術への展開が期待されます。
本研究グループでは、透明で柔軟なシリコーン材料であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)を基盤とした、新しい光機能材料・光デバイスの開発に取り組んでいます。PDMSは高い透明性、柔軟性、加工性を備えており、フレキシブル光学素子や小型分光モジュール、発光デバイスなどへの応用が期待される材料です。
2022年度以降の研究では、PDMSを単なる透明樹脂として用いるのではなく、空孔、散乱体、色素、量子ドット、吸収材料などを組み込むことで、光を制御する機能性マトリクスとして活用することを目指しています。特に、PDMS中にナノ〜サブミクロンサイズの空孔を導入するナノフォーム化・ナノポーラス化技術により、低屈折率化や異方性散乱制御を実現する研究を進めています。これにより、フッ素系添加剤に依存しない低屈折率材料や、圧縮方向に応じて散乱特性が変化する柔軟な光学媒体の実現が期待されます。
また、PDMS系エラストマーを用いた再生型DFBレーザー、新規エマルジョンプロセスによるナノポーラス構造形成、カーボンブラックと透明PDMSを組み合わせた分光計測モジュール、量子ドット分散PDMSによる広帯域発光モジュールなど、材料設計から光学機能化、デバイス応用までを一貫して展開しています。さらに、CaF₂粒子とPDMSからなる複合材料の分光屈折率整合に関するモデル化研究も進めており、実験と理論の両面からPDMS系光機能材料の設計指針を明らかにしています。
これらの研究は、柔軟・透明・加工容易というPDMSの特長を生かしながら、可変散乱、低屈折率化、発光、分光計測、レーザー発振といった多様な光機能を付与するものです。将来的には、フレキシブルフォトニクス、ウェアラブル光デバイス、小型分光システム、表示・照明応用など、次世代の光エレクトロニクスデバイスへの展開が期待されます。
2026年度より三上先生が着任したことで、テラヘルツ波無線通信に関する研究も行っています。
本研究では、300 GHz帯テラヘルツ波を用いた高速・高セキュリティ無線通信の実現を目指し、周波数ホッピング方式に基づく物理層セキュリティ技術の研究開発を進めています。本研究は、総務省の持続可能な電波の有効利用のための基盤技術研究開発事業(FORWARD)の委託を受けて実施しているものです。
テラヘルツ波は広い周波数帯域を利用できるため、将来の超高速無線通信に有望です。一方で、高速通信の安全性や耐妨害性を高めるためには、通信信号をどの周波数で送るかを高速かつ柔軟に制御する技術が重要になります。本研究では、光技術を用いて300 GHz帯の無線キャリア周波数を高速に切り替えることで、周波数軸上で信号を秘匿し、盗聴や妨害に強いテラヘルツ無線通信の実現を目指しています。
これまでに、単一の波長可変レーザを用いた低コスト・低消費電力な周波数ホッピング構成、反射型トランスバーサルフィルタレーザを用いた約50 ns級の超高速ホッピング、さらに8チャネルの300 GHz帯周波数ホッピング通信システムを実証しました。特に、フォトミキシング技術と波長可変レーザを組み合わせることで、テラヘルツ波の発生周波数をナノ秒スケールで切り替え、実際の無線伝送リンクにおいて多チャネル周波数ホッピング通信が可能であることを示しています。
これらの成果は、テラヘルツ波通信を単なる高速伝送技術としてだけでなく、周波数制御に基づく高セキュリティ・高耐性無線通信基盤として発展させるものです。将来的には、Beyond 5G/6G時代の大容量無線通信、短距離高速リンク、秘匿性が求められる無線ネットワークなどへの応用が期待されます。