本専攻は韓国朝鮮という特定の地域を対象とし,その文化・社会を研究・教育する大学院の組織です。人文諸学と社会科学との連携・協働により営まれてきたコンパクトな研究・教育ユニットであるという点で,人文社会系研究科内だけでなく,学内の他の研究科等においても類例をみない先駆性と希少性を具えています。
本専攻には人文学および社会科学の多様なディシプリンの教員が所属しています。各教員は様々な機会に相互に刺戟を受け合いながら自身の研究を進めています。また学生も,授業や研究室の諸行事を通じて,自身とはディシプリンを異にする教員や学生と,日常的に接する機会を持っています。学生は指導教員の指導のもと自身のディシプリンを深化させると同時に,共通科目の受講やこうした日常的な雰囲気のなかで,他のディシプリンへの理解を深めることも可能となります。
本専攻の研究・教育の特色を列挙すれば,次のとおりです。
(1)本学人文社会系研究科であるからこそ実現可能であった研究・教育ユニットであること。
(2)韓国朝鮮(朝鮮半島と関連諸社会・文化)という比較的小規模でかつ言語・文化的な均質性の高い地域に焦点を絞ることによって,研究・教育活動における諸専門領域のより密接な連携・協働が可能となっていること。
(3)伝統と近代の双方を視野に入れた研究・教育活動をおこなっていること。
(4)フィールド研究を射程に入れた研究・教育活動をおこなっていること(現地踏査を含む現地での史料収集,フィールド言語学,社会学・文化人類学的フィールドワーク)。
本専攻は、人文社会系の諸学問を総合化して韓国朝鮮社会の伝統と現代を探究し、21世紀における新たな韓国朝鮮学を構築すべく開設された大学院専門課程です。
韓国朝鮮は長い歴史の上に近代社会を築き上げてきました。この韓国朝鮮の文化と社会をとらえるためには、伝統と現代に対する両面からの接近が必要です。歴史学、考古学、思想学、言語学、文化人類学、社会学などさまざまな学問分野で積み重ねられてきた知見と、洗練されてきた方法論を駆使し、それらを総合することで新鮮な展望を獲得することができます。
設立当初、本研究専攻は、韓国朝鮮歴史社会、韓国朝鮮言語思想、北東アジア文化交流の3つのコース・専門分野で編成されていました。各コース・専門分野は学複合的に編成され、すべて複数のディシプリンで構成され、さらに専攻全体が一体となって、学的専門性を前提としながらも、それを越えた学総合的な教育を行ってきました。なかでも、文献資料の読解力を鍛え上げるのとあわせて、韓国朝鮮の現地において資料調査や資料分析の方法を学びとることを重視してきました。厳密な学問的手続きに習熟するのと同時に、生き生きとした現地感をもった人材を養成すること、それが私たちの目標としてきたところです。
近年、朝鮮半島をめぐる情勢は、以前にもまして急激に変化しています。グローバル化と国民国家の境界を越えた文化交流が進展し、異質な諸集団・諸主体の共生が模索されるようになっています。それとともに、韓国朝鮮をフィールドとする諸研究領域では、研究の深化にともなって、社会・文化の複合性と比較・交流の観点の重要性が高まりつつあります。このような内外の状況をふまえて、本専攻では、従来の研究・教育の理念と実践をさらに発展させ、近隣諸地域との比較、ならびに地域を超えた文化交流をも視野に含めることを可能とするために、2008(平成20)年度より、新たに韓国朝鮮歴史文化と韓国朝鮮言語社会の2コース・2専門分野に改組しました。この改組の目的は、①通時的方法と共時的方法にそれぞれ重点を置いた隣接諸領域の有機的な連携を促進することによって、教育・研究の高度化をはかること、②その上で、比較・文化交流的な観点を取り入れた専攻共通のカリキュラムを整備し、学融合的な教育・研究体制を強化すること、③これによって、韓国朝鮮をフィールドとする地域研究のより一層の深化をはかることにあります。今後とも、専門領域において卓越した研究能力を持つだけでなく、広い視野をも有する研究者ならびに高度職業人の育成を図る所存です。
ここ韓国朝鮮文化研究専攻から世界に向かって、韓国朝鮮研究の新たな息吹を発信していきたいと思っています。