2025
2025年10月28日、大阪市の「あそびの精舎」應典院とDeep Care Labが開催している「むぬトーク」の第4弾「汚穢と死ー見たくない、けど避けられないものとどう向き合う?」に登壇しました。應典院は浄土宗のお寺で、芸術、哲学、教育、福祉などさまざまな事柄にふれて考える企画をもち場所を提供されています。Deep Care Labは、身近な人々、生物、地域の歴史等々のネットワークの中で生きることを考える研究・実践集団。双方、大変面白い活動をされています。
Deep Care Labの田島さんとやりとりする中で、日常のなかの死と汚穢について話がふくらみました。またフロアから、自然界に存在する秩序についてどう考えるか、「音の命が尽きる」とはどういうことか、等、大変興味深い質問をいただきました。
2025年10月27日、京都大学人文科学研究所・共同研究班「高度経済成長期の生活史」にて研究発表しました。1949年創刊の、ファンも数多いあの雑誌『暮しの手帖』について、研究者と「暮しの手帖」社の方々が協力しながら、記事の社会・経済背景を調査したり、雑誌がいまに伝えるメッセージを考えたりする研究班です。発表タイトルは「衣(食)住を手づくりする:『暮しの手帖』1世紀にみる住空間と生活用品へのはたらきかけ」。
同時期の他の雑誌とのちがい、衣服の手づくりの背後にあった繊維産業の状況、当時の住まいの状況などについて、多くの質問とコメント、情報提供をいただき、今後の研究の助けとなりました。
2025年9月13日(土)・14日(日)に日本オーラル・ヒストリー学会第23回大会が大阪大学にて開催されました。わたしは13日(土)の午前の会場で自由報告の司会を務めたほか、14日(日)のテーマセッション「まだ見ぬ「わたし」を語る--マルチモーダル人類学の試み」にコメンテーターとして参加しました。映像民族誌などの研究経験を、授業でどのように盛り込めるか?というテーマです。1分間の無音の映像を学生に撮ってもらったり、デジタル・ストーリーテリングを取り入れたり、コラージュを作ってもらったり、などなど。フロアからも、研究→教育という流れに加え、教育での経験から自身の研究への影響についてはどうだったか、など重要な質問が出て、刺激的でした。
9月3日(水)・4日(木)・5日(金)、東京大学総合文化研究科・教養学部で集中講義を行いました。調査の中での身体的・情動的経験をいかに社会的・歴史的事実として検討していくのか、またランドスケープ論などの「人間以上のもの」を視野に入れた関係論的な研究を行うにあたって、複数の認識論が混ざり合うことをどう考えていくのか、などをお話しました。受講者の方々にも思うところを話し合ってもらい、最後にスライド発表もしてもらいました。学生さんたちのフィールド経験や人類学以外のディシプリンからの視点なども聞けて、大変刺激的な経験でした。
8月30日(土)、神戸演劇鑑賞会の9月例会事前学習会にてお話させていただきました。9月の例会では北アイルランドを舞台にしたオーウェン・マカファーティ作「モジョ・ミキボー」が上演されるということで、背景の歴史や社会についての学習会でした。ベルファストで出会い、親友になる二人の男の子たちが、激化していく住民対立と紛争に巻き込まれていくあらすじのお芝居です。みなさん熱心に話を聞いてくださり、懇親会では演劇を愛する思いも聞くことができました。
7月25日(土)、福島県田村市都路町に拠点を置く、あぶくま山の暮らし研究所の企画運営会議に参加しました。「放射能汚染がもたらした被害に向き合いながら、豊かな山の資源を今から150年先の世代にまで手渡せるように、山の暮らしを紡いでいくこと」を目標とする団体で、地元住民の方、研究者の方、地域にかかわりをもつ方などがつどっています。
6月14日(土)、人文科学研究所共同研究班「記憶と身体の人文科学」の例会にて「歴史の具現化としてのランドスケープ—阿武隈山地の山林生態系・産業史・感覚記憶—」というタイトルで研究発表しました。
ランドスケープ概念の変遷を追うとともに、人の生の営み・場所の利用の蓄積・不平等な権力関係などの歴史が具現化したものとしてランドスケープがあるという考え方を、阿武隈山地を事例にしながら議論しました。
(c) 2025. 酒井朋子