見えないものが見えると、世界が変わる
― バイオイメージングで挑む生命の謎と創薬―
小野正博
京都大学大学院薬学研究科・教授
中高生の皆さんへ
「がんはどこにある?」「認知症は防げる?」その答えを、最新のカメラで体の中を『見て』、見つけた病気をそのまま『治す』。SF映画のような「未来の薬」の正体は、実は微弱な「放射線」です。皆さんが今、教科書で学んでいる科学の知識が、どのように世界を救う最新医療に役立つのか?本講演では、最先端の薬の世界を分かりやすく解説します。科学の力で未来を切り拓く面白さを、ぜひ実感してください!
略歴:
京都大学薬学部卒業、同大学院薬学研究科博士後期課程修了。博士(薬学)。長崎大学薬学部助手、米国ペンシルバニア大学博士研究員、京都大学大学院薬学研究科准教授を経て、2017年10月より現職。30年以上にわたり一貫してラジオセラノスティクス(放射性薬剤による診断と治療)の研究に従事。アルツハイマー病などの神経変性疾患や、がんを対象とした分子イメージングプローブおよび治療用放射性薬剤の開発研究に注力している。これまでに約300報の英文論文や30件以上の特許として研究成果を発表。内閣府「最先端次世代研究開発プログラム」、AMED「次世代がん医療加速化研究事業」「脳神経科学統合プログラム」などの研究代表者を歴任。日本核医学会研究奨励賞最優秀賞、日本薬学会奨励賞、臨床薬理研究振興財団研究大賞などを受賞。
青木伊知男
量子科学技術研究開発機構・上級研究員
中高生の皆さんへ
宇宙や深海など、人類には未知の領域が沢山残っています。私たちの「体」もまた謎が多いフロンティアで、医学・生物学の研究が進んでも、今なお謎だらけの小宇宙です。宇宙を冒険する探査船のように、体の中を画像にする装置や道具を「プローブ」と言います。日本バイオイメージング学会では、様々なプローブを開発し、それを使って体の中を探検する研究者の集まりです。それは病気の治療や診断だけでなく、生物医学の研究を通じて「病気にならないようにする」という人類の究極の夢に向かって進んでいます。
略歴:
福岡県出身。1999年にMRI造影剤による脳研究で博士号を取得後、2000年から米国国立衛生研究所(NIH, NINDS)にて超高磁場MRIと機能性造影剤による新たな神経科学研究法を開拓。帰国後、2006年より放射線医学総合研究所チームリーダー、2016年に統合により量子科学技術研究開発機構(QST)となり2023年から現職。主な研究テーマはMRIによる病態解析と新技術の開発で「MRIの量子状態から、体の全ての細胞が分かる」という夢の実現に向かって研究開発を進めている。特にナノ粒子を用いた薬剤送達技術(DDS)をMRIと統合する「ナノMRI」、治療と診断を一体化した「セラノスティクス」等の研究分野を開拓した。第15回日本DDS学会水島賞、国際磁気共鳴医学会ISMRM Senior Fellowを授与。国際学術論文 217報、特許登録 21件、受賞 13件、招待講演 102件。日本分子イメージング学会・理事長、日本磁気共鳴医学会・監事。日本DDS学会・評議員、Springer Nature社Molecular Imaging and Biology誌・学術エディター他。https://www.iaoki.jp
山下英里華
医薬基盤・健康・栄養研究所・研究員、京都大学大学院薬学研究科・助教
中高生の皆さんへ
皆さんが見たことのある細胞の働きや生命現象の図やイラストは本当に体の中で起こっていることを表しているでしょうか。"Seeing is believing(百聞は一見にしかず)"。イメージング技術の発展によって、これまで見えなかった生命現象を実際に観察できるようになり、新たな発見が次々と生まれています。それでも、生物学の教科書は10年で半分近くが書き換えられると言われるほど、生命にはまだ多くの謎が残されています。最先端のイメージング技術を通して、普段は見ることのできない生体内の世界を一緒に覗いてみましょう。
略歴:
大阪大学理学部卒業、大阪大学大学院生命機能研究科にて修士課程および博士後期課程を修了。大阪大学大学院医学系研究科、再生誘導医学協働研究所、アルバート・アインシュタイン医科大学にて博士研究員を務めた後、2026年4月より医薬基盤・健康・栄養研究所のプロジェクト研究員、同年5月より京都大学大学院薬学研究科にて助教(クロスアポイントメント)に就任。主な研究テーマは多光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング技術を基盤とした、骨髄における骨代謝・免疫反応の実態とその生物学的意義の解明。骨髄という複雑な微小環境の中で細胞がどのように動態を変化させ、周囲の細胞と相互作用しながら機能を発揮しているのかを明らかにする研究に取り組み、近年は特に破骨細胞に着目した研究を展開している。
柳川正降
京都大学大学院理学研究科・教授
中高生の皆さんへ
薬を飲むと、なぜ体に「効く」のでしょうか。その鍵を握るのが、細胞の表面にある「受容体」というタンパク質です。薬の分子が受容体に出会い、結合し、信号を送る。その一連のドラマを、私たちは1分子ずつ光らせて直接観察しています。驚くことに、同じ種類の受容体でもひとつひとつふるまいが違い「個性」があります。分子の世界のリアルな姿を、最先端の顕微鏡で一緒に覗いてみませんか。
略歴:
京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科、修士課程および博士後期課程を修了。2011年 京都大学博士(理学)。同研究室にて2年間の博士研究員を経て、2013年4月より理化学研究所において基礎科学特別研究員・研究員・さきがけ専任研究員として細胞内1分子イメージングを用いた膜受容体の研究を行う。2023年4月より東北大学大学院薬学研究科准教授、2025年4月より京都大学大学院薬学研究科准教授を経て、2026年7月より京都大学大学院理学研究科の教授に就任。2022年 理研桜舞賞(産学連携賞)受賞。『生物物理』誌、編集委員(2025)・副編集委員長(2026-現在)。ATFセイコーインスツル新世代研究財団, 第10期・第11期 バイオ単分子研究会委員(2021年-現在)を歴任。