研究テーマ
集積化マルチモーダルセンサの創出と応用
近年の人工知能の発達には目を瞠るものがあります.ただし有益な情報を得るためには,人工知能の学習用のデータが重要となります.データ収集で役に立つのがセンサです.光,音や加速度などは既に多くのセンサで取得されています.そのため例えば,人工知能による画像認識は非常に盛んにおこなわれています.一方で,雰囲気中のガス濃度を取得するガスセンサはガス漏れ検知などには適用されていますが,人工知能の学習に用いるにはまだデータが不足しています.もし,身の回りの様々なガス情報をセンサで取得し,人工知能による判断と組み合わせることができれば様々な危険の予兆を早期に検出することやヘルスケアなどに役立つと期待されています.
田中研究室ではナノスケールの薄膜や界面を利用することで,化学物質の吸着による電気特性の変化からガスを検出するセンサの研究を行っています.二次元の原子層材料であるグラフェンや触媒金属のナノシート,イオン液体を用いたセンサで1 ppm( 1/10,000 % )オーダーの微量なガス検出に成功しています.さらに,電気情報工学科の強みを活かして,作製したセンサを回路上で動作させたり,センサ出力を機械学習で処理する応用研究も進めています.
ナノスケールデバイス・材料の原子論的解析
ニュースなどで電子デバイスの技術ノードが~nm(ナノメートル)という表現をされているのを耳にすることがあるかもしれません.必ずしも技術ノードのサイズと実デバイスのサイズが一致するわけではないですが,最先端の電子デバイスでは10 nm前後のサイズでの電気特性を理解することが重要です.10 nmはシリコンの結晶格子20個分程度という原子一つ一つを意識しなければならないくらい微小なサイズです.そのようなサイズでは実験的な特性評価が難しくなることもあり,原子スケールでの計算(=原子論的解析)による特性の理解が必要とされています.
そこで私たちは,第一原理計算,強結合近似や分子動力学計算を組み合わせてナノスケールデバイスの特性の理解を目指しています.例えば,次世代配線として期待されるルテニウムの表面状態による電気抵抗変化の予測,プラチナナノシートガスセンサのセンサ応答メカニズムの解析や将来のトランジスタ応用に向けた遷移金属ダイカルコゲナイド・シリコンナノワイヤの移動度評価を行っています.