井上研究室への配属を考えている物情3年生向けに研究室の情報をまとめます。研究室での取り組みを知って頂けるように論文成果も追記しました(11/19追記)。
1) 週1回井上と個別ミーティング、2) 月1回メンバー全員への進捗報告(研究ゼミ)、3) 不定期で共同研究者との合同ミーティングをおこないます。1では、軽くざっくばらんなアイデア出しから、定理の証明のような重たい議論までをおこないます。研究の過程である、将来を想像し、課題を抽出し、具体化し、解決していく訓練になるでしょう。2では、1で得られた知見や研究成果の欠片を集めて、文章としてまとめ、他のメンバーに説明してもらいます。研究に直接関わらない相手を説明の対象とすることで、研究成果に客観性をもたせつつ、抽象的なアイデアを具体的かつ正しく説明する訓練にもなるでしょう。3では、分野の専門家へ我々の成果を紹介しつつコメントを頂く機会になります。自分のオリジナリティを大事にしつつ、専門家の意見を適切に取り入れうことで本当に面白い研究を目指します。
研究室を選ぶときには,所属学生がどのような論文を書いているのか,軽くでも読んでみるとよいでしょう。具体的に研究室で自身が何をするかイメージできるようになります。こちらに井上研で直近2年で発表した論文のうち,無料公開されているものをまとめています(実際の発表は3倍ほどあります)。最先端の内容はプレプリントへ,準備的な内容は国内会議予稿集をそれぞれ御覧ください。
プレプリント
Y. Miyoshi, M. Inoue, and Y. Fujimoto, Language-aided state estimation, arXiv, 2025 (link)
Y. Miyaoka and M. Inoue, Control barrier function for aligning large language models, arXiv, 2025 (link)
Y. Miyaoka, M. Inoue, and J. M. Maestre, Chat-driven reconfiguration of model predictive control, arXiv, 2025 (link)
S. Ejaz and M. Inoue, Trust-aware safe control for autonomous navigation: Estimation of system-to-human trust for trust-adaptive control barrier functions, IEEE TCST, 2025 (link, IEEE TCST)
国内会議予稿集(一部)
宮岡佑弥,井上正樹,既存の評価モデルを転用したLLMアライメントフィルタ設計,第39回人工知能学会全国大会,大阪,5月,2025(リンク)
宝珠山理歩,井上正樹,EVユーザの行動変容モデルを含むEMSの構築,第39回人工知能学会全国大会,大阪,5月,2025(リンク)
石田廉,井上正樹,石原新士,小原大輝,オペレータのUpskillingのための適応型安全化アシスト,第69回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'25),兵庫,5月,2025(リンク)
福田一允,井上正樹,ギグワーカの意思決定モデルとワークマネジメントへの応用,第69回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'25),兵庫,5月,2025 (リンク)
三好優輝,宮岡佑弥,井上正樹,テキスト埋め込みからのテキスト復元における予測制御の援用の効果検証,言語処理学会第31回年次大会(NLP’25),長崎,3月,2025(リンク)
宮岡佑弥,井上正樹,アドオン型のLLMアライメント,言語処理学会第31回年次大会(NLP'25),長崎,3月,2025(リンク)
本田佳覚,井上正樹,大規模言語モデルを用いた人間の心理状態の定量化とモデリング,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク)
福田一允,井上正樹,相互に影響し合うギグワーカ集団に対するワークマネジメントシステム設計,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク)
宝珠山理歩,井上正樹,稲垣伸吉,EVユーザの行動変容モデルに基づくEMSの構築,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク)
宮岡佑弥,井上正樹,浦田賢吾,原田薫明,ChatIaaS: 自然言語に基づくインターフェース設計による情報インフラサービスの運用効率化,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク,NTTネットワークサービスシステム研究所との共同研究)
小幡遼冴,井上正樹,杉浦裕太,ビジュアルナッジの元でのドライバーの運転行動のモデリング,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(優秀発表賞,リンク)
石田廉,井上正樹,宮岡佑弥,最大回避入力のオンライン推定に基づくドライバーの衝突回避支援,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク)
須賀悠仁,井上正樹,小野木康弘,健康・疾病状態のエネルギー地形解析と最適輸送理論を利用した介入,第67回自動制御連合講演会,兵庫,11月,2024(リンク)
宮岡佑弥,井上正樹,虎谷大地,石井南,chat-AMAN: 管制官との双方向コミュニケーションで実現する協働型の航空管制支援システムの構築,言語処理学会第30回年次大会(NLP2024),兵庫,3月,2024(リンク)
研究室のゼミの様子です。月に1回のペースで研究の進捗状況を資料にまとめて,他の学生にわかりやすいように説明します。自分のやったことを論理的にまとめて専門外の方にも分かりやすく伝える練習を狙いとしています。
普段はTeXでレポート形式にまとめてそれをもとに進捗報告をおこないます。学会発表など(レポートではなく)スライドベースでの発表が一般には多いのですが,訓練のためにレポート形式にしています。レポートで論理的な文章が書ければ発表スライドも作れるようになることでしょう。逆は一般には成り立ちません。
システム制御や機械学習の理論を基礎として様々な応用先を想定しながらテーマ設定しています。どのテーマでも制御,数学,プログラミング系の授業を面白いと感じた学生さんと相性がいいと思います。
研究テーマ候補を挙げていきます。基本的には皆さんの興味にあわせて個別に研究テーマは決めていきますので,あくまでも候補の一部でしかありません。雰囲気だけでも興味があればお問い合わせ下さい。
大規模言語モデルを用いた人の選好の推定と制御系設計への応用
インタラクティブな航空交通管理システムへの応用
電動車いすのアシスト制御への応用と実機実験
移動ロボットの経路計画への応用と実機実験
次世代の都市計画への応用,アンケート調査に代わる住民の選好推定と合意形成
ビジュアルナッジによる個人の行動誘導
ペースメーカーライトを用いたドライバーの加減速行動誘導
障害物への衝突リスクの可視化によるドライバーの回避行動誘導
ペースメーカーライトを用いた歩行者
インセンティブ・ナッジによる集団の行動誘導
ギグワークシステムのモデル化と設計
ナッジのもとでの集団の行動変容モデリングと誘導制御
Human-in-the-loop制御/Human-in-the-loop機械学習の理論
符号勾配法を含む最適化アルゴリズムの開発と解析
人からシステムへの信頼度を取り入れた制御理論の開発
インフラシステムのための制御理論
航空交通管理システムのための航空機モデリングと管理システム設計
EVの使用傾向のモデリングと最適エネルギー管理システム設計
水道ネットワークの階層化制御
疾病の超早期治療のための制御理論開発と実医療データでの有用性検証
学生部屋の様子です。普段はこちらでワイワイ議論しながら研究を行います。
研究活動の中心は手計算での数式展開とパソコンでのシミュレーションとなるため,大型の物理的な実験装置はありません。ただ,希望する学生には,電動車いすの制御やVR/ARなどの物理実験も可能です。また,GPUワークステーションを自由に利用できる環境は整備済みで,たとえば,大規模言語モデルを用いた人の選好推定など情報系の実験は十分に可能です。
以下によくある質問を掲載しました.こちらも参考にしてください.
Q1:コアタイムはありますか?
A1:ありません.ただし,グループミーティング・輪講・研究ゼミへの参加は必須です.それぞれ週1回行われます.また,特に配属直後から4年生の夏ぐらいまで(研究経験が足りない状態では)なるべく研究室に滞在して,教員&先輩&同期とコミュニケーションをとることを推奨しています.コミュニケーションのなかで,簡単なアイデア出しから研究テーマ設定まで3年生までとは全く違う経験をできることでしょう.それが研究室の一番の価値となります.
Q2:実験はしますか?
A2:する学生もいます.「農業のレコメンド制御」「逆強化学習による運転行動のモデリング」「可視化によるドライバーへのナッジ制御」なども学生の興味からはじまった実験系テーマです.その他,自然言語処理など人の理解のための技術を制御に活用する情報系の実験もおこないます.
Q3:プログラミングスキルは必須ですか?
A3:必須ではありませんが,できるに越したことはありません.研究室配属後は,Python(一部はMATLAB)でのプログラミングを行います.現在プログラミングが苦手であっても,配属後のスキルアップは十分に可能です.最近流行りの大規模言語モデルなどを触ってみたい方なども大歓迎です.
Q4:学会発表はしますか?
A4:めちゃします.本人の希望や研究の進捗状況によりますが,学会発表ができる機会は十分にあります.例えば,2023年度はM2はハワイ,ハワイ,サンディエゴ,ヒューストンと全員国際会議発表しています.他にも5月に京都,10月に仙台,11月に北九州など国内会議へも多数参加しています.
Q5:飲み会はありますか?
A5:あります.また,飲み会以外にもランチ会,お茶会,合宿など様々なイベントが行われています.詳しくは,「イベント」の欄をご確認ください.教員発の飲み会も多くあります.イベント企画を積極的に行ってくれる方は大歓迎です.
Q6:バイトはできますか?
A6:可能です.ただし,本当に将来まで見据えた上で,そのアルバイトに価値があるのかよく考えておこなってください.研究室で学ぶ時間は本当に将来何十年にも活きてくるものと信じています.それを削って何のために(誰のために)アルバイトをしているのか考えて決めてほしいと思います.