慶應×ライフサイエンス
第2回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2018年9月13日(木)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2018年9月13日(木)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
地球上のあらゆる環境には微生物が生息しているが、われわれの体表も例外ではない。特に“内なる外”とも称される腸内には、無数の細菌集団が生息しており(これを腸内細菌叢と呼ぶ)、宿主の腸管細胞群と密接に相互作用することで、複雑な腸内生態系を形成している。腸内細菌叢はヒトの健康維持に重要であるが、そのバランスが崩れると様々な疾患に繋がることから、腸内細菌叢は異種生物で構成される「もう一つの臓器」と捉えることもできる。われわれはこれまでに、腸内細菌叢の遺伝子や代謝物質に着目したメタボロゲノミクスアプローチにより、腸内細菌叢由来の代謝物質が、腸管バリア機能を高めて腸管感染症を予防すること(Nature 2011)、制御性T細胞の分化誘導を促進して大腸炎を抑制すること(Nature 2013)、慢性腎臓病の悪化抑制に寄与すること(JASN 2015, Kidney Int. 2017)等を明らかにしてきた。本講演では、腸内環境に基づく個別化医療・ヘルスケアをキーワードに、個々人の腸内細菌叢の適切な制御による新たな健康維持、疾患予防・治療基盤技術の創出に向けたわれわれの取り組みについて紹介する。