慶應×ライフサイエンス
第2回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2018年9月13日(木)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2018年9月13日(木)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
道具使用や複雑なコミュニケーションの能力は、従来、ヒトと類縁であるチンパンジーなどの大型類人猿だけがもつというのが定説であった.近年の動物行動や脳に関する様々な研究は、この定説がもはや成立しないことを示している.本講演では鳥類カラスを取り上げる.哺乳類と3億年前に分岐し独自の進化を経た鳥類の大脳には「皮質(=層構造)」がない.しかし、発生学的に哺乳類の大脳皮質と相同である独自構造の「外套pallium」を発達させている.カラスの外套は鳥類の中でも特に大きい.また、カラスは、ライバル個体の知識状態の推論や役割投影、道具作成など、大型類人猿をも凌ぐ行動を示す.これらのことは,複雑な行動が,脳構造や身体形態の差異を超え独立に進化することの証左ともいえる.本講演では、カラスの道具作成・使用について、進化、形態、行動の視点から解説する.系統発生学的に霊長類と遥かに離れた鳥類カラスに進化した道具使用を通じて、改めて私たちヒトの生物学的特徴とその起源を考える機会を提供したい.