開会前の最終ミーティング。静かに参加者の皆様が来られるのをお待ちしています。
受付はエレベーターホール、メイン会場は2階、サブ会場は6階という配置なので、机の動かし方や、カメラの位置、参加者の皆様にご協力いただくことなどを確認しました。
JNK4 情報ネットワーク教育活用研究協議会、ICT支援員支援の会の説明と、開会宣言、永野和男先生の経歴のご紹介をしています。
ICT支援員という仕事ができてきた経緯や、必要な内容などについて永野先生からご説明がありました。
新しい学習指導要領で指摘されている「情報活用能力の育成」のため学習内容の変革を伴っている、そのことをはっきりわかっているICT支援員となってほしいというお話がありました。
外部人材としてのICT支援員の考え方は2000年ごろからありましたが、大きく実現に動いたのは東日本大震災がきっかけということです。永野先生が認定試験を作ってきちんと能力を規定し、皆様ご存じの通り、2013年から試験は開始されました。
また、ICT支援員認定試験合格者全員にお聞きしたアンケートの結果も踏まえて、現状についてのお話もありました。 4年前(2020年)のアンケートは こちら からご確認いただけます。今後アンケート結果もさらに集計を進めてより深い分析を進めるご予定とのこと。結果は、このサイトでお知らせします。
「ICT支援員の未来」はどうなるか。永野先生は、ICT支援員は役割は変わっていくが、いつまでも必要になる、とお考えを話されました。
学習の仕方や学校の役割が変わること、図書館はメディアセンターになるだろうということを踏まえてお話しされました。例えば、現在の司書は、必要な情報を「本」という形で探して提供してくれますが、それが「メディア」になるだろうとのこと。そこに、メディアを利用した学習の支援者としての支援員が常駐することになるだろう。
現状、支援員は目の前にあり、先生が自身ではわからないこと、できないことを支援しているかもしれないけれど、多くの問題は、AIツールやchatGPT等に聞けばすぐできるようになるから、その役割は収束していく。代わって、学習支援という立場で子どもたちの自主学習を支援することが求められる。教員だけでは実現が難しいので、ICTの特性と学習活用を熟知した支援員が必要である。そういう形で続いていくだろう、というお話でした。
基調講演のアーカイブは こちら です。
※動画は永野先生とハイパーブレインが共同開発したストリーミングシステムにて掲載されています。基調講演の資料は こちら です。
先生に1分間相談を持ち掛け、フィードバックを受けるという体験でした。「1分間では時間が短い」というお声がありましたが、休み時間に忙しい先生とお話しの時間をとってもらうには1分でも長いくらいです。
「先生、1分お話しよろしいですか」は聞いていただけると思いますが、「先生、3分お話しよろしいですか」は断られることもあると思います。
また、最初に分数を言わず、手短に、と言っているのに延々しゃべっていては、次から先生が足を止めてくれることが減るでしょう。
校長先生に話を聞いてもらう機会はそうありません。ICT支援員は、学校で先生とお話しする職業ですが、事前に「先生とお話しする」研修が実施されているのをほとんど見たことがありません。
先生とお話しする力はほぼ経験値だよりです。コミュニケーション力のあるICT支援員が求められますが、その求めるコミュニケーションとはどのようなものなのか、ということが提示されないまま、ぶっつけ本番で先生とお話しすることになるICT支援員がほとんどです。
これを少しでも解消したく、このワークショップを企画しました。まさに、実践力を育成するワークショップです。
オンラインでも同様に、一人1分間で話してもらいました。課題は事前にホームページに書いてありましたが、初めて読んだという方もいらっしゃって、まさしく「忙しい先生に対してどう話しかけるかとっさの力が問われる」状況となりました。
新型コロナウイルスの蔓延などで、ICT支援員の仕様書にも「必要に応じてリモートでの支援の対応をする」というような文言が増えてきました。
リモートでほぼ初対面の先生とお話しする可能性もあります。それはとても難しいと考えられます。このワークショップでその経験が少しでもあれば助けになると考えます。
ICT支援員の管理者として、今の課題は何か?それはICT支援員に問題があるのか?多くの管理者が勘違いしているICT支援員管理側の心得についてワークをしながら考えていただきました。
ICT支援員を「管理」することだけがICT支援員事業者の仕事ではありません。野生のICT支援員は存在しないのですから、自分の担当自治体で求められる「ICT支援員」とは何か、改めてかんがえ、この仕事に応募してくれた大切な人材を、ICT支援員として「育成」し、長くモチベーション高く働いてもらうために重要なポイントを意識していただければ幸いです。
このワークショップの重要なポイントは自分が課題と感じていることを客観視できるかです。
小学校でよく使うシンキングツールを使って、学校でこんなことをしているよという体験とともに、自分の課題を文字に書いてもらいました。ここでは、自社の課題は他社に見せられないこともあるのと、人に見られずに書くことで心理的安全面から、あえて今回は紙のワークシート(※スライド内に記載)を使いました。
シンキングツールに書いて言語化
ICT支援員に対して「あの人はどうしたら〜をやってくれるのか」とコントロールしようと四苦八苦している管理者が多く見られます。しかし、人をマネジメントすることは、誰かに叱って貰えば、研修をたくさん受けさせれば、できるようになるわけではありません。その人たち一人一人を「承認し続ける」ことで初めてできることです。
マネージャーとしての視点
スライドにはICT支援員管理者の心得をまとめてあります。
向上心とモチベーションを保てる仕事として、このICT支援という仕事を皆さんと一緒に確立していきたいと願います。
そのためには、ICT支援員さんを一人ぼっちにしない管理者の働きが何より重要です。
管理職8つの心得
3つのプロンプトの体験を通して、ChatGPTの特徴や留意点などを理解してもらう内容で実施しました。今後、教員研修や、教育利用(中高生等が学習活動に利用する)の広がりを想定した場合に、今回のワークの内容を参考にしてもらえると幸いです。
1_プロンプトの書き方
ChatGPTに入力するプロンプトの書き方として「マークダウン記法」を用いた例を体験していただきました。
「生成させたいテーマ」の後に
ーーー
#出力
-箇条書き
-3つ
-100文字以内
ーーー
と書き足す事で、指定した出力条件に沿って文章を生成することを体験してもらいました。
2_ChatGPT「しりとり」
次に、ChatGPTと「しりとり」を行なってもらいました。
「しりとり」を知っているかのように振る舞うChatGPTですが、「ん」から始まる言葉を生成することなどから、「ルールを理解していない(判断していない)」「ハルシネーションを起こす」という事を体験。ChatGPTに「しりとり」を適用させる具体的な条件を検討し、プロンプトを構想してもらいました。
3_ファクトチェック
最後に「ファクトチェック」にチャレンジしてもらいました。
「東京都の人口を教えて」という入力に対して、ChatGPTが出力した回答では不十分な事が多く、出力ソースを提示できる「perplexity.ai/ 」
を用いて参照情報を確認。サイト運営元やドメインなどから情報の鮮度や、公的で最新の統計情報を見つけていくプロセスを体験してもらいました。
事前にアンケートをとり、普段どんな支援をしているか自由に書いてもらいました。
出現頻度の多い重要なキーワードを可視化しました。
文章中に出現する単語の出現パターンが似たものを線で結んだ図です。出現数が多い語ほど大きく、また共起の程度が強いほど太い線で描画されます。1文の中に一緒に出てくるものが近くに表示されています。
現地参加メンバーと書き出された付せんを確認し、全国のICT支援員の相談を受ける立場から、コミュニケーションの基本や行動のヒントを解説いただいた(講師:五十嵐晶子)
オンライン参加メンバーの付せんを確認しながら、学校管理職の立場から、不安解消につながる行動のポイントをわかりやすく解説いただいた。(講師:中川斉史)
ICT支援員の業務での肯定感と不安感は、人との関わりに大きく影響されることが皆さんの付せんから見取ることができました。
肯定感を感じるのは、学校や先生に変化を感じた時であり、自分の働きが役に立っていることがモチベーションになっていることも強く感じました。
肯定感を持てたICT支援員が、どのようにして学校と良好な関係性を作れたのかを聞くことにより、不安感を抱えるICT支援員は、改善につながる小さな行動のヒントを得たのではないでしょうか。ICT支援員同士の対話の時間を持てたことも、この会に参加したすべての人の満足感に繋がったと思いました。
また、具体的な業務範囲や勤務スケジュールが教育委員会や企業から、明確に学校現場に伝っていないことによるミスマッチが明らかになりました。一方で、ICT支援員へ、担当地域のICT環境情報・セキュリティポリシーなど運用上の情報共有が継続的に行われていないという課題も見受けられました。ICT支援員が学校の職員として確立する上で、学校とICT支援員の相互理解のために、ICT支援員を孤独にしない、ICT支援員と学校の間に立つコーディネーターの重要性を改めて感じる内容でした。明確になった課題を今後どのように改善していくのかの具体案の言語化やその実現に取り組んでいきたいと感じる会になりました。
対面では、2グループに分かれて「ICT支援員管理業務の棚卸」とはどういうことかを話し合いました。
実際にICT支援員の管理業務を行なっている方を含めて、多様な視点から議論が展開されました。
主な観点として「ルーティン業務」「イレギュラー業務」「時期限定の業務」という関連から整理をしたり、その中で「不要な業務・アウトソースできそうな業務」という視点も含めて、持続可能な管理業務のあり方を模索しました。
オンラインも、2グループに分かれてICT支援員管理業務を棚卸しました。
オンラインゆえの難しさもありましたが、ふせんに業務を書いて提供してくれた方々からは思いや意見を聞くことができました。
まとめるところまでたどり着けませんでしたが、書いてもらった内容をもとに、対面組の田中さん、オンライン組の石野先生、大江とで話し合って下記のように整理しました。ご確認ください。
管理者業務についてファシリテーターで話し合いを進めた結果、「業務管理」「雇用・労務管理」「人材育成」「教育委員会等組織への支援」という観点に整理されました。それらをまとめた図(マインドマップ)は こちら になります。
中心トピックにある「ICT支援員管理者としての理念」は、「より良い教育の情報化の推進(情報教育、校務の情報化、教育情報セキュリティ、教育DX等)」を考えました。ICT支援員は、わざわざ人が、その場に行って人を支援する仕事であるということを理解しておくことが大前提です。歯車でもネジでもSiriでもAlexaでもchatGPTでもありません。人には感情があり、尊重されないところで成果を発揮することはありません。
業務管理や雇用・労務管理は通常どの組織でも実施される業務です。ICT支援員という職業の特徴をとらえたうえでの「人材育成」「教育委員会等組織への支援」という観点はICT支援員管理者に必要な視点だと考えます。
特に、教育委員会等組織への支援については、何はさておき情報共有が最重要である、ということを改めて認識しました。ICT支援員管理者も、教育委員会の皆様も、ICT支援員が本来の力を発揮するために、どのような情報が必要かご確認ください。
また、人材育成の観点からは、研修のフレームや手法等についてのご提案を盛り込みました。こうしろ、というのではなく、あくまで考えるためのたたき台です。ICT支援員管理者が、よりよい管理者になれるように情報共有を実施していきたいと考えています。
永野先生から、まとめの言葉がありました。
ワークショップ主体のこの大会は、日本の今後の教育が目指していくべき実践の場であったというお話がありました。参加者の皆様が今後も学校でご支援を続けていく時に、今日の体験が少しでも活きればいいと思います。
まとめの言葉のアーカイブは こちら
※動画は永野先生とハイパーブレインが共同開発したストリーミングシステムにて掲載されています。対面もオンラインも、事前に許諾いただいていた通り、集合写真を撮りました。
ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。