シンポジウム
児童生徒が熱中する国語科授業の創造-国語科授業観について考える-
2024.5.25(Sat)/15:10-17:40
児童生徒が熱中する国語科授業の創造-国語科授業観について考える-
2024.5.25(Sat)/15:10-17:40
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趣 旨 と 概 要
現在,「令和の日本型学校教育」を実現するために,教師には高い資質能力を身に付けることが求められている。例えば,従来の生徒指導・学習指導に加えて,特別支援教育の視点やICT活用といった,多様化・高度情報化社会の進展を視野に入れた「授業改善」が重要とされる。また「働き方改革」の中で,一単位時間に充てられる時間の短縮や試験実施の効率化等を意図するCBT方式への移行も進められている。
このように急速に進む教育改革の中で,学校教師の国語科授業観はどのようになっているのだろうか。論点を明確にするために,仮に学校教師の国語科授業観を,「理論・内容」と「実践・方法」と大別したい。今,「学習者主体・熱中する国語科授業の実現」を目的とした時,理想としてはどちらかに比重を置くのではなく,両者は融合されるべきだという捉え方もあるだろう。
例えば,国語教育界では,これまでも大村(1982)の「国語単元学習」,倉沢(1999)の「学室」など,両者を往還させ,学習者主体の国語科授業について実践的研究が深められてきた。また,大学における国語科教師養成の在り方についても,本学会の中でも以下のような刊行物等で検討されてきた。
・「国語科教育における理論と実践の統合」(2018)
・「課題研究報告書 国語科教育を問い直す」(2020)
本シンポジストの山元隆春氏(広島大学)は「理論と実践の統合」の中で,「実践の中の理論」は「現場を離れるとすぐに見えなくなる」ものであり,理論と実践の絶え間ない往還の必要性を説いている。また松崎(2018)は,同書において秋田(2009)を引用し,教員養成課程における学びの困難性を指摘し,「省察と実践化との関連やつながりは,十分に研究されてきたとは言いがたい」とする。誤解をおそれずに言えば,大学における国語科教師養成は,常に「実践」を意識しないと,「理論」に傾いてしまいがちだということであろうか。
資質・能力ベースの学習指導要領下で授業する現在,現場から時折届く「大学の教育は現場では役に立たない」という納得し難い指摘も,あながち的外れではないようにも思えてくる。この問題は,従来の研究科と教職大学院の在り方についても影を落とす。その光源は学校教師の国語科授業観が,「理論・内容」よりも「実践・方法」重視へと変化していることにあるのではないか。国語科教師を置き去りにしかねない速度で進む「教育改革」の中で,大学教師はこれまで以上に学校現場の声に耳を傾ける時に来ている。
加えて,鹿児島県には少子化の波が押し寄せ,R4現在複式学級設置学校数は,全体の46.5%にのぼり,全国で最も高い数値となっている。さらに離島・へき地では,経済的体力の低下の中で,いかにして教育環境充実を図っていくかが課題として残っている。
全国的な教育課題に加えて,本県特有の教育課題の解決にも応えようとする鹿児島県の国語科授業は,現代の「教育改革」の縮図だと言えよう。
では,本県の国語科教師は,児童生徒が熱中する授業を求めつつも,現実の中で一体どのような国語科授業観を有し,どのような授業実践を展開しているのか。また,複数の授業を受け持つ小学校教師は,他教科の授業観と比較して,国語科授業観をどのように考えているのか。あるいは,学校の中間リーダーとして活躍する教師は,年齢層や学校の状況の違いからくる各々の授業観の相違点をどのように整理しているのか。
今回のシンポジウムでは,鹿児島県教育委員会指導主事及び奄美市立小学校教諭(3人とも鹿児島大学附属小学校・代用附属小学校国語科主任経験者)に,鹿児島県出身の山元隆春氏(広島大学)を交え,国語科教師の授業観を問い直すことに主眼を置く。このことは,各大学における教師教育にも重要な視点をもたらすと考える。
なお,「熱中する」の語義については,「平成28年教育課程部会理科ワーキンググループ資料」(出典:鹿毛2013)に拠り,「行動的側面」「感情的側面」「認知的側面」において「意欲的な姿」が見られる「エンゲージメント」と同義であるが,国語教育の分野では歴史的に「学びひたる」「夢中」(大村はま氏)等の言葉が使用されてきた経緯から「熱中」という言葉を使用した。
◇ 参考文献
・大村はま『大村はま国語教室 第1巻 国語単元学習の生成と深化』(1982,筑摩書房)
・倉澤栄吉『国語学室の思想と実践』(1999,東洋館出版)
提案者:鹿児島大会実行委員長 上谷順三郎
同 事務局長 原田 義則
シンポジスト
上原 孝夫 (鹿児島県教育委員会)
野間なつき(奄美市立小宿小学校)
原之園翔吾(奄美市立伊津部小学校)
山元 隆春 (広島大学)
コーディネーター
原田 義則 (鹿児島大学)