研究概要
このページでは板橋第三中学校の「GIGAスクール構想の実現」のための研究の概要を紹介します。
1 ICT機器使用頻度・クロームブックに関する生徒・教員の意識調査結果
最初に本校研究に関する3つの調査結果を示します。
(1) 「令和4年度全国・学力学習状況調査」の学校におけるICT機器の使用頻度
(2) 生徒の3つの資質・能力に関する意識調査結果
(3) Cromebook導入に関する教員の意識調査結果
(1) 「令和4年度全国・学力学習状況調査」の学校におけるICT機器の使用頻度
(2) 生徒の3つの資質・能力に関する意識調査結果
知識・技能
に関する質問
肯定的回答 90.8%
思考力・判断力・表現力等
に関する質問
肯定的回答 91.4%
学びに向かう力、人間性等
に関する質問
肯定的回答 80.3%
(3) Cromebook導入に関する教員の意識調査結果
授業力向上に関する質問
肯定的回答 95.5%
生徒の学習支援に関する質問
肯定的回答 100%
生徒の生活支援に関する質問
肯定的回答 100%
以上、本校におけるICT機器の使用頻度、生徒・教員の意識調査結果を示しました。
以下に本校の研究について以下に示します。
2 研究主題
「板橋区教育委員会教育研究奨励校」としての研究主題を
としました。
3 研究主題設定の理由
3では 研究主題設定の理由を示します。
(1)でGIGAスクール構想の言葉を定義します。そして、(2)(3)で文部科学省、板橋区における「GIGAスクール構想」の位置付けを明らかにした上で、テーマ設定の理由を述べます。
(1)GIGAスクール構想とは
板橋区ではGIGAスクール構想を
と定義しています。
(2)文部科学省におけるGIGAスクール構想について
文部科学省は、社会の在り方が劇的に変わる「Society5.0時代」の到来、 新型コロナウイルスの感染拡大など先行き不透明な「予測困難な時代」という社会背景から、令和3年1月26日に「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」を取りまとめました。
その中で学校教育にとって多くの課題がある中、「令和時代の始まりとともに、『新学習指導要領の全面実施』、『学校における働き方改革』、『GIGA スクール構想』という、我が国の学校教育にとって極めて重要な取組が大きく進展しつつある。国においては、こうした動きを加速・充実しながら、新しい時代の学校教育を実現していくことが必要である(P13)」と示されています。
このことから、「GIGAスクール構想」が学校教育課題を解決するために極めて重要な取組であることがわかります。また、「学校における働き方改革」が「GIGAスクール構想」とならんでいることもここで強調しておきます。
【参考】「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号) 【令和3年4月22日更新】https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
また、文部科学省は、GIGAスクール構想を「Society5.0時代を生きる子供たちに相応しい、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適化な学びと協働的な学びを実現するため、『1人1台端末』と学校における高速通信ネットワークを整備する。」 (下線は本校による)こととしています。
【参考】文部科学省資料
【参考】文部科学省「GIGAスクール構想の最新の状況について」
(3)板橋区におけるGIGAスクール構想について
板橋区は「板橋区教育ビジョン」の実現に向けたアクションプラン「いたばし学び支援プラン2025」を策定しています。プランには、3つの戦略的視点、4つの柱事業、9つの重点施策が整理されています。参考
プランにおける戦略的視点の1つが「GIGAスクール構想」となっています。
また、プランにおける重点施策1「確かな学力を育てる授業づくりと学習環境」で授業革新を推進するための1つとして、一人一台端末などのICT機器の活用を推進することが示されています。参考
さらに、板橋区は「教員の負担を減らして働き方改革につなげること」もGIGAスクール構想の目的としています。参考
文部科学省で重要な取り組みとされた、「学校における働き方改革」を板橋区はGIGAスクール構想の中でも行おうとしています。
【参考】「いたばし学び支援プラン2025」詳細 https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/038/958/10-2.pdf
本校は以上のことを踏まえ、「GIGAスクール構想の実現」を一人一台端末を活用し、確かな学力を育てる授業づくりと学習環境をめざした「授業革新」と、生徒に対し生活支援も行いながら「働き方改革」の2軸で研究を進めることとしました。
4 研究の目的
「板橋区教育ビジョン」の実現に向けたアクションプラン「いたばし学び支援プラン2025」にある戦略的視点の1つ「GIGAスクール構想の実現」に関する研究を行い、その成果を発表して、本区の教育の充実・発展に資することを目的としました。
【参考】板橋区教育委員会教育研究奨励校事業 https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kyoikuiinkai/torikumi/shorei/1012681.html
5 研究の仮説
3の研究主題の設定理由で述べたとおり、本校は「GIGAスクール構想」の実現を「授業革新」と「働き方改革」の2軸で進めることとしました。「GIGAスクール構想」を実現するためには、まずは「先生方ICT機器を文房具のように使える」ことが重要と捉えました。そして、ICT機器の活用によって「業務が改善され働きがいがでる」ということがおこり、その結果「生徒にも好影響」がもたらされると仮説をたてました。
また、「GIGAスクール構想」の実現を一部の先生のみではなく学校全体で取り組むために、以下のイメージマップを作成しました。
「授業革新」では、授業においてICT機器を活用を推進することで個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、主体的・対話的で深い学びを実現を目指しました。また、土曜ICT授業や授業配信(両方とも実践事例で紹介)等で代表されるように、家庭でもICT機器の活用ができるように環境を整えることとしました。
「働き方改革」は、学校経営計画に基づいて行えるように、ICT機器を活用することとしました。図に記載されている「基礎学力の定着と向上」、「基本的生活習慣の確立」「規範意識の涵養」は、学校経営計画のミッションを達成するための具体的な戦略です。
6 研究方法
仮説を検証するために以下の研究を行いました。
(1)教職員がICT機器を文房具のように使えることをめざす
(1)教職員がICT機器を文房具のように使えることをめざす
① GIGAスクール構想に必要な知識を「楽しく」体験しながら整理
② 教職員の実態調査(できないことを明確にして、不安に寄り添うため)
③ 実態にあわせた校内研修(実態調査で明らかになったスキルと関心から)
(2)業務の改善
① ロードマップの作成
② 既存の組織を生かしたデジタル化
③ 研究推進委員会の組織化
(3)生徒に好影響
① 働き方改革で実利を得たものを生徒の生活・学習支援で実践
② 生徒の意識調査
7 研究の成果
(1)教職員がICT機器を文房具のように使えることをめざす
① GIGAスクール構想に必要な知識を「楽しく」体験しながら整理
教職員でオンライン会議ツールを活用しオンラインランチ会、夏休みに先生のために学び合える場、スプレッドシートで同時編集をしながら会議の記録をとる等、最初は簡単に楽しみながら実利を得られる体験を通じて、必要な知識を身につけられるようにしました。
以下に、その学びの中で整理をした「Chromebookのアプリの整理(教職員向け資料)」と「本校におけるICT機器の活用のまとめ(保護者向け資料)」を示します。
【参考】村上唯斗(2021)「Google Workspace for Educationで何ができるの?」高橋純編著 Google for Education協力『はじめての授業のデジタルフォーメーション』p.50
② 教職員の実態調査
先生方がICT機器を文房具のように使い実利を得てもらうために、定期的なアプリに関するスキル・関心等の実態調査をもとに、実態に沿った研修を行いました。
例えば、以下の資料は研究奨励校1年目のGoogleアプリに関して、5月と10月に行った先生方のスキル調査の回答をまとめたものです。5ヶ月間で多くの先生が、スキルの向上を感じられています。しかし、「授業動画等を自分で撮影・編集を行い、配信ができる」と「ジャムボードでファイルを共有し、意見を出し合うことに活用する」という項目は、肯定的な回答の上昇がみられれませんでした。そこで、認定特定非営利活動法人 Learning for All 様を講師にお招きし、ジャムボードでの研修を行いました。
また、ミライシードに関する調査を行ったところ、スキルは低いと思っている先生のほとんどが興味をもっていることがわかりました。そこで、既に実践されている教科で提案授業を行ってもらい、教員間で学びあいました。
【実態調査資料作成協力】認定特定非営利活動法人 Learning for All 様
③ 実態にあわせた校内研修
②で示した、教職員の実態調査をもとに行った研修と提案授業を紹介します。
■ ジャムボード
認定特定非営利活動法人 Learning for All様を講師にお招きし、ジャムボードでの研修を行いました。
この時期は、まだジャムボードに触れたことのない先生方が多かったので、下のスライドにある通り、まずは「心理テスト」や「夏季オリンピックの開催国・都市あてゲーム」を行いました。ゲーム感覚で楽しみながら行えるワークだったので、自然とコミュニケーションが生まれ、その後、技術的な質問も飛び交っていました。
【研修会講師】認定特定非営利活動法人 Learning for All 様
【指導・助言】株式会社ベネッセコーポレーション 様
(2)業務の改善
① ロードマップの作成
② 既存の組織を生かしたデジタル化
「GIGAスクール構想」の実現のために、本校では研究推進委員会を立ち上げました。この委員会の役割は、既存の組織のオンライン化をサポートすることとしました。「新たな分掌を作る」、「既存の分掌の中に位置付ける」こととはしませんでした。
研究推進委員会メンバーにはそれぞれの分掌の主任が所属しております。会議の中で各分掌からオンライン化に関する提案をしてもらい、それを受け、研究推進委員会で技術的なサポートを行うという流れをつくりました。
【以下議事録参照】
③ 研究推進委員会の組織化
②でお示ししたように、研究推進委員会の役割は、既存の組織のオンライン化をサポートすることです。各分掌とスピーディに連携できるよう、各分掌主任で構成される【総務部】学年間で差が出ないように定期的な情報共有を行う【学年担当】を設けました。
また、委員会内での実務は、【事務部】、【研究部】の2つに分けました。【事務部】は、外部団体と連携をとるなどの「渉外」、教育委員会等からくる情報を学校内で「共有」、Chromebook等の「機器管理・修理」、必要な機器の「購入」を担います。【研究部】は、各組織から依頼のあったデジタル化を進める「開発」、教職員や生徒の実態を把握する「調査」、実態調査をもとに行う「研修」、そして次世代型の「研究発表」を担います。
さらに、Classroomに関してですが、これまでの教育活動に即した形で行えるように、作成は研究推進委員会が行いました。さらに、オンライン化は、新たな情報が必要となります。全職員に分かりやすく情報が伝わるように、「デザイン担当」を設け資料作りも工夫しました。
(3)生徒に好影響
「実践事例」のページで具体的な取り組みを紹介しています。
8 研究の課題
(1)授業革新:ICT機器を駆使して、「生きる力」、「生涯にわたって学び続ける力」を確実に育成
1点目の課題は、GIGAスクール構想の実現によって、「生きる力」である3つの資質・能力を確実に育成することです。板橋区においては、GIGAスクール構想の実現によって、「読み解く力」を育成し、学力の定着・向上を図り、「生涯にわたって学び続ける力」を高めることです。5の研究の仮説のイメージマップで示したように、GIGAスクール構想の実現とは学力を向上させるための手段と捉えました。本研究では、ICT機器を教員も生徒も文房具のように扱うことができるようになり、そのことが学力向上に関する意識にも好影響を与えていることが明らかになりました。今後は、7研究の成果(2)のロードマップのように、意識だけでなく「生きる力」「生涯にわたって学び続ける力」を確実に育成することにつながっているかを検証していきます。
【参考】令和2年「板橋のiカリキュラム」ー読み解く力の育成ー https://www.ita.ed.jp/weblog/files/1310273/doc/34970/207008.pdf
(2)働き方改革:持続可能なGIGAスクール構想の実現
2点目の課題は、新たに赴任された先生方がスムーズに本校の実践を行える学校組織を構築することです。
研究2年目を迎えた際、新たに本校に赴任された先生方に対し1年目の実践を共有する時間や資料等の準備が明らかにできていませんでした。新たに赴任された先生が負担感を持たず、直ぐにこれまで行われてきた実践を取り入れられるような学校組織の在り方と資料作成を行っていきます。