メディア表現学研究会(Study Group for Media Creation Studies)は、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]における多様な研究と制作が直面している話題の中で、今後の社会を考える上で重要な兆候になると思われるものを学外に開き、参加者との議論を経てメディア表現学を集合的に定義していくことを目的とした連続研究会です。
日時:2026年11月22日(日)15:00–18:00
場所:SHIBAURA HOUSE(東京都港区芝浦3-15-4)+Zoom
登壇者:藤田尚志(京都工芸繊維大学)、米田翼(東京大学)
ディスカッサント:小林茂(IAMAS)、大久保美紀(IAMAS)
備考:今回は展覧会「the Augmentation——テクノロジーとアートの短絡」での開催となります。ぜひ、展覧会もご覧ください。
メディアアートは、藝術と技術が交差するところで、その双方を固定したものではなく可塑的なものとして捉え、作品というかたちで具体化することで、新たな可能性を目に見えるものにしてきました。こうした働きには産業振興などの観点からも期待が寄せられ、1996年の岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]開学にもつながりました。
30年を経て、当初はメディアアートに特徴的だった先端技術の導入は他のジャンルでも当たり前となり、メディアアートの固有性は背景に退いたかのように見られています。しかしながら、制作・研究・教育の現場の内側から見ると、外からは似て見える表現のあいだに、根源的な違いがあると感じられます。それはジャンルによる区別ではなく、技術を、すっかり出来上がった手段として目的のために「利用」するのか、作品と同時に出来上がりつつあるものとして「使用」するのか、という違いです。
この違いは、AIやバイオテクノロジーに代表される先端技術と人間との関係を捉え返すうえでも重要ですが、いざ語ろうとすると困難です。それは、技術が人間にとって外から観察・分析する対象である以前に、人間と切り離せない関係にあるからかもしれません。けれども、技術とのかかわり方をめぐるこの違いを語れないままでは、メディアアートやバイオアートに限らず、藝術と技術/科学の交差によって開かれたはずの可能性が狭められていきかねません。
本研究会では、この問題を道具と身体の関係から問い直すために、二人の哲学者をお招きします。いずれも近年急速な展開を見せる「拡張ベルクソン主義」の潮流に身を置きつつ、独自の研究を繰り広げておられる研究者です。藤田尚志さん(京都工芸繊維大学 教授)には、道具を「人工の器官」と捉えたベルクソンを起点とする「器官学」を、発生の可塑性をめぐる現代生物学の議論と突き合わせる「生成の器官学」についてお話しいただきます。米田翼さん(東京大学 特任研究員)には、シモンドンの個体化論の背景にあるフレンチ・ネオ・ラマルキズムに光を当てつつ、「表現型可塑性」についてお話しいただきます。それは、生物を完成したかたちとしてではなく、環境との折り合いのなかで形づくられつづけるものとして捉える視点です。これらの話題提供に対して、IAMAS教員の小林茂と大久保美紀が、メディアアートやバイオアートの作品や技術の具体例をもとに応答し、議論を深めます。
メディアアートは完了したものとして語られがちですが、実際にはいまも動きつづけている未完了のものです。そこで顕在化し、問われつづけてきた技術とのかかわり方は、いまや多くの表現者にとって、自分ごとの問いとなっているはずです。道具と器官、技術と生命の関係を問い直す器官学や個体化論の視点は、メディアアートを、そして表現そのものを〈拡張〉する足場となるでしょう。作品と技術がともに形づくられていくその現場を語るための手がかりを、この議論の場から持ち帰っていただければ幸いです。
(小林茂・大久保美紀)
藤田尚志
京都工芸繊維大学 基盤科学系 教授
1973年生まれ。九州産業大学を経て、現在京都工芸繊維大学教授。Ph.D(哲学)。専門は哲学、フランス近現代思想。著書に『ベルクソン 反時代的哲学』(勁草書房、2022年)、平井靖史との共編著に『物質と記憶』論集シリーズ全三巻(書肆心水、2016-2018年)、宮野真生子との共編著に『愛・性・家族の哲学』全三巻(ナカニシヤ出版、2016年)。訳書にアンリ・ベルクソン『記憶理論の歴史』(共訳、書肆心水、2023年)ほか。今回の研究会に関連する(かもしれない)掌編に、藤田尚志(2024)「ベルクソンと芸術——「器官-障害の弁証法」の美学的応用」、『九州産業大学美術館記録集2023 「美の鼓動・九州」クリエイター・アーカイブVol.4 たいせつなあいまいさ』、9–10頁がある。
米田翼
東京大学 大学院工学系研究科 特任研究員
1988年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了(人間科学)。現在、東京大学大学院工学系研究科特任研究員(JST・ERATO鳥海「情報ウェルビーイング」プロジェクト研究総括補佐・研究推進技術主任)。専門は哲学、科学思想史。単著に『生ける物質 アンリ・ベルクソンと生命個体化の思想』(青土社、2022年)、共著に『21世紀の自然哲学へ』(人文書院、2024年)、『一元論の多様な展開 近代ドイツ哲学から、世紀転換期の英米哲学を経て、現代の分析哲学まで』(晃洋書房、2025年)、共訳書にジルベール・シモンドン『個体化の哲学 形相と情報の概念を手がかりに』(法政大学出版局、2018年)などがある。
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大久保美紀(メディア表現研究科 准教授)
小林 茂(メディア表現研究科 教授)
平林 真実(メディア表現研究科 教授)
松井 茂(メディア表現研究科 准教授)