成果報告
2023年度
2023年度の全体報告
安全と安心に関する学際的研究プロジェクト
「コロナ禍での学生生活に関する調査」に関する特集号論文
人文社会科学部の1年生から4年生を対象にコロナ禍での学生生活に関する調査を実施し,山形大学人文社会科学研究年報第21号に特集号論文としてまとめました。
特集:地域社会における安心・安全に関する学術的研究Ⅱ
「コロナ禍の学生生活に関する調査」の目的と概要
コロナ禍を過ごした大学生の孤立と不安
コロナ禍を経験した文系学生のオンライン授業における意識と課題-オンライン授業と対面授業の比較から-
コロナ禍の学生生活を経験した大学生の援助希求と精神的健康
大学と社会の連携に関する学際的研究プロジェクト
「自殺予防のための SOS 教育推進及び調査研究事業」の実施
山形県から委託を受け、(1)SOS の出し方(受け止め方)教育教材の開発と効果測定、(2)各種自殺対策に関する調査研究の実施を行いました。以下は報告書内の目次です。
第 1 章 本研究プロジェクト事業の概要と実施体制
第 2 章 学生向けの SOS の出し方教育の授業シナリオの作成
第 3 章 若年層の自殺対策に関する意識調査
第 4 章(報告 1) 想像による援助要請意図の促進
(報告 2) 若者の援助要請プロセスに影響する関連要因の検討
デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する学際的研究プロジェクト
「オンライン心理学実験の展開」シンポジウムの実施
オンライン心理学実験に関する実践例や今後の利用可能性に関するシンポジウムを実施しました。
2022年度
精神的健康に関する調査結果(2023年3月)の報告
人文社会科学部の実践科目である課題演習「地域情報」の授業の中で、SOS の 出し方、受け止め方教育に関心がある大学生が中心となって作成をし、山形大学生を対象に 2022年7月から8月にかけて実施しました。(本調査は,山形大学と交流する会「山形県の課題解決研究への支援事業」,山形大学「つなぐちから。」社会共創活動推進スタートアッププロジェクトの支援を受けて行われました。)
* 詳細は以下の報告書(リーフレット)をご確認ください。
・ リーフレット:リンク先
2022年度の全体報告
安全と安心に関する学際的研究プロジェクト
「コロナ禍での学生生活に関する調査」の実施
人文社会科学部の1年生から4年生を対象に,オンライン授業への取り組み方等,コロナ禍での学生生活の様子を明らかにして,今後の支援策等を検討することを目的として,コロナ禍での学生生活に関する調査を実施しました。
大学と社会の連携に関する学際的研究プロジェクト
「労働者のメンタルヘルス」講演会の実施
安全安心価値創造研究所の学術講演会「知っているようで知らない?メンタルヘルスの基礎知識」を実施しました(2022/12/5)。講師として,広島国際大学の講師である中村 志津香 先生にご講演いただきました。その後に,他学部への動画を提供するなど,これから社会人となる学生が,社会に出た後にどのようにメンタルヘルスに気をつければいいか,どのようなサポートが得られるかなど,実践的な知識を習得するための教育を推進しました。
「SOSの出し方教育,受け止め方教育」に関する情報発信
山形大学のウェブマガジン「ひととひと」において,精神保健福祉センターの渡辺祐子様と山形大学人文社会科学部の大杉尚之准教授の対談記事が掲載されました。
高大連携授業を通じたSOSの出し方教育,受け止め方教育の推進
実践科目授業において,SOSの出し方教育,受け止め方教育に興味を持つ学生によるプロジェクト型研究を実施しました(2022/4/1~2022/8/31)。「大学生の精神的健康,SOSの出しやすい状況,出しにくい状況に関するアンケート調査」,「山形大学保健管理センターへのヒアリング調査」,「国,地方の自殺対策,SOSの出し方教材の集約」,「高校生の援助要請傾向に関する調査」を行いました。
学生研究員によるSOSの出し方教材の作成
大学生向けのSOSの出し方教育教材を,学生研究員と一緒に作成しました。ストレスコーピング,SOSの出し方,受け止め方に絞った内容とし,大学の授業時間内で実施可能な教材としました。
自殺対策推進研修会での発表
精神保健福祉センターが主催する自殺対策推進研修会にて,山形大学が行ってきた取り組み内容について発表を行いました(2022/3/7)。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する学際的研究プロジェクト
オンライン実験に関するシンポジウム開催
日本心理学会第86回大会において,「知覚・認知・社会・発達・臨床心理学におけるオン
ライン実験の苦悩と工夫」というシンポジウムを共同で開催しました(川島・小林・紀ノ定・小林・水野・山本・国里,2022)。
オンライン実験による記憶の弁別能力と自伝的記憶の詳細さに関する論文出版
オンライン実験で実施した記憶の弁別能力と自伝的記憶の詳細さに関する論文(Matsumoto, Kobayashi, Takano, & Lee, 2022)がJournal of Memory and Language誌から出版されました。
2021年度
2021年度の全体報告
大学と社会の連携に関する学際的研究プロジェクト
教員向けFD研修会の実施
人文社会科学部FD研修会「学生からのSOSを見逃さない~若者の生きにくさと自殺予防~」を安全安心価値創造研究所と山形県精神保健福祉センターとの共催で実施しました (2021/08/25)。講師として一般社団法人髙橋聡美研究室の代表理事である髙橋聡美先生にご講演いただきました。その後に,他学部への動画を提供するなど,教員向けのSOS受け止め方教育を推進しました。
精神的健康に関する意見交換会への参加
山形県精神保健福祉センターが主催する「子ども・若者の自殺対策推進に関する意見交換会」にて意見交換を行ないました (2022/03/10) (大杉尚之(山形大学人文社会科学部),佐藤宏平氏(山形大学地域教育文化学部),安保 寛明氏(山形県立保健医療大学 大学院保健医療学研究科精神看護学),渡辺 祐子氏(山形県精神保健福祉センター))。
高大連携授業の推進
高大連携授業に関する教育研究報告論文が社会文化システム研究科紀要に掲載されました (2021/09/30) 。
大杉尚之・本多薫・山本陽史・小林正法. (2021). 高大連携授業を通じた探究活動の相互連携の試みー山形大学と米沢興譲館高等学校を事例としてー. 山形大学大学院社会文化システム研究科紀要, 18, 37-50.
* 詳細は以下の論文をご確認ください。
山形大学大学院社会文化システム研究科紀要:第18号 リンク先
デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する学際的研究プロジェクト
オンライン上での心理学実験方法の標準化
オンライン上での心理学実験方法についての紹介および教育実践に関する論文が掲載されました。
大杉尚之. (2021). 心理学系学部の大学生のためのlab.jsによる実験プログラミング学習環境の構築. 基礎心理学研究, 40, 3-9
小林正法・大杉尚之 (2021). オンライン実験・調査への参加・作成を介した心理教育. 映像情報メディア学会誌, 75, 474-479.
小林正法 (2021) lab.js BuilderによるGUIベースのオンライン心理学実験の作成 基礎心理学研究
大杉尚之 *・小林正法(2021) GUIベースのweb実験作成ツール(lab.js)の紹介と実践. 認知心理学研究, 19, 1-15.(*同等貢献著者)
リンク先: lab.js授業ページ(チュートリアル)
オンライン心理学実験のチュートリアルワークショップの実施
日本心理学会第85回大会にて,オンライン実験・調査に関するチュートリアルワークショップを行ないました (2021/9/9) (担当:小林正法,大杉尚之)。
リンク先: サポートページ
高校生向けの講演
日本基礎心理学会科研費公開シンポジウムにて高校生向けの講演を行いました(2021/10/24) (担当:大杉尚之,小林正法)。
リンク先1: 日本基礎心理学会のHP
リンク先2: サポートページ
人文社会科学部研究年報 特集号論文(2021年3月)の報告
山形大学周辺の小学校の保護者(2018年12月)および山形大学の学生(2019年1月)を対象とするアンケート調査を行い、山形大学人文社会科学研究年報第18号に特集号論文としてまとめました。以下はその概要です。
特集 地域社会における安心・安全に関する学術的研究
目次
1.本研究プロジェクトの概要
2.「山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関するアンケート(2018)」調査の概要
3.災害時のネットワークと災害への備え:山形大学近隣小学校の保護者と大学生の調査より(阿部担当)
五小保護者でも山大生でも、災害時に助けを求めることができる知人の数は少なく(「市内にいない」が約2割)、親族か大学の友人・知人のネットワークを頼りにしている人が多いのが現状です。このため、災害時にはキャンパス周辺で孤立する住民や学生が生じる可能性があります。
災害時の備えの実行率は、「避難場所の確認」を除けば、五小保護者で3割前後、山大生では2割前後です。被災地である宮城県出身の学生でも一人暮らしだと実行率が低くなっており、備えを促す必要があります。
4.心の健康に関する相談相手の実態と相談窓口の認知度について:山形市民と山形大学生の事例(大杉担当)
五小保護者、山大生ともに、精神的な悩みの相談相手として友人や知人(保護者の場合は職場の同僚)を挙げていました。全体の1割の方は相談相手が誰もいないと答えていました。相談窓口としては、「山形いのちの電話」以外の公的機関の知名度が十分ではありませんでした(1割未満)。大学生には「なんでも相談コーナー」や「保健管理センターの学生相談室」の知名度が高いこと(6割程度)がわかりました。
5. 防災情報の発信と入手に関する現状と課題-山形市住民と山形市役所の調査から-(本多担当)
山形市の住民(五小保護者)に対して実施したアンケート調査と、山形市役所の防災担当者からのヒアリング調査をもとに、防災情報の入手と発信に関する現状を比較して、課題を明らかにしました。
入手側(住民)はテレビやラジオの公共放送やインターネット上にある防災情報を入手しようとしているのに対して、発信側(山形市)は緊急速報メールやSNSに防災情報を流して、住民に災害情報を届けようと考えており、両者の行動に差異があります。迅速な防災情報の入手と避難行動につながることから、住民が防災情報にアクセスしやすい環境を整えるとともに、日頃から防災情報の入手を促進させる必要があります。
6. 児童の安全・安心を考える保護者の空間リスク認知の重要性(山田担当)
児童の安全・安心を考える保護者の空間リスク認知は、詳細であるものの、自宅周辺に偏る傾向があるため、小学校周辺や通学路の安全安心については、保護者間そして小学校との情報共有が必要になります。情報共有の場として、学内行事やPTAは重要な意味を持っていると言えます。
注意力や視野に関して、大人と子供には大きな差があります。保護者の空間リスク認知は詳細ですが、実際に通学する児童の安全安心を確保するためには、地域全体で子供を見守ることが重要です。
7. 山形大学小白川キャンパス周辺における小学生保護者の不安経験と大学生の問題認識(大杉担当)
山大生の振る舞いに関する不安経験として、五小保護者の約4割が「自転車の運転」、「騒音」、「歩行時のマナー」をあげていました。これらの項目は2013年度の調査でも指摘されており、慢性化しているようです。山大生による回答予想でも同傾向であり、山大生自身も地域の方にとっての迷惑行為であると認識しているようです。
8. 育児サポートの利用可能性と大学生による地域活動への期待(竹内担当)
大学生による地域活動が子育て家庭の福祉を向上しうるかを検討しました。五小保護者の多くが、山大生に子どもを相手とする地域活動を期待していました。なかでも、非親族による育児サポートを利用できる可能性がない保護者がより期待していることがわかりました。小学生の保護者、とくに非親族による育児サポートが脆弱な保護者の福祉は、大学生に子どもの相手を頼ることで向上する可能性があると考えられます。
* 詳細は以下の論文をご確認ください。
人文社会科学部研究年報:第18号 特集号論文:リンク先
2020年度まで
安心・安全プロジェクトの調査結果(2018年12月/2019年01月)の報告
本研究拠点では,山形大学周辺の小学校の保護者の方(2018年12月)および山形大学の学生(2019年01月)を対象とする アンケート調査を行いました。以下は調査結果の概要です。
(この研究プロジェクトはYU-COE(M)「地域社会における安心・安全に関する学際的研究拠点」として行われました。)
調査結果の概要
第1部 暮らしの安心・安全(阿部担当)
小学校の保護者は将来の生活に関わる問題や交通事故を不安と感じる一方、災害への不安は低い傾向でした。
災害時に助けを求めることができる知人の数は少なく(市内にいないが約2割)、親族ネットワークを頼りにしている人が多いようでした。
大学生の回答では、災害への備えは家族まかせが多いようでした。災害時には家族以外に大学の友人・知人ネットワークもあると考えている学生が3割程度いました。
第2部 防災情報の入手(本多・山田担当)
ハザードマップの認知度や山形市が発表している防災情報の入手に関する調査では、小学校の保護者の5割〜6割は「見たことがある」または「入手している」と回答している一方で、大学生は2割程度でした。
地震発生時の避難場所情報に関しては、保護者で4割,大学生の2割強程度しか入手していないようでした。
第3部 山形大学や山大生との関わり(大杉担当)
山大生の振る舞いに関する不安経験として、小学校の保護者の約4割が「自転車の運転」、「騒音」、「歩行時のマナー」をあげていました。これらの項目は2013年度の調査でも指摘されており、慢性化しているようです。山大生による回答予想でも同傾向であり、山大生自身も地域の方にとっての迷惑行為であると認識しているようです。
第4部 精神的健康と相談窓口(大杉担当)
小学校の保護者、大学生ともに、精神的な悩みの相談相手として友人や知人(保護者の場合は職場の同僚)を挙げていました。全体の1割の方は相談相手が誰もいないと答えていました。相談窓口としては、「いのちの電話」以外の公的機関の知名度が十分ではありませんでした(1割未満)。大学生には「なんでも相談コーナー」や「保健管理センターの学生相談室」の知名度が高いこと(6割程度)がわかりました。
第5部 山大生によるボランティア・地域活動に対する考えと実態(竹内担当)
保護者が山大生に望む活動は、「地域に住む子どもを対象とした活動」が5割でした。一方,山大生が興味のある活動は「地域におけるスポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動」が約4割と最も多くなりました。山大生はさまざまな活動に興味があるものの、実際に活動できる分野は限定されていることも示されました。
* 詳細は以下の報告書(リーフレット)をご確認ください。
・ リーフレット:リンク先
前身プロジェクト
前身プロジェクトの調査結果(2013年12月)の報告
本研究拠点の前身となった「山形市における安心・安全に関する学際的研究」プロジェクトでは,山形大学周辺の小学校の保護者の方を対象とするアンケート調査を2013年12月に行いました(山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関する調査2013)。その結果,「子育てや災害時に頼れる人の少なさ」,「避難地図や避難場所といった情報の浸透具合」, 「大学生の自転車運転への不安」などが浮き彫りとなり,安心・安全な地域づくりへの課題が明らかとなりました。
* 詳細は以下の報告書(リーフレット)と,論文をご確認ください。
1. 本研究プロジェクトの概要
2. 「山形大学周辺における暮らしの安心・安全に関するアンケート」調査の概要
3. 子育て世帯における日常と災害時のネットワークー山形大学周辺における小学生の保護者に対する調査よりー
4. 山形大学周辺の小学校区における災害リスク認知の現状と課題
5. 山形大学小白川キャンパス周辺における小学生保護者の不安経験と葛藤懸念