リーディングDXスクール事業 新しい学びの創造
生涯を通じて学び続け、自らの生活の質を向上させ続けることができる資質・能力の素地を、しっかりと育て、しっかり伸ばしたい。小学校段階ではどのようなことに取り組むことができるかを考えたときに、教えと学びについて次のような行動レベルの目標に行き着きます。
子どもたちが、自分の学びを自分で工夫し、自分で責任をもつなどの自立した「強さ」を育むことができる支援・指導の仕方の確立と実践
学ぶこと自体の楽しさや学ぶことで伸びていく自分に気付くことで感じる喜び等を体得できるような授業設計、単元設計、またそれらの開発
これらを実現するためには、これまで以上に子どもたち一人一人の学びの履歴を丁寧に見取る必要があります。GIGAスクール構想で整備されたデジタル学習基盤は、子ども一人一人の学びの過程を学習履歴として残し、指導者の見取りの幅を広げ、個別に支援しやすい環境をもたらしてくれました。これまで、したくてもできなかった質の個別対応が可能になりました。子どもたちに応じて、必要な学習材や支援を,個別に提供することが、これまでよりもはるかに小さい労力でできるようになりました。子どもたちの成果物を子どもたち自身で共有するだけでなく、その成果物ができあがる過程も含めて共有することができるようになりました。総括的な振り返りだけでなく、活動中に子どもたちが相互に啓発し合い、形成的に自己評価しながら活動することができるようになりました。デジタル学習基盤のないこれまでの学校環境では、全ての指導を効率的に、また落ちや漏れなく遂行するために「一斉指導」の形を取らざるを得なかった面があったことは否めません。今の単元デザイン、授業設計、教材研究等の多くは、デジタル学習基盤のない時代の知見の積み重ねを前提に最適化されている部分も大きいと思います。もちろん、そこには、不易の部分も多くあり、今の時代にも色褪せず用いることができることも多くあります。その認識の上に立って、デジタル学習基盤があることを前提としたときに、一斉指導よりも、子どもたちに自分の学びの責任を任せ、委ねた方がよい単元や活動はどこか、またそのために必要な自律的に学ぶ力はどのようなもので、どう段階的に育てていくか、こうした「新しい学び」やそこで必要な資質・能力を探索し、創造していくのが私たち認定校の役割だと思います。
一斉指導の価値は変わりません。学級の子どもたちに端的に必要なことを伝えられる指導技術は今後も必要です。
実際の生活に生きて働く知識及び技能などの基礎基本の確実な習得、習熟は、GIGAスクール構想の時代においても重要だと考えます。基礎基本のように、比較的、習得の方法が明らかになっている領域では、学び方を学び取り、自分で習得、また習熟を図っていくことが今後一層重要になると思います。
5年生の国語、新出漢字の学習を例に少し。
新出漢字の学習で、読み方、筆順、用例などを確認した後、空書き、指なぞり、なぞり書きの順で書き取り練習をしていました。丁寧でテンポの良い担任の先生の指導で学習は進んでいました。漢字によっては、間違いやすい漢字との比較や使い方の例示などを確認していました。気をつける点を漢字ドリルに直接書き込んでいる子もいました。(5年生に限らず,どの学級もこうした丁寧な指導が行われているのが本校の強みだと思います)
漢字の学習は、言葉の学習でもあります。言葉を知る、言葉に出会う、この機会を丁寧に設けてくれていることがありがたいです。言葉の意味を知り,理解できる言葉や使える言葉が増えると、考えが広がり、また深まります。過去の記憶も、より精緻になります。物事の見方、考え方が豊かになります。これまで大事にされてきた学習活動を、令和の時代も変わらず大事にしてくれていること、素晴らしいと思います。
一方で、漢字の書き取り学習は、漢字のことだけを学んでいるのではありません。声に出して読む、既知と繋げて理解する、語呂合わせで詰め込む、手を動かして覚える、繰り返す、どんどん書き出して次の学習に取り組む、小テストで確認する・・・など、多様な「学び方」も学ぶ時間になっています。学習内容(新出漢字)の習得だけでなく、学習方法(学び方)も習得されていると感じます。
大事なのは、そうして教わって身に付けている「学び方」を、この先、自分自身で自由自在に使いこなせるようになることだと思います。そのために大事なことはいくつかあって、そのうちの一つが、「何のために、今、この活動をしているか」を自覚して、学び方の意味や意義を理解して学習するということです。「この学び方を使って良かった」「こうして勉強したらよく分かった」といった用いた学習方略がうまく機能して「良いことがあった」と思えると、他の場面にも援用できる学び方として身に付くと思います。仮に短期的にうまくいかなくても、その取り組みを価値付けしてくれる寄り添いや支援があれば、同等の効果を得られると思います。「結果だけでなく、プロセスも含めて認めて励ます」のは、学び方を育てる点においても役立つ支援の方法だと思います。
これまで,先生方が「指導技術」として用いてきた『教えの技」を、子どもたちに「学びの技」として明示し、身に付けさせ、学びを自走させる、そうしたことが、これからの基礎基本の習得、習熟には大事ではないかと思っています。
読むことは、筆者の考えに寄り添うことだと言われます。
聞くことも同様に、話し手の意見や説明に耳を傾ける相手に寄り添う行為です。
意見に賛成か反対かはさておき、相手の考えを受け入れ、相手を尊重し共に学ぶという姿勢を示すことでもあります。
ただこれは言うほど簡単なことではありません。行動の軸が自分にはなく,相手にあるときに、自分を律して相手に合わせるというのは難しいことです。
本校ではここ数年、「聞く」ことを重視してきました。
先生の説明を聞く、友達の意見を聞く。その時に、体を向けて聞く、手をとめて聞くことなどを「聞く」ことについての学習スキルとして育成してきました。先生方の地道で根気強い指導によって、学級、学校全体で共通して見られる姿になってきています。
対話的に学ぶその入り口として、今後も「聞く」ことを重視していきたいと思います。