研究内容
・ソルボサーマル法による新規な金属酸化物ナノ粒子の合成
・固体触媒による窒素酸化物および亜酸化窒素の直接分解除去
・高性能可視光応答型光触媒材料の作製
・金属含有ミクロ多孔性材料の合成とその触媒特性の評価
・ヒドロシランを用いる金属酸化物の表面修飾
・ソルボサーマル法による新規な金属酸化物ナノ粒子の合成
・固体触媒による窒素酸化物および亜酸化窒素の直接分解除去
・高性能可視光応答型光触媒材料の作製
・金属含有ミクロ多孔性材料の合成とその触媒特性の評価
・ヒドロシランを用いる金属酸化物の表面修飾
・ソルボサーマル法による新規な金属酸化物ナノ粒子の合成
固体触媒を用いた触媒反応では,反応物質が触媒表面に吸着して吸着化学種が生成し,その後,結合が切れたり,新たに結合ができたりして反応が進行します。反応に直接寄与するのは,触媒表面ですので,触媒表面(あるいは表面の触媒活性サイト)が多いほど,反応は効率よく進むと考えられます。単位重量当たりの表面積のことを比表面積といい(単位:m2/g),触媒材料には比表面積が大きな試料が適していることになりますが,比表面積を大きくするには,触媒試料粒子を小さくする,つまり触媒材料をナノサイズ化することが重要になります。金属酸化物のナノ結晶を合成する方法には,水熱法(Hydrothermal method)がよく知られていますが,当研究室では,水熱法における水溶媒の代わりに種々の有機溶媒を用いるナノ結晶の合成法について検討しています。このような方法はソルボサーマル法と呼ばれ,従来法では得られない種々の特徴的な生成物が得られることから注目されています。例えば,チタンアルコキシドを1,4-ブタンジオール中に加え,オートクレーブ中,300 ℃で加熱すると,アナタース型の酸化チタン(チタニア,TiO2)のナノ結晶が得られますが,出発原料中に,少量の他の元素源(ケイ素アルコキシド,酢酸マグネシウムなど)を添加しておくと,これらの成分がアナタース型チタニアの結晶構造中に取り込まれたチタニア系固溶体のナノ結晶を得ることができます。得られた生成物は,耐熱性が著しく向上する,バンドギャップが変化するなど特性に変化がみられ、触媒材料として優れた特性を示すようになります。
・固体触媒による窒素酸化物および亜酸化窒素の直接分解除去
窒素酸化物(Nitrogen Oxides,NOx)は酸性の原因になったり,あるいは人体に有害であったりするため,その排出抑制は重要な課題です。人工的な窒素酸化物の発生源は火力発電所などの固定発生源と自動車など移動発生源に分類され,固定発生源からの脱硝反応については,チタニア/バナジア系触媒を用いたアンモニア選択還元法が,また,ガソリン自動車からの排ガス処理には三元触媒浄化システムが採用されています。しかしながら,近年,窒素酸化物の排出量や大気中の濃度は増加傾向にあり,さらに高効率の脱硝法の開発が求められています。従来の脱硝法は,NOをNH3 やCOなど還元剤を用いてN2 へ還元する方法が主流でしたが,これに対しNOの直接分解は,還元剤を必要としないシンプルな脱硝法として関心がもたれています。我々は,種々の触媒を用いてNO直接分解反応を検討した結果,蛍石型構造のMn修飾CeO2にBaOなどアルカリ成分を担持した触媒が本反応に有効であることを見出しています。
亜酸化窒素N2Oは,窒素酸化物のひとつであり,燃焼排ガス,医療現場,農畜産業から排出されていますが,1モルあたりの温暖化効果(温暖化係数)はCO2 のおよそ300倍であり,近年,その効果的な排出抑制策が求められています。N2Oの直接分解に対しては,アルミナ担持Rh触媒が高活性を示すことが知られていますが,近年,ジルコニアにRhを担持した触媒が高活性を示すことが報告され,注目されています。当研究室では,ソルボサーマル法により種々のジルコニア系酸化物固溶体のナノ結晶を合成し,これを担体としたRh触媒を用いてN2Oの直接分解反応を行った結果,YドープZrO2やCaドープZrO2を用いた場合,活性が向上することを見出しています。現在は,種々の物理化学的手法を用いて触媒構造や触媒特性について調べ,これらが触媒活性とどう関連しているかを調べています。また,得られた知見を活かし,さらに高活性化を図るため触媒成分・触媒調製法の改善を検討しています。
・高性能可視光応答型光触媒材料の作製
酸化チタンTiO2はバンドギャップが3.2 eVであり,これに相当する390 nmより短い波長の光(紫外線)の照射により,光触媒作用が生じることが知られています。近年,このような紫外線照射ではなく可視光を照射することでも光触媒として機能する,いわゆる可視光応答型光触媒について盛んに研究がされています。我々は,ソルボサーマル法で合成したシリカ修飾チタニアを,アンモニア気流中,高温で加熱処理することで,窒素が比較的高濃度ドープされた黄色を呈する試料が得られ,これが可視光照射下で高い光触媒活性を示すことを見出しています。また,得れらた試料にFeやVを少量担持することで光照射によって生じた正孔-励起電子の再結合を抑制することができ,光触媒活性をさらに向上できることも見出しています。本試料を,例えば,室内のVOCを低減するための空気清浄機に用いるにあたっては,共存ガスの影響や高い処理ガス流量での性能評価などいくつもの課題があります。現在はこれらについて検討し,触媒調製法の改良を検討しています。また,光触媒はVOC以外のさまざまな有害物質の除去法としても期待がされており,これについても種々検討をしています。
・金属含有ミクロ多孔性材料の合成とその触媒特性の評価
結晶性のミクロ細孔をもつアルミノシリケートはゼオライトと呼ばれ,分子ふるい能,イオン交換能を有することから,触媒材料としても広く用いられています。通常のアルミノシリケート中のAlの代わりに種々の金属種を取り込んだミクロ多孔性結晶は,メタロシリケートと呼ばれ,アルミノシリケートとは異なる触媒能を示すことから大きな関心がもたれています。なかでも,BEA型ゼオライトは,Si/Al比が大きい(シリカ分が多い),大きな細孔径を有する,耐熱性・耐水性が高いなど特性を有することから触媒材料として重要なゼオライトのひとつです。当研究室では,フッ化物イオンが共存する条件でシリカのみからなるBEA型多孔性結晶の合成について検討してきましたが,最近では,BEA型構造の種々のメタロシリケートの合成についても種々検討しています。得られた試料はバイオエタノールの変換用の触媒として高性能を示すことが期待されます。
・ヒドロシランを用いる金属酸化物の表面修飾
金属酸化物の表面には表面水酸基があることが知られていますが,表面水酸基は酸点の形成や触媒成分の担持サイトになるなど重要な役割をしていると考えられます。表面水酸基の定量法としては,分光学的な方法や熱分析を利用する方法などがありますが,吸着水の影響を排除するため高温で前処理を行う必要があり,これにより触媒構造が変化するなど課題もありました。一方,ヒドロシランは反応性がやや低いため水との反応は起こりにくいこと,またアルミナやジルコニアなどの表面水酸基とは反応し,量論的に水素が生成することが知られています。当研究室では,この特性を用いることで,吸着水を含む,結晶性の低いジルコニア試料に対しても,表面水酸基量(密度)を精度よく測定できることを見出しています。現在は,さらに他の成分の試料についても表面水酸基量の検討を進めています。一方,ヒドロシランと表面水酸基との反応は,表面修飾法のひとつと捉えることもできます。現在はこのような観点から,表面特性の精密な制御および触媒反応への応用についても検討しています。