研究紹介

木質細胞壁の人工合成

木質細胞壁は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンからできています。

しかしこれらの堆積機構や成分間の相互作用はまだまだ分かっていないことだらけです。

その仕組みを理解するために我々は木質バイオマスの"部品"を組み合わせ、人工的な細胞壁の構築にチャレンジしています。

もし自由に細胞壁をデザインすることができれば、貴重な木質資料の修復など、さらなるバイオマスの有効利用に繋がるかもしれません。

使うためにタケを観て、タケを知る

時には生活用品として、時には伝統工芸品として昔から利用されてきたタケですが、そのポテンシャルの高さは未知数です。

タケが形成した階層構造に基づく物理特性を明らかにすることでこれまでとは異なるタケの有効利用に繋げたいと思います。

溶けるセルロースの振る舞い

セルロースは一次構造の特徴から極性溶媒にも非極性溶媒にも簡単には溶けません。しかし、 少し化学修飾してやると溶解性が驚くほど向上します

しかし、なぜそんなに溶けるのか 、未解明な点も多く残されています。

実は食品添加物化粧品にも含まれているセルロース誘導体、その溶けるメカニズムについて研究しています。

細胞壁のkey分子 ヘミセルロース

細胞壁には不均一に分布し、化学構造は不規則で捉えどころがなく、しかも顕微鏡で観察することができない分子、それがヘミセルロースです。

しかし、セルロースとリグニンという全く性質が異なる両者を親和させているのもヘミセルロース。

木質バイオマスの中でも極めて謎めいたこの分子が発現する本当の機能は一体何なのか、我々は分光学的な手法を駆使して研究しています。

高効率バイオエタノール生産を目指して

デンプンがグルコールからできているのと同様にセルロースもグルコースからできています。

お酒はデンプンから製造される、ということはセルロースからもお酒を作ることができます。

それこそがバイオエタノール。

木材や稲わらからも製造可能です。

我々はクリーンエネルギーの高効率生産を目指した前処理法や糖化プロセスの最適化に取り組んでいます。

「白い木材」って何?

ヘミセルロースやリグニンといったマトリックス成分を木材から選択的に除去、

しかし天然の階層構造は維持しているという不思議な3次元構造体が「白い木材」。

樹木が形成した「かたち」に支えられた新たなエコマテリアルの創製に加え、細胞壁の構造・形成機構を解明するための基盤試料や生分解を理解するための基質として利用しています。

セルロース構造多様性の面白さ

セルロースを合成する生物は樹木を始めとした陸上植物に限られたものではありません。

海藻はもとよりナタデココによって一般的に知られている酢酸菌そして動物界に属するホヤもセルロースを産生します。

しかしミクロフィブリルのサイズや結晶構造は一様ではなく様々です。このような多様性を調べることによって、生合成や生分解の仕組み、そして生物間の関係性を紐解きたいと考えています。