Q1 行動支援はどのような事業ですか?
「子どもの豊かな育ちに向けたポジティブな行動支援」という事業名で、長野県の県立特別支援学校と須坂市立須坂支援学校(全19校)を対象に実施されています。
一人一人の幼児児童生徒の豊かな育ちにつなげていくために、「行動支援ブロックマネージャー」と連携しながら各校の担当者や担任の先生を中心とする支援チームによる支援を展開していきます。
また、実践的な研修会を実施することによって、教員の専門性の向上を図っていきます。ここでいう専門性とは個人の専門性だけでなく、校内支援チームで課題解決していくことを大切に考えています。
さらに、複数の学校で「ポジティブな行動支援アドバイザー」(以下「アドバイザー」)の学校コンサルテーションを受けることにより、困難事例に対する専門的な視点から助言を得ることによって全県の行動支援の充実を図ります。
Q2 行動支援ではどのような支援をするのですか?
望ましい行動に注目し、できることを認めたり、活躍する場を設定したり、授業改善で参加できる場面を増やしたりするなどポジティブに関わることで望ましい行動を増やしていきます。その結果として行動面の困難の改善・克服につなげていきます。
Q3 どのような子どもたちに支援を実施できますか?
障がいや特性、困難の種類に関わりなく、どの子どもたちにも行動支援を行うことができます。行動障がいのように困難が大きい場合は優先的に支援をする必要がありますが、さらに、生活に必要な新たなスキルを学びたい、生活を豊かにするための活動を増やしたい、また授業に生き生きと参加するようになってもらいたい幼児児童生徒に対しても行動支援は有効です。
Q4 子どもの支援で困っています。どこに相談したらよいですか?
支援チームで問題解決を図っていくことが成功の鍵を握っています。まずは、学級や学年会で対象の子どもの支援や今後の相談の進め方について話題にしてください。その上で校内の行動支援リーダー・サブリーダーに相談してみましょう。行動支援リーダー・サブリーダーを通して支援依頼をし、行動支援ブロックマネージャーと連携して支援していくことができます。
さらにチャンスがあればアドバイザーによる学校コンサルテーションをうけることもできるかもしれません。
Q5 これまでの教育活動に加えてまた新しい支援をしなければならないのでしょうか。
行動支援は、行動面の困難の改善や新たなスキルの学習、授業参加や余暇活動など適切な行動の充実など様々な場面で実践することができます。つまり行動支援を行う場面はこれまでの教育活動と同じ場面です。もし、日々の授業の中で子どもたちが支援を必要としているのであれば、行動支援を通して実践を見直し、さらに充実したものにしていくとよいでしょう。
Q6 行動支援では、子どもの願いや気持ちをどのようにとらえますか?
教師にとって子どもの願いや気持ちを大切に考えることは重要なことです。特に行動障がいのある子どもの行動は、そのようにしか表現できない子どもの「ことば」の働きがあると考えられます。
行動支援では、子どもの姿に加えて、聞き取り、行動記録、ABC分析、機能的アセスメントといった事実を基にしたアセスメントによって、子どもたちの心の声や叫びをきくことにつながると考えています。
Q7 教員による創意工夫のある実践が大切だと思うのですが、行動支援は画一的な方法のように感じてしまいます。
教員が主体的に学び、創意工夫のある実践が大切なのは言うまでもありません。行動支援では、子どもたち一人一人に合わせた支援を大切にしています。行動支援の考え方を学んだうえで、目の前の支援を必要としている子どもに合った学習環境や教材、支援方法は何だろうとアイデアを出し合い創意工夫のある実践をしていくことが大切です。
Q8 ABC分析とは何ですか?
ABC分析とは、行動に影響を及ぼす行動と環境との関係を検討するための分析方法です。ABC分析をすることで、行動の原因を推定したり、支援案を検討したりすることにつながります。ABC分析では、行動とその行動の前と後の関係を考えます。行動の前をA(Antecedent:先行条件・きっかけ)、行動をB(Behavior)、行動の後をC(Concequence:結果)と呼び、それぞれの頭文字からABC分析と呼んでいます。つまり、(A)どういう時に、(B)どういうことをすると、(C)どうなる、という3つの要素を観察し分析する方法です。
Q9 なぜ行動記録をとったり、グラフ化したりする必要があるのですか?
行動支援では、行動の回数や行動の指標となるものを決めて行動記録をとります。行動記録をとることによって、子どもの学習や指導計画を評価できます。また、行動記録により次の目標を立てる判断材料としたり、適切なタイミングで指導方法を改善したりすることにつながります。さらに、子どもに望ましい行動変容がみられると担任の先生にとっても記録が励みにもなります。
次に、行動記録をもとにグラフ化します。グラフ化することによって視覚的に支援がうまくいったのかがより分かりやすくなり説明するときの説得力が高まります。
Q10 実践事例で具体的な教材や指導方法が紹介されていたので、早速試してみたのですがうまくいきません。
事例を少し見聞きした方法を表面的に真似してもうまくいかないことが多いでしょう。また短期的にはうまくいったように思えても、子どもの成長に合わせて指導方法を改善したり、うまくいかなくなった時に修正することが難しくなります。
行動支援は、丁寧なアセスメントと指導計画、行動記録をもとにした評価、支援チームによる協働が必要です。行動支援に関する研修を受けることも大切です。実践しようとする場合、学級や学年で話題にし、校内の行動支援リーダー、サブリーダーに相談し、行動支援ブロックマネージャーと連携して実践することをお勧めします。
Q11 行動支援はどのようにして学んだらよいですか?
最もお勧めする方法は、本事業で実施する研修会に参加する、または県内特別支援学校等の有志の教員による「信州ABA研究会」という任意の研究会において開催されるサマースクール等に参加するなどし、行動支援対応リーダーや研修を受け実践経験のある職員から助言を受けながら実際に実践し、実践発表することです。このようなプロセスにより、知識と技術を自分のものにすることができます。さらにアドバイザーによる事例研究会に参加したり、実践報告会に参加して多くの事例に触れたりすることで多くの学びが得られます。また、支援チームで支援を展開していく経験も大切です。
信州ABA研究会については、ホームページや校内でのアナウンスをチェックしてみてください。