万能真空吸着ハンド
導電性粉体を用いたジャミング転移センサ
導電性粉体を用いたジャミング転移センサ
万能真空吸着ハンド(Universal Vacuum Hand, 以降UVH)は,上記のUVGに”ジャミング転移センサ”を内蔵したロボットハンドである.UVG と同等の吸着把持性能があり,野菜やコップなどに吸着することができる.
ジャミング転移センサとは”粉体を使った触覚センサ”である.金属粉体には電気を流すと,密度によって電気抵抗が変化する特性がある.この特性をUVG内部の粉体に応用することで,把持吸着時のUVHの変形を電気信号に変換し,把持対象の検知が可能となる. 粉体の密度を電気的に計測することによってUVGの吸着性能を損なうことなくハンドの変形をとらえることに成功した.
〜街中を自動で走るぶつからないロボット〜
自律移動ロボットNavit(oo)n (ナビトン)は,人や自転車が行き交う市街地をぶつかること無く自動で走行する.2025年の大阪万博にて自動でゴミ拾いを行うことを目標として研究中である.
また,中之島ロボットチャレンジに参加し大阪中之島公会堂の周辺を走行し実証実験を行っている.このロボットは,3D LiDAR(レーザー測距計)で周りの環境を認識し,3次元的に自己位置推定を行っている.そのため,平らな市街地や室内だけでなく.丘など起伏のある地形でも走行できる.また,3D LiDARとくらべて安価な,2D LiDARのみを用いて傾斜面に対応するシステムの研究も行っている.
万能真空吸着グリッパ(Universal Vacuum Gripper, 以降UVG)は,”粉”と”膜”からなる柔らかい吸盤部を持つ真空吸盤である.柔らかい吸盤部が平面,凹凸面,曲面に密着することで,左図のように,タイル面,食器,テーパ缶,ワインボトルなどに吸着することができる.
また,UVGは粉体の密度に応じて,その振舞が流体的または固体的に変化する"ジャミング転移現象"を応用することで真空吸盤では吸着が不可能であった吸盤よりも小さい小径物も把持することが可能である.
ビルの外壁や窓の清掃,橋梁の損傷検査などの高所作業は,危険を伴う作業である.これらの作業をロボットで行うためには,コンクリートやガラス面,金属面などの素材を問わず,凹凸面に吸着する技術が必要となる.本研究では,UVGを用いた壁面登攀型ロボットを開発し,壁面登攀および天井移動を実現している.
近年,橋梁や高層ビルなどの社会インフラの老朽化が問題となっている.そのため,打音検査や近接目視などの近接点検を実施できる検査型マルチコプタが必要とされている.そこで万能真空吸着グリッパを用いたマルチコプタを開発し,壁および天井の凹凸面への吸着,およびプロペラを停止した状態における凹凸壁面の打音検査を実現してきた.空気圧源からのエネルギを空気圧チューブなどで伝達する有線型と,これらを内蔵した無線型を開発している.何方を用いるかは適用事例に応じて選択される.
有線型吸着マルチコプタ
無線型吸着マルチコプタ
パワーアシストスーツは,介護や農業の支援,重量物の搬送など,多岐に研究されている.一方,研究がなされていない分野の一つとして,梯子や壁を登る動作(登攀)の支援がある.この支援により,高所作業や人命救助等を効率的に実施できると想定される.登攀における要件として,指による把持と体重を持ち上げる全身運動がある.また持ち手が無い壁面の場合,指での把持を補助する機能が必要となる.そこで本研究では,UVGを用いて把持力を,マッキベン型人工筋肉を用いて筋力をアシストするスーツを開発する.その結果,壁面および天井面に吸着した人体を支え,体重を持ち上げるアシスト効果が得られるスーツの開発に成功している.
Non-contacted Universal Vacuum Gripper
Contraction Universal Gripper
震災や原発事故等の災害現場において,長期間救助活動を行える自律移動ロボットが必要とされている.倒壊した戸立住宅における被災者探索や,半壊したビル内の偵察を行うためには,次の要件が挙げられる.内蔵動力源による単独駆動,歩行や跳躍による不整地移動性能,倒壊を促進しない小型軽量であることなどである.本研究では空気圧ロボットに注目する,空気圧駆動ロボットは,電動,油圧駆動ロボットと比較して,空気の圧縮性によって外界との接触を扱いやすいという特徴を有している.しかし,従来研究におけるロボットは,100kgを超える大型高重量の外部コンプレッサが必要であり,単独駆動が困難であった.そこで本研究では,エンジン駆動による小型高出力コンプレッサを搭載した空気圧駆動ロボットの開発を進めている.
神戸高専 鈴木研究室と共同開発.
ナイロン人工筋アクチュエータ
重量物搬送ヒューマノイドロボット