ファインバブルの定義
マイクロバブル発生の様子(西山ポンプ社製)
直径100μm以下の気泡をファインバブルと呼ばれています。さらに、直径1~100μmの気泡をマイクロバブル、直径1μm以下の気泡はウルトラファインバブルと呼ばれています。 ファインバブルは三菱電機社製の”バブルのお風呂”や、東芝社製の洗濯機”ウルトラファインバブル洗浄”、株式会社サイエンス社製の”ウルトラファインバブルシャワー”などの製品も販売されており、一般的にも耳にする機会も多くなりました。ファインバブルの発生方法には様々ありますが、超高速旋回方式、加圧溶解方式が主要な発生方式となります。
本研究室では、マイクロバブル発生器として,旋回方式(OKエンジニアリング社製)、加圧溶解方式(三相電機社製)、旋回+加圧の複合方式(西山ポンプ社製)、ウルトラファインバブル発生器としてBUVITAS(Ligaric社製)を研究用途で使用しています。 左の動画はマイクロバブル発生の様子となります。
ファインバブルは、一般的な数mm以上の気泡とは違い、様々な効果を秘めています。過去にさかのぼると、2000年頃に、広島のカキ養殖にマイクロバブルを適用し、非常に大きな成長促進効果が得られたというところから、大きな広がりを見せています。当時は、”魔法の泡”と呼ばれ、以降、ファインバブルには様々な効果があることが報告されています。代表的な効果や実用例は以下の通りで、非常に幅広い効果を有しており、最近耳にする、SDGs達成のためにも期待されています。
実は、ファインバブルについて様々なメカニズムが明らかにされていないことも多く、また、適用例もどんどんと増えていっているため、またまだ、広がり続ける技術となっています。最近では,マイクロバブルより更に小さい、ウルトラファインバブルを用いた応用に注目され、広がりを見せつつあります。
本校では、ファインバブルに関する研究として、大学・高専・企業と連携のもと研究を行っています。
近年、ウルトラファインバブルシャワーの普及により、ウルトラファインバブルという言葉は広く一般化している。一方で、ウルトラファインバブルシャワーは製品化が進む一方で、学術的にウルトラファインバブルシャワーを用いて定量的に洗浄効果を評価した論文は少なく、その洗浄メカニズムも明確になっていない。本研究では、ウルトラファインバブルシャワーによる洗浄効果の定量的な評価やそのメカニズムの解明を行っている。また、ウルトラファインバブル生成に必要なキャビテーション発生に関して数値流体解析を用いて、生成の高効率化を検討している。左の動画はシャワーヘッド内におけるキャビテーション発生量を数値流体解析で検討している一例となります。
現在、鉄道車両や駅構内においてウルトラファインバブルを用いた洗浄技術の導入が進められています。本研究では、ウルトラファインバブル水と二流体ノズルを併用することで、ウルトラファインバブル水による有効性を定量的に確認するとともに、高洗浄効果を有するブラシレス洗浄システムの確立を目指した研究を実施しています。将来的には鉄道車両壁面への適用を目指しており、車両を模擬した実験装置で洗浄効果を確認しています。左の動画は実験装置と洗浄の様子を示しています。
現在、鉄道車両や駅構内においてウルトラファインバブルを用いた洗浄技術の導入が進められています。その中で、鉄道車両内において、マイクロクロスにウルトラファインバブル水を含ませて、拭き掃除をしたとき、汚れが良く落ちる、軽い力で拭けるということが実際の清掃現場から報告されています。本研究では、特に、軽い力で拭ける=摩擦力が低減しているのでは?という点に着目し、検討を行っています。左図は、マイクロクロスに、水道水(TW)とウルトラファインバブル水(UW)を含ませて、摩擦係数を測定した一例となります。ウルトラファインバブル水の方が水道水よりも摩擦係数が低減することが確認できます。ただし、条件によっては、低減しないことも確認されていることから、現在詳細を検討しています。
ファインバブルにおいて、マイクロバブルは負に帯電している、単位体積あたりの表面積が大きいことから、液中の物質に付着しやすいという特徴があり、浮上分離による固液分離に応用されている。本研究では、食品分野の廃液処理において特に問題となる、油分の分離および回収技術の確立や高効率化を目的とした研究を実施しています。左の図は、油と水を混合したエマルションに対して、自然放置した場合(上図)とマイクロバブル水を投入し(下図)、分離の様子を確認した一例となります。自然放置の場合、数時間経過後もエマルションが維持されているものの、マイクロバブル水を投入した場合は、10分程度で分離できることが確認できています。
ファインバブルが有する特徴として洗浄効果があり、給湯器、洗濯機、シャワーヘッドなどへ応用されています。一方で、学術的には洗浄率の定量的評価や様々な条件下における洗浄効果の有効性については不明な点も多く、また洗浄メカニズムも明確にされていません。その中で、本研究では、配管洗浄に対して、洗浄率の定量的な評価や洗浄メカニズム解明に関する研究に取り組んでいます。左の動画は、壁面に付着した汚れが、ファインバブル水を流すことで、泡が汚れに付着、成長し、汚れがはぎ取られていく様子をとらえた動画となります。
工業的に大量のウルトラファインバブル水を必要とする場合、その生成方法は多くの場合、気泡を高速旋回液流によるせん断力で破砕するせん断方式が一般的となりますが、高濃度のウルトラファインバブルを生成する場合には比較的多くの時間を要してしまいます。一方で、超音波により比較的短時間でキャビテーションによってウルトラファインバブルを生成させる技術もあるものの、大量のウルトラファインバブル水を生成できないという大きな欠点があります。そこで本研究では、せん断方式と超音波方式を組み合わせた新たな方法でのウルトラファインバブル生成に関しての検討を実施しています。
流体機械は身の回りにたくさん!
数値解析を駆使しています!
流体機械は流体にエネルギーを与えたり、エネルギーを取り出したりする機械となります。エネルギーを与える流体機械には、例えば、ポンプ、扇風機、掃除機などがあります。ロケットエンジンも液体燃料を送り出す心臓部は流体機械で構成され、多くの流体技術者が関わります。エネルギーを取り出す流体機械は、主に風車や水力発電、火力発電など、流体のエネルギーを用いて、羽根車と呼ばれる羽根を回すことでモータを回転させ発電させる装置に代表されます。ほんの一例をあげましたが、流体機械は我々の生活には欠かすことのできない機械であることが分かります。
本研究室では、実験だけではなく、数値解析技術を用いて様々な流体機械に関する諸問題の解決に取り組んでいます。
補助人工心臓ポンプは機能不全の心臓の補助として心臓に直結される形で利用されています。心臓の機能不全は約80%が左心側で生じていることから、左心補助人工心臓(LVAD)がまず開発され、既に実用化されています。一方で、右心補助には現状LVADが流用されていますが、右心側は肺の循環がその役割であり、体全体に循環する左心側より流量や圧力が大きくないため、LVADは非設計点(低流量側)で運転されています。一般的にポンプを非設計点で運転する場合には多くの不安定現象が生じることが知られており、人工心臓ポンプの場合も、同様の問題が生じることが考えられます。そこで、右心補助人工心臓ポンプの確立にむけ、国立循環器病センターと大阪大学が共同で体内植込み型右心補助人工心臓を開発しています。本ポンプでは、血液の破壊溶血を防止するために,下部と上部に磁気駆動と動圧軸受システムを設けることで、完全非接触での運転が実現されていますが、運転時における羽根車とケーシングの接触やその安全性は不明となっています。また、軸受隙間が羽根車の安定性に及ぼす影響も、明らかにされていません。左上の写真は試作機の右心補助人工心臓となります。本研究では、羽根車の軸振動を測定し、その安定性を解明することをはじめ、その安定性に影響を及ぼすロータダイナミック流体力などを調べています。また、左下の動画に示すように、数値流体解析を用いて血液破壊の可能性等についても検討しています。