伊藤グループの研究論文“ナツメ果実搾りかすの健康機能性及び食味性向上に資する菓子素材としての有用性”が福井県立大学論集第60号に掲載されました。

1.研究のポイント

 

2.概要

我々の研究グループでは、福井県特産のナツメ果実に含まれる有用成分の健康効果について研究しています。ナツメには環状トリテルペノイドであるベツリン酸やオレアノール酸が含まれており、これまでにこれらの化合物には抗炎症作用などの健康効果が知られています。また、我々は、以前、ベツリン酸には皮膚の細胞老化を抑制する作用があることを報告し、ナツメのアンチエイジング効果が期待されています(Odama et al. Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2023)。今回、ナツメ果実を加工して製造されたナツメエキスおよびその製造過程で生じた搾りかす(株式会社シーロードより供与)に含まれるベツリン酸、オレアノール酸を測定しました。その結果、これらの化合物はエキスではなく搾りかすに検出されました。

つづいて、我々は、搾りかすの乾燥パウダー(以下、ナツメパウダー)の有用な利用法を考え、菓子素材としての有用性について検討しました。ナツメ果実に限らず、果物加工の際に生じる搾りかすや皮、種などの副産物は通常廃棄され、地球環境に悪影響を及ぼすことが懸念されていることから、その利用法が世界的に研究されています。このような副産物には、食物繊維や有用化合物など健康に良い成分が豊富に含まれることが知られており、パンやマフィン、クッキーなどの焼き菓子への応用がすすめられています。そこで、我々は、ナツメパウダーをマフィンの作製時に材料として加え、焼き上がり後のトリテルペノイドの残存量や食味性を検討しました。その結果、もとのレシピの材料にふくまれる薄力粉のうち10%および20%をナツメパウダーに置き換えても、マフィンはきちんと出来上がり、大学生を対象とした食味試験においては、10%の方ではプレーンのマフィンと同程度に好意的な評価が得られ、おいしいマフィンになることが分かりました。また、20%の方でも、一部の人から好意的に受け入れられました。また、マフィン中には、ベツリン酸やオレアノール酸が残存していることを確認しました。

 

3.論文情報

研究論文名

ナツメ果実搾りかすの健康機能性及び食味性向上に資する菓子素材としての有用性

掲載誌

福井県立大学論集 60号

 

4.改良レシピ

この論文では、過去の研究論文を参考に、マフィンを作りましたが、改良を重ね、よりおいしいマフィンを作ることができました。

 

材料:分量6個分

<プレーンマフィン>

<10%ナツメマフィン>

<20%ナツメマフィン>