研究テーマ

研究室の概要

自然と共生する持続的な社会の実現に、学術の面から貢献するのが保全生態学です。生態系と生物多様性に対する人間活動の影響や保全・再生などの生態系管理、生態系と生物多様性がもたらす多様な生態系サービス(自然の恵み)、社会–生態システムのダイナミクスや持続可能性など、保全生態学が扱うテーマは多岐にわたります。また、生物学としての生態学研究だけでなく、自然科学や人文社会科学のほかの学術分野と連携する学際研究や、社会の多様な関係者と協働する超学際研究まで、研究のアプローチも多様です。私たちの研究室は、個人とチームの力を活かして、保全生態学の研究と実践を進めていきます。 


キーワード:生物多様性保全、社会生態システム、生態系サービス、都市生態学、野生動物管理

主な研究内容

主要な研究を紹介

自然再生やグリーンインフラに関する保全生態学

生態系と生物多様性は、さまざまな恩恵を人間社会に与えています。持続的に利用するためには、人間活動の影響や生態系管理のあり方を検討することが必要です。自然がもたらす多様な機能の現在と将来の評価を、学際的な手法により研究しています。また、地域の生態系管理や生物多様性保全における地域の文化の役割についても研究しています。生態系がもつ多様な機能を活用する防災減災の手法(Eco-DRR)や、自然が持つ多様な機能を活用して持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用計画(グリーンインフラ)を、社会に実現するための取組みも進めています。地域住民や官民の実務者などの多様な関係者と連携して、超学際的な方法により実践に取り組んでいます。 

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淡水生態系を対象にした保全・基礎生態学 

淡水生態系は、富栄養化や外来生物など人為的な影響や季節変化などの自然的な影響を受けており、さまざまな環境変動が起きています。そのような変動環境に対する生物個体群や生物群集の応答の実態を、野外調査や室内実験により解明する研究をしています。また、湖沼のプランクトンを対象に、進化・表現型可塑性の適応動態や個体数の動態を研究しています。そのために、人工的な小さな生態系を実験室内につくりだし、そこでの生態学的・進化学的現象を詳しく調べることにより、適応や個体数変化の原理を探る研究をしています。 

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人と自然のインターフェースに着目した保全生態学

世界的に深刻化する生態系の劣化・生物多様性の衰退に新たな突破口を見出すためのヒントの多くは、従来の保全生態学領域の外側にあります。なかでも、「人と自然の関わり合い(human-nature interactions)」に関する研究は重要な意味を持つ可能性があります。実際に、自然とのふれあいは人々の健康・ウェルビーイングの維持・促進に貢献するだけでなく、生物多様性保全に対するポジティブな態度・行動を醸成させる機能があることが最近の私たちの研究から分かってきました。つまり、人と自然の関わり合いを上手に活用・管理することで、人と生態系の健全性を同時に高めることができるかもしれません。現在私たちは、生態学を中心としつつも、公衆衛生、環境心理、都市計画など様々な分野との学際研究を通じて、人と自然の関わり合いの理解や管理に向けた応用的研究を進めています。

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都市に生息する野生動物に着目した行動生態学とその応用

大規模な環境改変を伴う都市化は、生物多様性の低下を引き起こす主要因の一つです。その一方で、都市環境で暮らす野生動物も少なくありません。彼らの生態や行動に着目することで、都市化が生物に与える影響の検出や、人為攪乱に対する迅速な生物応答様式の解明に繋がるかもしれません。また、都市は人と野生動物の距離が著しく近いため、両者の軋轢発生の最前線地域でもあります。都市環境や人間そのものに対する応答を理解することで、現在深刻化する都市の野生動物と人間社会の軋轢の問題に対する効果的な管理策の提言に繋がることが期待されます。私たちは、北海道の都市に生息するエゾリスをモデル生物に、都市集団の行動パターンの解明や、それをもとにした緑地管理への提言を目指した研究に取り組んでいます。

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