原始惑星を取り巻くガスの流れ (Kurokawa and Tanigawa 2018 MNRAS)
惑星の誕生する舞台となる原始惑星系円盤におけるガスの流れの流体力学シミュレーションを行っています。スーパーコンピューターを用いた高空間解像度のシミュレーションによって、円盤ガスが原始惑星に集積する過程や、ガスの流れが惑星の材料となる塵の集積にどのような影響を与えるのかを調べています。こうしたシミュレーションの結果をもとに、惑星系の起源、特に地球サイズの惑星や木星のような巨大ガス惑星がどのようにつくり分けられ、多様な惑星系が誕生するのかを解明することを目指しています。
惑星の"種"に塵、小石、微惑星が集積することで惑星が形成する過程の理論計算(軌道力学計算)を行っています。特に、高解像度の流体力学シミュレーションと固体物質の軌道計算を組み合わせた新しい研究手法を用いて、誕生する惑星のサイズや自転の性質を調べています。さらに、直接観測できない小さな惑星が原始惑星円盤の構造に与える影響を調べることで、そうした惑星の存在を間接的に調べる新たな観測手法の提案も行っています。
原始惑星の周りのガスと塵の軌道 (Kuwahara et al. 2022 A&A)
小惑星の進化シナリオ (Kurokawa et al. 2022 AGU Adv.)
探査機リモセンや望遠鏡観測で得られた小惑星の観測データの解析と、小惑星内部で生じる水岩石反応・水循環シミュレーションから予想される鉱物粒子レゴリスの輻射輸送計算を行っています。観測データをもとに、小惑星や隕石の母天体がどこでどのように誕生したのかを調べています。太陽系の歴史、特に「地球の水や生命の材料がどこからやってきたのか」を解明することがこの研究の目的です。この研究の発展として、小惑星内部での有機分子化学進化を模倣する実験の共同研究も行っています。
地球やその他の地球型惑星の揮発性元素(大気や海のもと)組成は、天体衝突による供給と散逸、惑星内部の分配と循環によって決まります。私たちはこれらの過程を網羅した理論モデルを構築し、その計算結果の惑星形成・進化シナリオへの依存性を調べています。理論予想を現実の惑星と比較することで、地球(型惑星)の大気と水量を決定づけた要因の解明を目指しています。
地球集積の理論モデル (Sakuraba et al. 2021 Sci. Rep.)
ネオン同位体によって火星深部を調べる (International Mars Ice Mapper Measurement Definition Team incl. Kurokawa 2022)
水素・炭素・窒素・希ガス同位体組成の時間進化の理論モデルを用いた大気や海の起源・進化の研究を行っています。例えば、火星大気中のネオンに関する最近の研究では、過去の火星探査で見積もられたネオン存在度をもとに、直接観測できない火星マントルに大量の揮発性元素が含まれていることを突き止めました。この研究をもとに将来の火星探査によるネオン同位体分析を提案し、その場分析装置開発の共同研究も進めています。
惑星大気の運動が水(水蒸気)などの物質循環に与える影響を調べています。最近の研究では、火星大気の力学シミュレーションをもとに、地下からの水の流出を大気観測によって検出できるかを検討しました。地下水流出の実験的研究ともコラボレーションすることで、火星の水環境の進化や、将来の有人探査における水資源の利用可能性を調べています。
火星大気循環と水輸送シミュレーション (*Kurokawa, *Kuroda et al. 2022 Icarus; *equal contribution)
大気化学と炭素循環 (Aoki 2022 Master Thesis を改変)
大気光化学ネットワーク計算と炭素循環計算を組み合わせた理論モデルを構築し、初期地球を含めた様々な地球型惑星における気候進化や有機分子合成を調べています。
太陽系の巨大惑星、太陽系外のスーパー・アースやサブ・ネプチューンと呼ばれる地球より少し大きな惑星の形成過程と構造進化について研究しています。初期太陽系の進化に大きな影響を及ぼす巨大惑星、系外惑星系に普遍的に存在し惑星形成過程の解明の鍵を握るスーパー・アースやサブ・ネプチューンを調べることで、太陽系内外の惑星形成過程の統一的理解を目指しています。
短周期サブ・ネプチューン (Credit: NASA/GSFC/Frank Reddy)
火星衛星サンプルリターン計画 MMX (Credit: JAXA)
はやぶさ2 (着陸地点選定)、MMX (赤外線分光観測・着陸地点選定)、Dragonfly (地震計サイエンス検討)、International Mars Ice Mapper (国際観測定義チーム)、次世代小天体サンプルリターン (理学検討;詳細はこちら) といった太陽系探査計画に参画しています。研究室で行っている理論研究をもとに、探査で得られた情報を説明づけるモデルを構築するとともに、将来の探査立案を行っています。