生体の細胞内にわずかに存在する有機分⼦は、分⼦間相互作⽤を通じ、タンパク質に様々な影響を与えます。例えば、深海⿂内から発⾒されたトリメチルアミン N-オキシド(TMAO)は、タンパク質の⽣理機能を保持する役割を担っています。
本研究では、巨⼤凝縮系中の分⼦間相互作⽤ネットワークをコンパクトかつ精密にモデリングできる独⾃の⼿法「有効フラグメントポテンシャル(effective fragment potential, EFP)法」を⽤いることで、深海⿂体内の TMAO 濃度を再現した⾼速かつ精密なナノ秒オーダーの第⼀原理分⼦シミュレーション(EFP-MD)に成功しました。TMAO は生体中で揺らぎつつ巨大な双極子モーメントを発現し、水中で特異な水素結合ネットワークを形成することが解明されました。
(a) 浸透圧調整物質 TMAO, (b) TMAO とよく似た構造を持つアルコール
幾何構造はよく似ていても、それらの電子状態揺らぎは全く異なることが分かりました。
Electronic fluctuation difference between trimethylamine N-oxide and tert-butyl alcohol in water
N.Kuroki, Y.Uchino, T.Funakura, and H. Mori
Sci. Rep 12, 19417 (2022)
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