酸を用いるさまざまな応用においては、溶媒効果の非線形性ゆえに、目的に応じた溶媒選択が極めて重要となります。しかし、分子構造および溶媒を体系的に変化させた上での酸性度(pKa)の測定はほとんど行われておらず、任意の環境下で pKa を予測するための汎用的なプロトコルは存在しませんでした。
本研究では、分極可能連続体モデル(PCM)を用いた量子化学計算と機械学習を統合し、任意の環境下における pKa 予測プロトコルを構築しました。本プロトコルにより、水中の生体関連分子や、有機溶媒中の超強酸候補化合物の酸性度を、比較的少量のデータ学習によって平均絶対誤差 1.1 の高精度で予測することが可能となりました。
本手法は、溶媒和による酸性度の非線形的な低下(圧縮効果)も定量的に取り込むことができ、プロトン解離に伴う電子状態の変化が大きい化合物にも適用可能です。その高い汎用性により、創薬や工学をはじめとする多様な分野における材料設計・分子特性評価への応用が期待されます。
Acidity Prediction in Arbitrary Solvents:
Machine Learning Based on Semiempirical Molecular Orbital Calculation
R.Suzuki & H.Mori,
J. Phys. Chem. A 2025, 129, 10, 2612–2617.
[リンク](2025/03/17)