2020年9月ウエルカムセレモニー挨拶

中央大学理工学部電気電子情報通信工学科2020年度入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。並びにオンラインで視聴されているかと思われるご家族の皆様もまことにおめでとうございます。学科を代表して田村よりご挨拶させていただきます。

 このようなご挨拶を4月にできればよかったのですが、このコロナ禍で今となってしまいました。大学に一度も来ないで果たして私は大学生なのだろうか、と思った人もいるかと思います。本来なら、一緒に授業を受けて、学食で一緒にお昼を食べてということができません。もちろん残念だと思います。その代わりにいつもの大学生より使える時間が多いと考えてはどうでしょうか。少なくとも、通学に使う時間は他のことに当てられます。何か新しいこと、少し興味を持ったことなどに時間を使ってはいかがでしょう。皆さんのようなやわらかい頭は、いろいろなことを考え吸収することができます。若くない大学の教員でも、4月に突然オンライン授業をやるようにと言われ、若くない頭であーだこーだと試行錯誤し、どうにかオンライン授業ができるようになりました。満足いく出来かどうかは、皆さんが判断して下さい。幸い後期には私が担当する回路基礎及び演習1の授業がございます。

 何でこんな時期に大学生になってしまったんだ、なんて運が悪いんだ、と思っている人もいるかもしれません。逆に言うと、このような時期に大学生であることは、他の世代には体験できないことではあります。普通ではないことを体験するのは、悪いことばかりではない、少なくとも私はそう信じています。

 私は教育学部の出身で中学校の数学の先生を目指していました。同級生が教職についていく中、数年間採用試験に落ち続けました。これではダメだと大学院に進み、将来どうなるのだろうと思い悩みながら、大学に職を得たのが30歳のときでした。世の中なんて理不尽なんだと嘆きながら、暗ーい20代を過ごしたわけですが、60歳を過ぎ、ようやく最近になって、人生においてそれもよかったのかもしれない、と思えるようになりました。皆さん、今は大変かも知れません、運が悪いと思っているかもしれませんが、自分としてその評価が定まるには、ずっと長い年月が必要だと思って下さい。こんな時期に、やれることを考えながら悩みながら、進んで下さい。中央大学のユニバーシティメッセージは「行動する知性」です。期待しています。