Ryo Soga氏インタビュー
Ryo Soga氏インタビュー
――曽我氏が語る、スタートアップ挑戦のリアルと人材育成の可能性
日立製作所の研究開発部門からキャリアをスタートさせ、現在はシリコンバレーでスタートアップ「パレッタ(Paletta)」のCTO/CMOとして奮闘する曽我さん。大企業の安定したキャリアから飛び出し、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)や資金調達の試行錯誤を経て、レストラン業界向けソリューションを軌道に乗せつつあります。その経験を踏まえ、中央大学ビジネススクールの学生が今回のスタディツアーを通じて学ぶべき視点、そして日本企業におけるリスクテイクやキャリアのあり方について伺いました 。
Palettaは2019年、日本で「従業員向けワンオンワン面談支援サービス」として構想されました。しかし米国展開を機に採用支援へとピボットし、2023年の展示会を契機にニューヨークのレストラン顧客を獲得しました。2020年10月からは業界をレストランに絞り、事業を加速させています。
「単価が低い業界だとわかっていても、実績を積むにはレストランにフォーカスせざるを得なかった」と曽我さんは振り返ります。
日立の海外スタートアップ支援プログラムは「1年でPMFを達成し、シード投資に進む」という想定で設計されていました。しかし実際にはVC出資の獲得や事業基盤の確立に時間がかかり、現場は制度と現実のギャップに苦しんだといいます。
曽我さんは「制度はトップダウンで設計されますが、実際の進行は試行錯誤の連続です。現場の声を反映しながら制度自体を進化させる必要があります」と語ります。
インセンティブ設計やEXIT時の報酬配分についても率直な意見が示されました。大企業に残るキャリアと比べると、スタートアップ挑戦のリターンは必ずしも魅力的に映らないのが現実です。
「大企業にいれば安定したキャリアパスと報酬が得られます。スタートアップはリスクが高く、成功確率を割り引けば期待値ではむしろ低い」と曽我さんは率直に語ります。それでも挑戦を選ばれた背景には、ライフプランや海外赴任のタイミング、そして「自らの研究を事業化につなげたい」という強い動機があったそうです。
曽我さんは、ご自身の経験が「ノーリスクで大きな成長機会を得られた」特別なケースであることを認めつつも、日本の優秀な人材がリスクを取れるような制度や環境整備の重要性を強調されます。
「スタディツアーで大切なのは、シリコンバレーの華やかな側面を見ることではなく、現場の苦労や試行錯誤に触れ、自分ならどう挑戦するかを考えることです」と語る姿勢は、参加する学生たちへの大きな示唆となります。