ケシがもつモルヒネや、アオカビから発見されたペニシリンに代表されるように、ある種の生物は独特の構造や作用をもつ有機化合物(=天然物)を生産します。人類は古くから、こうした物質を医薬品などに利用してきました。このような背景のもと、私たちは自然界の生物から未知の天然物を発見し、その構造と価値を明らかにする研究を進めています。
研究の特徴
”自身が発見した天然物に愛着と責任をもち、何かしらの魅力を引き出して世に送り出す”
⇒ この目標を達成するために、利用できる周辺技術はなんでも活用しよう。
・独自の生物資源採集(沖縄・奄美地方の海洋生物、船体付着海洋生物(日本郵船との共同研究)、天然記念物”テングノムギメシ”など)
・官能基特異的物質精製法(Alkyne enrichment on Silver-immobilized Solid support(ASiS) 法)
・様々な構造決定手法(精密 NMR 解析、計算化学、結晶スポンジ法、人工知能、生合成遺伝子情報など)
・生物活性の評価と作用機序解明(細胞増殖阻害活性、病原生物(マラリア、トリパノソーマ、薬剤耐性菌 など)に対する増殖阻害活性評価など)
研究室教育の特徴
”ひとつひとつの化合物を大切にし、真摯に向き合うことを通じて自身の成長につなげる”
⇒ ”化合物が人を育てる”をモットーに、自分の見つけた天然物の価値を高めるために必要な技術と知識を身につけます。
例:微量物質の精製と分析、複雑な分子の精密な構造決定、計算化学による配座解析や物性予測、細胞を用いた各種生物活性の評価・解析法、誘導体や標品の有機合成による供給、生産生物の分子系統解析による同定、など
田中助教担当グループの研究内容
これまでに報告されている有機化学反応は非常に多様で、現代ではさまざまな方法で分子の変換が可能となっています。その中でも、最近注目されている「光触媒反応」では、従来の方法とは異なる進行過程を持ち、新しい化学の発見や効率的な分子の変換を実現する可能性を大いに秘めています。私たちの研究では、特に「どのような分子をつくるか」を大切にし、実際に役立つ反応を開発することを目指しています。さらに、確立した反応を天然物化学の分野に応用・展開していきます。
研究室生活
一日の流れ:
・遅くとも9時半までには集合し、研究活動を開始。コアタイムの設定は無いので、帰宅時間は自由。
一週間の流れ:
・毎週土曜日の午前中に報告会を開催し、進捗を報告する(各自、二週に一回のペースで報告)。報告会後は文献紹介(毎週一人、最長で午後2時まで)を行う。
・毎週一回、平日の午前中に演習を行う。NMR構造決定演習と反応機構演習を隔週で実施。学年ごとに分けて行う。
その他:
・春~夏にかけて、南西諸島や五島列島で生物調査を実施(5日間 × 複数回)。
・応用化学科内の関連研究室と、合同セミナーを実施。
・他大学(慶應義塾大、筑波大、上智大、工学院大、日大)との合同報告会や懇親会(=飲み会)を不定期で開催。
・天然有機化合物討論会(9月)、日本化学会年会(3月)、天然物化学談話会(7月)などの学会に参加。
⇒ 見学は随時受け付けているので、メールで連絡をください (宛先:aiwasaki686@g.chuo-u.ac.jp)。
関連リンク
・中央大学と日本郵船、海洋生物から創薬資源を発見するための共同研究を開始
・慶應義塾大学 理工学部 学問のすゝめ 未知の物質の発見とその価値の探索(前職の時のコラム)