開催日時:2024年 11/25(月) 14:50 - 16:20
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟 R791教室
講演者: Antoine Nicolas Diez氏(京都大学)
講演題目: Multiscale models for large systems of point particles, rigid bodies and soft bodies.
概要:Complex self-organized patterns and structures can emerge from active particle systems when the number of particles becomes very large. Typical examples include flock of birds, crowd motion, swarming of active cells and bacteria but also opinion dynamics or wealth distribution. More recently, these concepts have also been applied in optimization and data sciences to design efficient particle-based algorithms. In this talk I will present various multiscale analytical and numerical concepts for three types of particles: point particles, rigid bodies and soft bodies. The study of point particle systems originates from statistical physics. The field is by now well-understood and combines stochastic methods at the microscopic scale, PDE models at the mesoscopic and macroscopic scales and powerful numerical solvers. Rigid bodies are typically used to model flocking in 3D. Here geometry adds another layer of difficulty but gives rise to new self-organized phenomena. Finally soft bodies are used to describe e.g. foams and multicellular systems in biology. They are much more complex since they require to find a mathematical and numerical way to model shapes, volume constraints and non-overlapping interactions. For this latter part I will introduce a new optimal transport approach.
開催日時:2024年 11/11(月) 14:50 - 18:00
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟 R791教室
講演者: 津田 一郎氏(札幌市立大学)
講演題目:脳の機能分化を可能にするための変分原理と脳型AIのための基礎理論
概要:従来の自己組織化理論は、系が非平衡状態においていかにしてミクロな要素の相互作用がマクロな秩序形成を可能にするかに関する理論であった。そこでの大きな仮定は系が何らかの不変集合が存在するという意味で定常状態にあるということであり、それを保証するために境界条件は固定された。しかしながら、脳の発達過程や脳神経系の進化過程に見られるように、境界条件自体が変化することで系は非定常状態になる。このような非定常状態における自己組織化をいかに定式化したらよいだろうか。我々は系全体に拘束条件が作用する拘束条件付き自己組織化を考えてきた。拘束条件を系全体にかけることで、むしろ系を構成する要素に自己組織化が起こり、機能素子が生まれることが分かった。我々はこれを脳の機能分化の原理と捉え、これを可能にする変分問題を考えた。いくつかの成功例を紹介する。この研究をベースにして、現在の生成系AIの物理的基礎を復習し、その欠点を指摘する。脳に学ぶ次世代のAIの姿を探る一助としたい。
講演者: 吉田 正俊氏(北海道大学)
講演題目:身体性認知と自由エネルギー原理
概要:身体性認知、とくenactive approachでは、われわれの認知は「外界からの入力によって脳が活動する」といった片方向のものというよりは、知覚と行為の循環によって創発されるものと捉える。本講演では、このような認知観を形式化するために、近年提唱されている自由エネルギー原理(FEP)が活用できるか批判的に検討する。FEPでは「いかなる自己組織化されたシステムでも、環境内で(非平衡)定常状態でありつづけるためには、そのシステムの変分自由エネルギーを最小化しなくてはならない」と提唱する。つまりFEPは生物にとっての変分原理となることを標榜している。この点についても検討を加えたい。
講演者: 飯塚 博幸氏(北海道大学)
講演題目:構成的・現象論的アプローチによる意図性の創発モデリング
概要:本発表では、意図性の創発に関する二つのアプローチを紹介する。一つは意図や目的が自己保存を通した知覚と行為の循環の中に創発するという構成的アプローチであり、もう一つは自己と他者の不可分性を前提とした現象論的アプローチである。両アプローチともにニューラルネットワークを用いたシミュレーションモデルによって、意図性の生成モデルを構築する。構成的アプローチでは、Enactive approachに基づき、ニューラルネットワークにホメオスタシスを導入することでトップダウン的な制御を実現する。これにより、知覚と行為の循環から意図性が創発するプロセスをモデル化する。現象論的アプローチでは、自他を区別することなく処理する重ね合わせメカニズムを導入する。このモデルは、単に自身の将来の感覚を予測するだけで、自他の処理が自然と内部に共有され、他者の視点取得が可能になることを示す。さらに、この自他処理の共有と視点取得の能力が、意図性の創発と伝播にどのように寄与するかを明らかにする。これら二つの異なる視点からのモデリングを通じて、意図性の認知プロセスについて包括的な理解を目指す。
開催日時:2024年 10/15(火) 16:30 - 18:00
対面及びオンライン形式(ハイブリッド形式)で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 半田 高史氏(広島大学)
Dr. Takashi Handa (Hiroshima University)
講演題目: 大脳皮質と基底核のマルチセルラー活動から読みとく行動選択情報
(Behavioral Selection Information Decoded from Multicellular Activity of the Cerebral Cortex and Basal Ganglia)
概要:状況の変化に応じて適切な行動を柔軟に選ぶことは重要な機能である。大脳皮質と皮質下の基底核をつなぐ神経ネットワークは、適切な行動を選択する機能の神経基盤である。しかし、大脳皮質と基底核の神経細胞がどのように情報を処理しその神経ネットワーク上を伝達するのか、その神経機構は不明な点が多い。ラットが行動の結果をもとに次の行動を選択する課題を実行中、大脳皮質と基底核の多数の神経細胞の活動(マルチセルラー活動)を同時に記録した。異なる領域のマルチセルラー活動に対して、どんな情報をどのように処理するかを単一細胞レベルおよび細胞集団レベルで分析することでこの問題にアプローチした。大規模神経活動記録から得られた高次元データに次元圧縮法を適用し、抽出された神経活動の特徴から見えてきた大脳皮質と基底核が協調的に符号化する情報とその処理機構について議論する。
Flexibly selecting appropriate actions in response to changes in the environment is a critical function. The neural network connecting the cerebral cortex and the subcortical basal ganglia forms the neural basis for selecting appropriate actions. However, much remains unknown about how neurons in the cerebral cortex and basal ganglia process and transmit information across this neural network. We recorded the activity of numerous neurons (multicellular activity) in the cerebral cortex and basal ganglia simultaneously while rats performed tasks requiring them to choose their next action based on the outcome of previous behavior. By analyzing how information is processed in these different regions at both the single-cell and population levels, we approached the problem. We applied dimensionality reduction techniques to the high-dimensional data obtained from large-scale neural activity recordings and discussed the information encoded cooperatively by the cerebral cortex and basal ganglia, as revealed through the extracted neural activity patterns, and their processing mechanisms.
開催日時:2024年 7/22(月) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 斎藤稔氏(広島大学)
講演題目: 変形細胞モデルを用いた大規模シミュレーション
概要:細胞の変形能力は組織の剛性・流動性を決定しうる重要な要素である。細胞変形が組織全体に与える効果を紐解くためには、自由な変形を記述でき大規模な細胞集団を扱えるような柔軟な数理モデルが必要となる。我々は細胞形状とその変形を記述する数理モデルを開発し、多様に変形する細胞集団の大規模シミュレーションを可能とした。この手法を用い、密集した細胞集団のシミュレーションを行ったところ、ゆるく結合した上皮や間葉系様の形状を持つ細胞の集団では、強く密着した上皮細胞集団とは質的に異なる流動状態が出現しうることを明らかにした。
開催日時:2024年 5/23(木) 15:30 - 16:30
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 研究棟R791教室
講演者: 脇田 大輝 氏(東京大学)
講演題目:腕の数が変わっても臨機応変に動ける「棘皮動物」の怪
概要:なぜ動物は身体がいろいろな形に進化しても、一つの個体としてうまく動けるのだろうか? クモヒトデやウミシダは棘皮動物のなかまであり、身体の中央から四方八方に「腕」を広げる。腕の数は、5本の種もいれば、50本以上の種もいる。たとえ同じ種でも、個体によって腕の数がばらつく。しかし、腕の数にかかわらず、彼らは腕どうしをうまく協調させて、這ったり泳いだりする。その臨機応変さを創り出すしくみを、生物実験と数理モデリングのサイクルから解明していく。
開催日時:2023年 7/18(火) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 本棟595教室
講演者: 野津 裕史氏(金沢大学)
講演題目:流れを用いたバーチャル物理リザバー計算
概要: リザバー計算は、リカレント・ニューラル・ネットワークのフレームワークの一つである。リザバーと呼ばれる高次元動的システムの入力駆動の変化を利用する比較的新しい情報処理技術で、リザバーからの出力に対する重みを調整して実装する。リザバーが十分な非線形性とメモリをもつ場合、任意の時系列を高精度に再現できる。近年、リザバーとして物理系のダイナミクスを使用する物理リザバー計算の可能性が議論されている。本講演では物理系として、自然界のいたるところで存在し興味深い豊潤な挙動を示す「流れ」を考え、計算資源としての可能性を数値シミュレーションを用いてバーチャルに検討した結果を紹介する。
開催日時:2023年 1/19(木) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学 本棟5階 594教室
講演者: 小川知之 氏(明治大学総合数理学部 )
講演題目:競争拡散系における進行波から見る侵入と共存
概要: 数理生態学では、多種多様な生物種がいかにして共存しバランスを保った生態系をなしているかという問いに対して多くの研究がある。2つの種によって形成される進行波は競争関係にある種の力関係を記述するが、本研究では進行波による共存の可能性を議論したい。3種競争拡散システムに拡張して、2種の進行波の緩衝地帯が3番目の種の侵入を可能にすることを示す。分岐点周辺の解析により、侵入が既存の2つの種の住み分けにどのように影響するかを明らかにする。また、侵入進行波解の大域分岐構造についても議論する。
開催日時: 2022年11/25(金) 16:30 - 18:00
対面形式で開催します.
場所: 公立はこだて未来大学(研究棟R791)
講演者: 薩摩順吉 氏(東京⼤学名誉教授・武蔵野⼤学名誉教授)
講演題目: ファジーセルオートマトンとその解
概要: 現象解析の方法としては、連続的、離散的、超離散的の3つがありますが、そのうち、超離散的なものの一つであるセルオートマトンを変数の値が特別な場合として含む非線形離散方程式がファジーセルオートマトンです。今回の講演では、なぜファジーセルオートマトンを考えるか、またその解について超離散化、連続化で何が失われ、何が生き残るかについてお話します。
日時:2022年11月11日(金)16:45~18:15 (予定)
対面形式で開催をします.
会場:はこだて未来大学 593教室
講演者:中井 拳吾 氏(東京海洋大学 学術研究院・助教)
講演題目:機械学習による気象現象のデータ駆動型モデルの構築
概要:リザーバーコンピューティングと呼ばれる機械学習が決定論的ダイナミクスの時系列モデリングに有効であることがわかってきた. 我々は流体マクロ変数の時系列データの学習に基づいて時間発展モデルを構築し, 時間発展を予測することに成功している [1,2]. また背後にある理論を明らかにするため, 低次元の決定論的ダイナミクスの時系列を学習し得られた時間発展モデルが, 学習した力学系構造をどの程度再現できるかを明らかにした [3].これらの応用として, 気象学者らとの共同研究でマッデン・ジュリアン振動と呼ばれる気象現象の時系列を予測するデータ駆動型モデルを構築した. マッデン・ジュリアン振動は世界の気象に大きな影響を与えるものであり, 長期的な気象予測をする上で最も重要な指標の一つであると考えられている. 新たに作成したバンドパスフィルタにより観測された気象の時系列データを回帰的構造を持つ時系列にすることや時間遅れ座標系を用いた学習をすることにより, 従来の気象分野で用いられる物理モデルの予測性能を超える 1~2 ヶ月予測可能な機械学習時間発展モデルの構成に成功した [4]. 本講演ではリザーバーコンピューティングの学習方法やよい機械学習モデルを構成するための学習の設定方法を述べ, 気象現象のモデリングを紹介する.
[1] K. Nakai and Y. Saiki, Machine-learning inference of fluid variables from data using reservoir computing, Physical Review E 98, 023111:1-6 (2018).
[2] K. Nakai and Y. Saiki, Machine-learning construction of a model for a macroscopic fluid variable using the delay-coordinate of a scalar observable, Discrete and Continuous Dynamical Systems Series S 14, 3 (2021).
[3] M. Kobayashi, K. Nakai, Y. Saiki, and N. Tsutsumi, Dynamical system analysis of a data-driven model constructed by reservoir computing, Physical Review E 104, 044215:1-7 (2021).
[4] T. Suematsu, K. Nakai, T. Yoneda, D. Takasuka, T. Jinno, H. Miura, and Y. Sakai, Machine learning prediction of the Madden-Julian Oscillation extends beyond one month (in preparation).
日時:2022年6月2日(木)14:50~15:35 (予定)
対面形式で開催をします.
会場:はこだて未来大学 583教室
講演者:中尾裕也 氏(東京工業大学)
講演題目: Koopman作用素に基づく力学系の次元縮約と非線形リズム現象への応用
概要:近年、Koopman作用素に基づく力学系の解析手法が注目されている。Koopman作用素は系の観測量の時間発展を記述するもので、系が非線形でも観測量の時間発展は線形方程式に従う。特に、Koopman固有関数を座標変換に用いることにより、力学系の線形化と次元削減をシステマティックに行うことができる。古典的な非線形振動子の同期現象を解析するための位相縮約法がその典型例であり、Koopman作用素の観点からこれが自然に位相・振幅縮約法に一般化されることを述べ、ネットワーク結合系の集団リズムや反応拡散系の時空間パターンへの応用について簡単に紹介する。
日時:2022年6月2日(木)15:35~16:20 (予定)
対面形式で開催をします.
会場:はこだて未来大学 583教室
講演者:Jinjie Zhu (朱金杰) 氏(Nanjing University of Science and Technology)
講演題目: Large deviation theory and its application to dynamical systems
概要:Noise is ubiquitous in nature. Counterintuitively, it can induce many intriguing behaviors in dynamical systems. Among them, the exit phenomenon describes the noise-induced escape of the system’s state to the boundary of the basin of attraction (BOA) of the attractor, which is impossible for deterministic systems. The large deviation theory is one of the most powerful tools to quantitatively and qualitatively solve the exit problem. This talk introduces the basic ideas and concepts of the large deviation theory and its application to dynamical systems. In this talk, we will discuss two important quantities in the large deviation theory, namely, the mean first passage time (MFPT) and the most probable escape path (MPEP). The MFPT can be used to explain many well-known phenomena, e.g., stochastic resonance, coherence resonance, etc. Especially in dynamical systems with multiple timescales, the MFPT can reveal the timescale matching mechanisms for noise-induced coherent oscillations. The MPEP gives the fluctuational path with the largest probability where noise will perturb the system’s state from the attractor to the boundary of BOA. We will distinguish the MPEP between systems with and without detailed balance, where time-reversal symmetry will be broken in the latter case. Finally, some interesting examples will be given to show how the large deviation theory and the exit problems can affect our viewpoint on our world.
日時:2021年12月3日(金)16:30~18:00
ハイブリッド形式(対面及びオンライン形式)で開催をします.
会場:はこだて未来大学 講堂 R791教室(講堂から変更しました.) 及び オンライン
講演者:村川秀樹氏 (龍谷大学理工学部)
講演題目:細胞間接着の数理モデリングとその応用
概要:細胞同士の接着である細胞間接着、細胞が自発的に適切な組織や器官などの構造を作る細胞選別の理解は、生命科学分野における極めて重要な研究課題である。その重要性にも関わらず、それらの数理的な取り扱いはこれまでにほとんどなかった。細胞間接着及び細胞選別現象を数理的に解明することを目指した研究を行っている。講演では、数十万から数百万の細胞数からなる組織レベルの巨視的な現象を記述する細胞集団モデルの提案とその応用について解説する。内容は以下のとおりである。
・現象の紹介
・数理モデリング
・生命科学の現場における問題の解明に向けた応用
時間が許せば、数十から数百程度の細胞数からなる細胞レベルの微視的現象についての最近の研究についても紹介する。
日時:2021年11月19日(金)16:30~18:00(予定)
ハイブリッド形式(対面及びオンライン形式)で開催をします.
会場:はこだて未来大学 講堂 及び オンライン
講演者:竹之内 高志氏(政策研究大学院大学)
講演題目:経験局所化を用いた統計モデル推定
概要:本講演では、離散的な確率的現象を表現するための統計モデルのパラメーターを推定する問題を扱う。
パラメーターの推定に広く使われる方法として最尤推定量(MLE)があるが、離散確率モデルに対して適用する場合には莫大な計算コストが必要となることが多い。本講演では、いくつかの工夫を施すことで、計算コストを削減しつつ効率的にパラメーターを推定することが可能な手法を紹介する。
日時:2021年1月14日(木)16:30~18:00
オンライン開催をします.
講演者:井元佑介氏 (京都大学)
講演題目:シングルセル遺伝子発現データに基づく遺伝子制御ネットワーク解析
概要:遺伝子発現とは遺伝子がRNAやタンパク質を合成することであり、その発現量によって細胞や細胞の変化(細胞分化)が特徴づけられる。遺伝子は互いに発現量を制御(促進・抑制)することが知られており、その制御構造を有向グラフで表現したものが遺伝子制御ネットワークと呼ばれている。遺伝子制御ネットワークは、ゲノム情報だけでは説明しきれない生物の多様性を表現する要因の1つと考えられている。しかしながら、現在の技術ではその制御構造を直接観測することは困難であるため、様々なゲノムデータから遺伝子制御ネットワークを推定する研究が盛んに行われている。
本研究では、シングルセル遺伝子発現データ(scRNA-seqデータ)から、遺伝子制御ネットワークを推定することを目的とする。シングルセル遺伝子発現データとは、単一細胞のRNA発現情報を網羅的に抽出したデータであり、1回の実験で数百~数千細胞の全遺伝子の発現データを得ることができる。しかしながら、実験技術とコストの問題からシングルセル遺伝子発現データはノイズを含む多サンプル数かつ少タイムポイントのデータとなるため、従来の多タイムポイントを要する数理モデルのパラメータ推定に基づくネットワーク推定手法では良い推定結果を得られない。そこで本研究では、空間分布の統計解析に基づく因果ネットワークの推定手法"LiNGAM(リンガム)"に着目し、LiNGAMの背景数理モデルを遺伝子発現の力学系モデルに拡張することで遺伝子制御ネットワークを推定するGRN-LiNGAMを提案する。本講演ではGRN-LiNGAMの導入と数学的な諸結果について紹介する。さらに、遺伝子制御ネットワーク推定後の生物学へのフィードバックの方法についてもいくらか紹介する。
本講演は平岡裕章氏、斎藤通紀氏、小島洋児氏(京都大学)、清水昌平氏(滋賀大学)、前田高志ニコラス氏(理化学研究所)との共同研究(WPI-ASHBiプロジェクト)に基づく。
日時:2020年11月26日(木)16:30~18:00(1時間ほどの予定)
オンライン開催をします.
講演者:本田直樹氏 (京都大学)
講演題目:多細胞動態を司る支配方程式のデータ駆動的解読
概要:ライブイメージング技術の発展により、今や多細胞組織における各々の細胞の移動や分子活性等を生きたまま可視化できる時代となった。その結果、これまでの想像を超えて動的かつ複雑な生命現象を目の当たりにすることとなっている。これまでの画像解析では、研究者の「気づき」に依存して解析が進められてきた。しかし、生体組織は複数のシグナル分子が関与し、また複数の細胞が相互作用し合う高次元システムであるため、そこから背後に存在する法則を抽出するには、ヒトのパターン認識能力の限界を超えている。また、イメージングによって観測される「細胞集団レベルの現象」は、寄り集まった一つ一つの細胞が相互作用する「細胞レベルの過程」から階層をまたいで創発されたものである。したがって、細胞集団レベルの時空間データから細胞レベルの原因を解読する逆問題のためには、二つの階層をシームレスにつなぐ新しいアプローチが求められる。そこで本発表では、細胞レベルと細胞集団レベルをつなぐ“階層的モデリング”を提案し、それに基づいた“機械学習”によるデータ解析について解説する。具体的には、上皮細胞集団移動におけるERK活性動態をFRETバイオセンサーを用いたライブイメージングによって観察し、それにより得られる高次元の時空間データを階層的モデリングと機械学習による解析を通じて、現象を司る支配方程式をデータ駆動的に読み解く研究を紹介する。
日時:2019年12月9日(月)15:00~16:30
場所:公立はこだて未来大学 小講義室584室
講演者:安東弘泰氏 (筑波大学)
講演題目:ノイズを加えた距離行列によるプライバシー保護型データ共有の方法論
Privacy Preserving Data Sharing by Integrating Perturbed Distance Matrices
概要:機械学習において多くのデータを集めることは偏りの少ないモデルを作成する上で重要である。一方で、プライバシーや移動コストの観点から同様のデータが分散して異なる機関に保存されている状況が存在している。これらの分散データを元データをやり取りせずに統合することはデータコラボレーションと呼ばれる概念であり、安全な情報共有の一手段と考えられる。本研究では、機関に共通する擬似データを介して機関ごとにデータの距離行列を作成し、元データにおける局所的な近傍情報を元データをやり取りせずに学習する手法を提案する。
特に、各機関の所有するデータ数が少なく、かつバイアスのある場合において有効な手法であることを示す。また、本手法はノイズに対しても頑健であることから元データの匿名性を保持することが可能である。ここでは、テストデータへ適応することで手法の有効性を示す。
日時:2019年6月21日(金曜日)18:10~19:10(1時間ほどの予定)
場所:公立はこだて未来大学 小講義室585室
講演者:岩本真裕子氏 (島根大学)
講演題目:頭足類の動的パターン形成メカニズムとその機能の理解に向けて
概要:イカ類などの頭足類は、ボディーパターンを瞬時に変化させることで、求愛行動や対峙行動などのコミュニケーションや周囲の環境に模様を擬態させることで待避行動を行なっていると言われている。イカ類のボディーパターンの形成および変化の時間スケールは、チューリングメカニズムに比べて極めて早く、神経伝達による制御が示唆されるが、イカ類は飼育の困難さから実験が極めて難しく、詳細なメカニズムは未だ知られていない。そこで、イカ類の動的パターンの形成メカニズムを理解するための第1歩としてシンプルな数理モデルを構築し、数値計算により考察した。本講演では、数理モデルのアイディアや数値計算結果を紹介するとともに、そのほかにイカ類のボディパターンによるコミュニケーションに関する実験なども紹介する。