日本生態学会近畿地区会

 

これまでの活動の記録

近畿地区会では、年に1-2回の例会ならびに1回の総会を開催しています。例会では、主に学会員の方に呼びかけて口頭発表を募っています。この例会では、優れた発表に対して奨励賞が授与されます。また、公募集会を募集することで、広く地区会委員の研究活動の推進や研究能力向上、生態学教育、また社会還元を目的として公開でのシンポジウムや実習をとりおこなっています。

主な活動記録

 

アユモドキの保全に関する取り組み【自然保護専門委員会】

日本生態学会近畿地区会 自然保護専門委員会では、これまでアユモドキの保全について、様々な観点から取り組んできました。学術的な観点をもとに各所に提案を行っています。これまでの取り組みを以下にまとめています。

[2020年3月25日] アユモドキ保全に関する提言書を53団体と共同で提出

当初、アユモドキ生息地に建設される予定であった球技場「サンガスタジアム by KYOCERA」が、300m南に位置を移して完成し、2020年1月に運用が開始されました。このスタジアムの運用がアユモドキの繁殖・成長に与える影響は大きいと予想されますが、その対策はまだ十分ではありません。また、肝心のアユモドキ生息地での保全対策も未だに構想段階のままであり、具体的な計画は立てられていません。私たちは、アユモドキ個体群の確実な保全にとって必要な対策を提言書として取りまとめ、京都府、亀岡市、環境省、文化庁に提出しました。

⇒ 提言書はこちらをご覧ください。

[2017年6月18日] アユモドキの保全に関する取り組み一覧を掲載しました

日本生態学会近畿地区会では、自然保護専門委員会を中心として、アユモドキの保全に取り組んできました。

これまでの活動について、下記にリストを作成して掲載しました。


 これまでの取り組みについて

[2017年2月1日] アユモドキ保全に関する意見書を京都府公共事業評価に係る第三者委員会へ提出

京都府と亀岡市は、2017年1月、アユモドキ等希少生物生息地の近くに建設予定の「京都スタジア(仮称)」の整備事業計画に関する評価調書を、京都府公共事業評価に係る第三者委員会に諮ることを決めました。第三者委員会はこの評価調書をネット上で公表し、パブリックコメントを募集しましたので、当委員会は、2017年2月1日に、評価調書の問題点4つを指摘する意見書を提出しました。


意見書は、以下のリンクでご覧下さい。


⇒ 意見書の全文はこちら

[2016年12月16日] アユモドキ保全に関する意見書を55団体と共同で提出

2016年11月、京都府と亀岡市は、日本生態学会を含む多くの団体からの要望を受けて、球技専用スタジアムの建設予定地を、アユモドキ等希少生物の生息地ではなく、その南東側にある土地改良事業区に変更することを公表し、「亀岡市都市計画公園及び京都スタジアム(仮称)の整備計画の策定にあたり考慮すべき基本方針Ver.2」を公開しました。地区会自然保護専門委員会は、建設予定地の変更を評価しつつも、この基本方針にはまだ問題点があるため、それを指摘する意見書を、他の55団体と共同で、2016年12月16日に、京都府知事と亀岡市長に提出しました。


その意見書は、以下のリンクでご覧下さい。


⇒ 意見書の全文はこちら

[2015年3月20日] 日本生態学会がアユモドキ保全要望書を提出

2014年7月2日に日本生態学会自然保護専門委員会が要望書を提出したにもかかわらず、京都府と亀岡市のアユモドキ等希少生物の保全に向けた取り組みに変化が認められませんでした。そこで、日本生態学会は、2015年3月20日に開催された総会で、当該生息地に建設される予定のスタジアム建設計画を白紙に戻し、代替案も含めて綿密な環境影響評価を実施した上で、その是非を検討するよう求める要望書を、京都府知事と亀岡市長に提出することを決議しました。


その要望書は、以下のリンクでご覧下さい。


⇒  要望書の全文はこちら

[2014年7月2日] 日本生態学会自然保護専門委員会がアユモドキ保全要望書を提出

2014年5月31日の近畿地区会総会での決議を受けて、日本生態学会自然保護専門委員会は、2014年7月2日に、アユモドキ等希少生物の生息場所での開発行為の一時停止と綿密な環境影響評価の実施、そしてそれに基づく事業の科学的、合理的な見直しを求める要望書を、京都府と亀岡市長に提出しました。詳細は以下のリンクをご覧ください。


⇒ 要望書の全文はこちら

[2013年5月10日] アユモドキの保全に関する意見書の提出について

亀岡市アユモドキ等希少生物での球技場建設問題で、自然保護専門委員会では地区会委員会の承認を得て意見書を提出しました。


<意見書の内容>


平成25年3月12日付で日本生態学会近畿地区会自然保護専門委員会から提出した「京都府亀岡市のアユモドキ等生息地における専用球技場建設に関する緊急要請」に対する亀岡市と京都府の回答は、大変に杜撰なものでした。アユモドキ等希少生物の分布・生態調査などの現況調査は少し行なっているものの、未だ影響予測調査を行なっていない現状で、「球技場を含む公園の位置と面積を決定しても生物の保全に影響を与えるものではない」というようなものでした。そこで、当委員会からの質問に対する適切な回答になっていないこと等を記し、ともあれ、一旦都市計画決定手続きを中断して、詳細な現況調査と影響予測調査を行い、行政、市民、地元住民、専門家を交えて議論する場を設けるよう改めて要望しました。詳細は以下のリンクをご覧ください。


「亀岡市回答と当委員会意見書」はこちら

「京都府回答と当委員会意見書」はこちら

 

奨励賞

生態学会地区会奨励賞は若手研究者の奮起を促すことを目的とし,地区会例会の開催毎に,発表された論文の中から優れた論文に贈られます.受賞した論文は次回の例会において表彰され賞金が贈呈されます.対象者はおおむね30歳以下の若手研究者で,地区会員(地区会員でない場合は,近畿地区 に在住し発表論文の共同発表者に地区会員を含んでいる)であり,例会における発表論文の第一著者かつ講演者である方です.審査においては,講演者の研究経験なども考慮されており,卒業研究や修士の研究でも受賞の可能性があります.これまでもの受賞者にも卒研生から博士課程まで広い研究経験の方が含まれています.

第28回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2022-12-9)

林 息吹(京大・理),東樹 宏和(京大・生命)

研究題目:多反復培養した環境細菌群集に現れる代替的状態の定量的理解


増田 和俊(京大・人環),瀬戸口 浩彰(京大・人環),長澤 耕樹 (京大・人環), 鈴木 節子(森林総研), 久保田 渉誠(株式会社ファスマック), 佐藤 真(株式会社ファスマック), 永野 惇(龍谷大・農, 慶応大・IAB), 阪口翔太(京大・人環)

研究題目:海洋島で雌雄異株化したムラサキシキブ属の性決定ゲノミクス


西野 大輝(滋賀県大・環境), 西田 隆義(滋賀県大・環境), 吉山 浩平(滋賀県大・環境) 

研究題目:二枚貝内におけるカイビルとタナゴ類の新しい寄生者間相互作用

第27回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2021-12-11)

上原 春香(奈良女・院),西山 若菜(奈良女・院),和田 恵次(奈良女・院),遊佐 陽一(奈良女・院)

研究題目:新型コロナウイルスによる人間活動の変化が野生動物の行動に与える影響


増田 佳奈(神戸大学),邑上 夏菜(神戸大学),勝原 光希(岡山大学),宮崎 祐子(岡山大学),丑丸 敦史(神戸大学)

研究題目:ツユクサにおける送粉環境に適応した花形質の集団間変異


齊藤 達也(兵庫県立大・院・シミュレーション),土居 秀幸(兵庫県立大・院・情報科学)

研究題目:環境DNAの生態学:環境DNA分解のシミュレーションから分解を予測する

第26回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2020-12-12)

小林 啓悟(阪大院・工), 芳賀 智宏(阪大院・工), 前川 侑子(国際航業/阪大院・工), 松井 孝典(阪大院・工), 福井 大(東大院・農), 町村 尚(阪大院・工)

研究題目:物体検出モデルYOLOv3を改良したエコーロケーションコールによる日本産コウモリの音声モニタリングシステムの開発


辻本 大地(京都大・農), 安藤 温子, 中嶋 信美(国立環境研究所), 鈴木 創, 堀越 和夫(小笠原自然文化研究所), 陶山 佳久, 松尾 歩(東北大・農), 藤井 智子(多摩動物園), 井鷺 裕司(京都大・農)

研究題目:海洋島へ進出してもなお飛び続けるハトー島嶼シンドロームとのジレンマの中で歩んだユニークな進化


八木 龍太 (神戸大・院・理),陀安 一郎 (地球研),末次 健司 (神戸大・院・理)

研究題目:ラン科おける混合栄養植物の探索 -チドリソウ亜科シュスラン連に着目して-


湯本 原樹(京大・生態研), 西尾 治幾(京大・生態研), 村中 智明(京大・生態研,  鹿大・農), 杉阪 次郎(京大・生態研), 本庄 三恵(京大・生態研), 工藤 洋(京大・生態研)

研究題目:多年生草本ハクサンハタザオにおける葉寿命は季節的な表現型可塑性を示す

第25回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2019-12-2)

西田有佑(大阪市立大)・高木昌興(北海道大)

研究題目: 性淘汰によって進化するオスの貯食行動ーモズははやにえを食べて求愛歌の魅力を高めてメスにモテモテになるー

第24回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2018-12-2)

遠藤千晴、渡辺勝敏(京都大・理)

研究題目: 淡水魚カマツカにおける口部形態の集団内変異と摂餌パフォーマンスの関係


上田るい(神戸大・理)、金岩稔(三重大・生物資源)、勝村啓史(岡山大・自然科学)、武島弘彦(東海大・海洋)、佐藤拓哉(神戸大・理)

研究題目: 森と川の季節的つながりが維持するアマゴの生活史多様性

第23回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2017-6-3)

勝原光希(神戸大院・人間発達環境学)・丑丸敦史

研究題目: 繁殖干渉下の在来近縁植物2品種の共存機構-ツユクサ・ケツユクサ系を用いて

(選定理由)ツユクサ・ケツユクサ間における繁殖干渉について、仮説の検証に十分な野外データ、実験、解析がなされており、よくまとまっていた。研究目的の一般性の高さ、実験方法と分析方法および結果分析方法の妥当性、結論の普遍性と今後の展開が期待される。


辻冴月(龍谷大院理工)・入口友香・寺村伊織・北川忠生・山中裕樹

研究題目: 環境DNA分析による日本産メダカ属2種の同時検出に向けたReal-time Multiplex PCR検出系の開発

(選定理由)メダカ属2種の検出系の開発とその有効性について完結にまとめられていた。問いがシンプルで明解な答えを、実験的手法と野外パターンから明らかにしていた。

第22回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2016-12-23)

望月昂、川北篤(京大・生態学研究セ)

研究題目: 被子植物における新たな送粉シンドローム:送粉者としての微小双翅目昆虫の有用性と一般性について

(選定理由)新たな送風シンドロームの発見という価値が大きい。送粉シンドロームについての概要を他分野の方にも分かりやすく課題整理されて、明快な仮説を立てて、これを検証するかたちで実証データが示されており、会場からの質問に対しても適切で丁寧な回答がなされていた。今後の発展が期待されます。


曵地穂、神崎護(京大院・農)、前迫ゆり(大阪産業大学院・人間環境)、長谷川博幸(京大院・農)

研究題目: シカによる長期の被食圧が森林の更新能力に与える影響

(選定理由)シカによる被食圧が森林更新、植生回復に与える影響を丁寧に研究して明らかにした優れた研究で、課題を明確にして操作実験によって仮説を論理だてたデータ検証が徹底していた。埋土種子や実生に関する調査についても土壌深さ別に丁寧に調べており、データが充実していた。古いギャプが新しいギャプよりも回復力が低いこと、保全のための解決策が示されていたことがとてもよかった。方法論を説明したスライドがとても分かりやすくギャップの把握手法も航空写真を上手く利用された事例となっていた。

第21回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2015-12-19)

横山大稀(京都大・森林生態)・今井伸夫(京都大・霊長研)・北山兼弘(京都大・森林生態)

研究題目:ボルネオ島熱帯林の野外NP施肥実験から見る樹木のリン獲得源としての多様な土壌有機態リンの役割


樋口裕美子・下野嘉子・冨永達(京都大院・農)

研究題目:複数の経路で導入されている他殖性ドクムギ属の砂浜への分布拡大プロセス


安岡法子・遊佐陽一(奈良女子大院・人間文化)

研究題目:超寄生者のエビヤドリムシがカクレガニを通して宿主のカキ類の繁殖に与える影響

第20回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2015-6-13)

高須賀圭三1・安井知己2・石神徹2・中田兼介3・松本吏樹郎4・池田健一1・前藤薫1(1神戸大院・農、2神戸大院・工、3京都女子大、4大阪自然史博)

研究題目:クモの網を操るハチ ―ニールセンクモヒメバチによるクモの行動操作の起源と機能


田中宏和・Joachim Frommen・高橋鉄美・幸田正典(大阪市大院・理・動物機能生態)

研究題目:協同繁殖するシクリッドでは捕食圧が子の分散を制限する


長野秀美・福本繁・高柳敦(京大院・農・森林生物)

研究題目:実生の保護者、知られざるタヌキの役割-タヌキの溜糞場はシカから実生を守る植物のレフュージア-

第19回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2014-12-)

矢代敏久・松浦健二(京都大院・農・昆虫生態)

研究題目:シロアリ女王が有性生殖と単為生殖を切り替える仕組み」


増田圭祐・松井孝典・福井 大・町村 尚(阪大工・環境エネルギー工学・地球循環共生工学)

研究題目:機械学習による判別分析を用いた11種類のコウモリのエコーロケーションコールによる種判別」


山田直季1・野間直彦1・高島美登里2(1滋賀県立大・環境,2上関の自然を守る会)

研究題目:島の植物は平衡状態?~瀬戸内海・上関における移入と絶滅~

第14回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2012-6-9)

梶井千永(神大院・農)

研究題目:アイノキクイムシの樹幹内行動はイチジク株枯病の発病にどう影響するのか

発表者:梶井千永・森田剛成・軸丸祥大・梶村恒・黒田慶子

受賞理由:アイノキクイムシの穿孔行動が引き金となって,イチジク株枯病がイチジクの樹幹内に広がっていくプロセスを豊富なデータを もとに示した。新規性が高く,応用的にも重要な研究である。質疑応答も的確で,対象生物についての深い知識がうかがわれた。聞き手への配慮がなされてお り,大変わかりやすい発表であった点も高く評価された。


山本結花(京大院・農)

研究題目:ヤマトシロアリにおけるコロニー内の産卵量調節機構

発表者:山本結花・松浦健二

受賞理由:シロアリの社会において,女王の産卵量の調節に女王フェロモンが関わっていることを,明確な実験結果をもとに,わかりやす く発表した。ヤマトシロアリの生態的特性や,女王フェロモンが特定されているという利点を生かした,優れた研究であった。同じくコロニー内の女王フェロモ ンの役割を明らかにした末廣氏の発表と比較されたが,ヤマトシロアリの女王フェロモンの特定に当初から関わり,女王フェロモンがコロニー内で果たす役割を 総合的な視点で捉えている点が評価された。


田辺晶史(京大院・地球環境)

研究題目:Claident: DNA塩基配列のホスト生物同定システム

発表者:田辺晶史・東樹宏和

受賞理由:今後ますます発展していくと予想されるDNAバーコーディングの分野で,より高い精度で生物の同定を可能にする新しいプロ グラムを開発し,その有効性をわかりやすく発表した。理論的裏付けが明快で,オリジナリティーが高い点も特に優れていると評価された。新しいプログラムは すでに公開されており,応用的価値が高い。

第13回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2011-12-10)

渡部俊太郎(滋賀県大・環境)

研究題目:地理的要因と人為的要因が形作るタブノキ林の遺伝構造

発表者:渡部俊太郎・金子有子・前迫ゆり・野間直彦

受賞理由:タブノキ林における孤立断片化と分布拡大という一見矛盾するような事象が,集団の遺伝構造に及ぼす影響を解析した点に新規 性があった。今後,集団 的遺伝構造に対する複数要因による影響の評価といった,同様の研究のモデルケースとなることが期待される。発表も分かりやすかった。


高橋宏司(京大フィールド研)

研究題目:海産魚マアジにおける生活史戦略としての学習能力の個体発生

発表者:高橋宏司・益田玲爾・山下洋

受賞理由:学習の個体発生およびその適応的意義という,発生学・行動学・生態学の接点にある興味深いテーマについて,シンプルな実験 系で明確な結果を示した ことは高く評価される。説明や質疑応答も大変明解であった。当該研究分野における本研究の位置づけや新規性が明確にされていれば,さらに高いレベルの発表 となったであろう。


東若菜(神大院・農)

研究題目:樹上100 mの水ストレス? セコイアメスギの葉の水分生理特性

発表者:東若菜・石井弘明・Stephen C. Sillett

受賞理由:高木の樹冠付近での水ストレスおよびそれに対する適応という古くからある問題に,明解な説明を与えた点に新規性があった。発表 も興味深く聞くことが出来た。テーマ自体や,本人がまだ修士1年であるということに,将来性が感じられた。

第12回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2011-6-25)

大秦正揚(京大生態研)

研究題目:種間競争が植食性昆虫の食草を決めている

発表者:大秦正揚・大崎直太

受賞理由:チョウが産卵する食草の選択に、近縁種のオスからの繁殖干渉が影響するという仮説を、観察と実験により検証した。従来ほと んど顧みられていなかった仮説を支持する証拠が得られたことは、関連分野に今後強い影響を及ぼす可能性があり、研究の発展性が十分に期待できる。発表のス トーリーも明確であった。ただし、一連の結果から仮説が十分に検証されたと言えるのかという点にやや不明確さを残すため、今後、さらに検証を進められることを望む。

第11 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2010-12-11)

堀江明香(大阪市大 院・理)

研究題目:仮想敵はだれ?-捕食者タイプと巣場所に応じたダイトウメジロの巣防衛-

発表者:堀江明香・高木昌興

受賞理由:複数の捕食者に対するダイトウメジロの防衛戦略を営巣場所との関係で明らかにした。個々の捕食者に応じた防衛を, 剥製を用いた野外実験により明らかにしようとした精力的な研究であった。発表も分かりやすく,質疑応答も対象に対する深い理解に基づいたものであった。今 後,個体レベルでの解析などが加えられれば,一層説得力を増す秀でた研究となることが期待される。


川津一隆(京大院・農)

研究題目:性的 対立と「性の維持」問題:単為生殖に対するオスの対抗適応が与える影響

発表者:川津一 隆

受賞理由:性的 対立と性の維持という従来別個に考えられていた2つの問題を統一的に扱い,雌の単為生殖化に対する雄の対抗適応が性の維持に関与している可能性を数理モデ ルにより示した。内容は非常に新規性があり,前提と結果が明解であった。発表や質疑応答も分かりやすかった。本人の資質も含め,今後の発展に期待したい。

第10 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2010-6-12)

遠藤力也(京大院・農)

研究題目:カシノナガキクイム シの共生菌伝搬機構

発表者:遠藤力也・二井一禎

受賞理由:社会的に緊急性の高 い問題を取り上げ,カシノナガキクイムシの共生菌伝搬機構に関する新規性の高い現象を分かりやすく発表した。質疑応答も明確に行っていた。データの提示の 仕方などに配慮し,結果をより丁寧に示すと一層完成度が上がったと思われる。応用面での重要性は明らかだが,今後,本現象の生態学的な意義についてさらに 追究されることを望む。


伊藤亮(京大・動物行 動)

研究題目:種内コミュニケー ションに音声を利用しないマダガスカルのトカゲ類2種による鳥類警戒声の盗聴

発表者:伊藤亮・森 哲

受賞理由:発声しないトカゲ2種が「盗聴」 を行っているというユニークなアイディアを,明確な実験により検証し,分かりやすく発表した。本現象の一般化への展開も期待される。今後,本現象が真に 「盗聴」と呼ぶに値するのか,トカゲ類の聴覚の進化に関する本現象の関与,被食者(トカゲと鳥)間に種間関係が成立しているのか,などについて検証を進め られることを望む。

第9 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2009-12-13)

中島啓裕(京都大・理)

研究題目:High risk, but high returns —マレーシア・サバ州におけるパームシベットによる種子散布—

発表者:中島啓裕・Jumrafiah, A.S.

受賞理由:地道な野外調査に基づき,種子散布に関わる興味深い問題について優れた研究を行っている.

mtDNAによる糞の種判定も適切なアプローチである.ただし,講演ではデータの提示が十分でないところがあった.また動物・植物それぞれの立場から,あるいはそれらを群集の中で位置づけながら,今後さらに入念な分析を行ってほしい.


京極大助(京大・農・昆虫生態)

研究題目:他種が存在するときにのみ見られるアリー効果

発表者:京極大助・西田隆義

受賞理由:自らの研究課題や関連する議論に対する理解が深く,明快な視点で繁殖干渉がアリー効果に与える影響に関する分析を行っている.質疑に対する受け答えも的確であった.今後,より実証的な研究を自らのデータに基づき進めていってほしい.

第8 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2009-6-20)

川添のぞみ(奈良女大・人間文化)

研究題目:鳥類育児寄生者のホスト乗換え仮説に関する数理的研究

発表者:川添のぞみ

受賞理由:托卵に関する昔からの謎について,荒削りながら巧みな理論的検討を加えることで,やや意外とも思える結果を導き,今後の野外研究で検討する価値の高い指針を提案した.


八杉公基(京大院・理)

研究題目:魚食性魚類の捕食−被食関係に見られる左右性の影響

発表者:八杉公基・堀道雄

受賞理由:近年明らかとなってきた興味深い現象について,それを生起させる因果関係を

丹念な胃内容分析と精密な計測から解明した.速やかな論文発表が望まれる.


岡本朋子(京大院・地球環境)

研究題目:チャルメルソウ節植物における花の匂いが介在した生殖隔離機構

発表者:岡本朋子・奥山雄大・後藤龍太郎・加藤真

受賞理由:特異な共生系の知見を巧みに活用しながら,多彩な手法によって独創的な結果を導きつつある.今後さらに,送粉者がGeneralistとSpecialistの場合の対比にも意を注いで欲しい.プレゼンの技能も高い.

第7 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2008-12-13)

後藤龍太郎(京大院・人間環境)

研究題目:カンコノキ属4種の開花・結実フェノロジーとその種子食性送粉者の生活環

発表者:後藤龍太郎・岡本朋子・加藤真(京大院・人間環境)

受賞理由:充実したフィールドワークにもとづいて,絶対共生系のフェノロジー・生活環を近縁種間で比較した研究であり,発見的価値があるとともに発展性が期待される.

授賞の言葉:「2年間、奄美大島に毎月通って行った研究がこのような形で評価 されて大変嬉しいです。研究を支えて下さった方々や今回の講演を聞いていただいた方々、また貴重なご意見をくださった方々にこの場を借りて御礼申し上げます。これを励みにこれからも研究を頑張って行こうと思います。」


鶴井香織(京大院・農)

研究題目:分断色がもたらす捕食回避と配偶成功の拮抗的効果〜ハラヒシバ ッタにおける性に依存した黒紋の意義

発表者:鶴井香織・西田隆義(京大院・農)

受賞理由:体色に雌雄間多型を示す好材料を対象にして,体色に関して捕食回避と性的干渉の間にトレードオフが存在する可能性を巧妙な実験で明らかにしている.

授賞の言葉:「この度は、日本生態学会近畿地区会において第7回奨励賞を受賞 することができ、大変嬉しく思います。

プレゼンテーションを評価されるという場は初めてで緊張しましたが、とてもいい経験になりました。また、受賞できたことで研究のモチベーションも上がりました。今後、もっと面白い研究ができるよう精進致します。ありがとうございました。」

第6 回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2008-7-26)

藤田真梨子(神戸大院・農)

研究題目:ヤマモモキバガの資源利用がヤマモモの果実生産に及ぼす影響

発表者:藤田真梨子・前藤薫(神戸大)・松井淳(奈良教育大)・寺川眞理(広島大)・駒井古実(大阪芸術大)・湯本貴和(総合地球環境学研)


山本哲史(京大院・理)

研究題目:クロテンフユシャクの生態学的種分化:季節適応が生殖隔離をもたらす

発表者:山本哲史・曽田貞滋(京大院理)

第5回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2007-12-15)

相川 慎一郎(神戸大院・理)

研究題目:野外における開花抑制遺伝子FLCの発現フェノロジー

第4回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2007-6-23)

鎌倉真依(奈良女大院・人間文化)

研究題目:葉内CO2濃度に対する気孔の応答とその種間差


安部倉完(京大院・理)

研究題目: 根絶に向けての外来魚種除去の取り組み

第3回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2006-12)

潮 雅之

研究題目:ボルネオ島キナバル山における林内スケールでの土壌微生物群集の局在化


出口詩乃

研究題目: 里草地におけるワレモコウの生育分布

第2回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2006-6)

小宮竹史(京大院・理)

研究題目:琵琶湖固有魚類の多様化は採餌適応が引き起こした?−コイ科ヒガイ属魚類におけるケーススタディ


大石理子(奈良女大院・人間文化)

研究題目: 落葉を抑制するハモグリガと落葉抑制の生態的意義

第1回日本生態学会近畿地区会奨励賞(2005-12)

細 将貴(京大院・理)

研究題目:カタツムリとカタツムリ食のヘビの共進化