第二話

「フロンティア入試って何それおいしいの?」の巻


絶対 零子(ぜったい れいこ) 北大物理学科2年

出身地: 北海道礼文町 血液型: O(RH+)型
好きな食べ物:ちくわパン 好きな物理公式: Maxwell方程式

・物理が大好きでギークな女子。
・小3のクリスマスはサンタクロースに「旋盤」をお願いした。

壱石 真理(いちいし まり) 博士

出身地: 不明 血液型: 不明
年齢: 不詳
尊敬する人: リチャード・P・ファインマン

・素粒子物理から物性物理まで幅広い分野をカバーする物理学者。猫好き。


第二話 「フロンティア入試って何それおいしいの?」の巻



零子 「はかせこんにちは! 天気が良かったので羊ケ丘に行ってクラーク博士(の像)と一緒に、おなじみのポーズで写真撮ってきました♡

はかせ 「フッ…「若さ」、か…(遠い目)
Boys be ambitious. あの言葉には続きがあるのを知っているかな?」

零子 「えっ・・・続きがあるのですか!? 

はかせ 「フフフ…」

"Be ambitious not for money or selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame..."

零子 「(なんて流暢で美しい英語・・・)

はかせ "Be ambitious for that attainment of all that a man ought to be."

零子 「・・(もしかして試されてる?)

え、えーっとぉ。


・・・お金や名声などという利己的な欲求は、儚(はかな)く虚(むな)しいものである。
人としてどうあるべきかを考え、それを
目指すための大志を抱け・・・

ということですか? 」

はかせ 「フム。零子くんは英語が得意のようだね。」

零子 「いえす!実は、TOEFLを受験するためにコツコツお勉強してました。
クラーク博士の有名な言葉には、そんなに深い意味が込められていたのですね
・・・ 

(ってことは訳間違ってなかったのかな?焦るー)

はかせ 「結構結構。国際的に活躍することのできる人材となるためには必須の能力だ。物理学科の卒業研究発表会は英語で発表する決まりだから、今のうちに英語でディスカッションする練習もしておくといいだろう。」

零子 「わっかりました。ISP(Integrated Science Program)の外国人の学生さんが聴講している授業は、もうすでに英語で実施されていますし、英語の重要性は毎日感じています。

そういえば大学入試でもTOEFLやTOEICなどの外部試験のスコアシートが使えるようになるみたいですね。

はかせ 「既に大学「院」入試では英語の外部試験を使うことができる。一方で、大学(学部)入試への外部試験の活用はひと悶着あったようだが、確かに変革の波は押し寄せている。零子くんは「フロンティア入試」という新しい入試が始まるのを知っているかね?」

零子 「フロンティア・・・開拓者精神のことですか? 実学の重視、などと並ぶ、北大の理念の一つですね。」

はかせ 「そう。もちろん現代ではフロンティアという言葉はメタファーとして用いられている。学問におけるパラダイム転換や新たに提起される人類的課題に応え得る研究を不断に展開することが、北大の理念にあるフロンティア精神の定義である。」

零子 「試される大地、北海道ならではの理念ですね。フロンティア入試ではそれを試されるのですか?」

はかせ 「直接そういった素養をはかることは難しいが、これからの社会で求められる素養として、根は繋がっているだろう。

現代社会では、AIなどのデジタル技術やグローバル化の進展等により、「知識をどれだけ習得したか」ではなく、「知識をのように活用するか」、思考・発想する力が求められる。今までのような暗記中心の教育では国際社会の中で日本は取り残されてしまうかもしれない。その点で思考力・表現力・判断力を問おうとする入試の改革が求められているわけだ。」

零子 「そんな教育の大改革を成し遂げるとなると、高校教育との連携が必須ですね。」

はかせ 「Genau(確かに)。それを実現するために国策として「高大接続政策」が実施されている。受験で高い点数をとるためだけに勉強するという考えでは、今後の社会でやっていけなくなる。クラーク博士も仰っているとおり、今こそ「学ぶ」とは何か、「人としてどう生きるか」を真剣に考えるタイミングなのかもしれん。」

零子 「(クールな外見とは裏腹に実は情熱的!) ・・・では、具体的に大学入試はどうかわるのでしょうか?」

はかせ 「詳しくはWEB。。。」

零子 「えっ・・・。」

はかせ 「Just kidding...

2022年4月入学生から、新しい入試制度、「フロンティア入試Type II」がはじまる。」

零子 「(冗談も言うんだ・・・)

Type Two…ってことはType Oneもあるのですか?」

はかせ 「左様。だが物理学科ではTyp II(ツヴァイ)のみ実施されるので、それ以上のことは私に聞かないでほしい。」

零子 「(ご存じない・・・のかな? )

わ、わっかりました(笑)

それでは物理学科で実施されるフロンティア入試Type Two(トゥー)について詳しく教えてください!」

はかせ 「まず大きな変更点は、「大学入学共通テストは活用しない」ということだ。代わりに、(従来のAO入試などよりも)作成負担を軽減した出願書類により第一次選考を行なう。その配点は調査書・個人評価書が80点。自己推薦書が20点の配点となる。」

零子 「まずは書類選考が行われるのですね。」

はかせ 「そして第1次選考に合格した者に対して、第2次選考として適性試験と面接(口頭試問)を課し、基礎的な知識・技能と共に、思考力・表現力が評価される。適性試験では前半(60 分)で数学の計算問題、後半(120 分)では数学及び理科 (物理・化学)の論述問題が課される。(詳しい出題範囲や配点についてはここでは割愛するが、入試要綱やホームページ等の情報をしっかり確認してほしい。)」

零子 「学力もしっかり試されるのですね。面接ではどんなことをきかれるのですか?」

はかせ 「主に物理の内容に関する議論を通して、「論理の展開」、「表現力」、「会話力」を評価し、併せて「英語(大学入学共通テスト(リスニングを除く)に準ずる内容)の能力」を確認する。」

零子 「ここまできくと、従来のAO入試とあまり変わらないように思えるのですが・・・」

はかせ 「Not really.
従来のAO入試と異なる点は、特別な準備・経験・実績は必要ないということだ。また、AO入試では募集定員が若干名、だったのに対し、フロンティア入試では募集定員が最大14名まで増員される。」

零子 「わー。物理学科の本気度が感じられます。」


はかせ 「我々が求める学生像は、知的好奇心豊かで,将来物理学における研究をする意欲を持つ学生 ・研究を遂行するために必要な物理学の基本的知識と思考法を修得している学生・物理学に関する数学的導出法や実験による検証法に強い興味を持つ学生、だ。そういったやる気のある生徒諸君は、臆すること無くどんどん挑戦してほしい。」

零子 「ちょっと敷居が高そうですが、要するに他はちょっと苦手だけど「物理は得意!」っていう人向きってことですね。」

はかせ 「その通り。学問の扉は公平に開かれている。」

零子 「他に出願要件はありますか?」

はかせ 「高等学校において,「数学III」及び「物理基礎・物理」を履修している者に限られる。」

零子 「それは大事だと思います。物理学を深く学ぶには微積分や確率統計は必須ですし、高校で物理をやっていないと専門科目で周りについていくのが大変だというのは容易に想像できます。」

はかせ 「一方で総合入試・後期入試も引き続き行う。

総合入試で入学した学生は、教養科目を学ぶ中でゆっくり自分の進路を定めることができ、多様な価値観に囲まれ人脈が広がる、というメリットがある。しかしながら、総合入試では入学後のGPA(Grade Point Average: 成績評価値)順で2年次以降の配属学部が決まるため、希望学部に配属されないミスマッチが生じたり、希望学部に行くため成績ばかりが気になり、腰を据えて勉学に励めないというネガティブな面も問題になっていた。」

零子 「その気持ちは、とてもよくわかります!

私も総合入試(総合理系)で入学したので、物理学科に配属が決まるまでは気が休まりませんでした。でも、フロンティア入試は後期入試と同じ扱いなので、進級要件さえ満たせば物理学科に配属されることが約束されているのですね。それは精神的にとても楽だと思いますし、腰を据えて專門科目も勉強できると思います。入学当初から物理学科を目指している学生には、とてもメリットが大きいと思います。」

はかせ 「我々もやる気のある学生は大歓迎だから、物理学科を目指している学生は、本制度をうまく利用してほしい。」

零子 「意欲のある「物理好き」が集まりそうですね!

受験生のみなさん、受験勉強は大変だけどがんばってくださいね。私達も北大でお待ちしてます!」


(おわり)

ここまで読んでくれてありがとう!第回につづく


まとめ

フロンティア入試(Type II)の特徴をまとめると以下の3点になります。(現時点での情報です。正式な入試要綱では変更される可能性もあります。)

(1) 試験:共通テストを受ける必要はありません(試験科目は「数学・理科(物理学・化学)」のみ)。

(2) 面接:物理力と英語力をはかる質疑応答を行います。

(3) 出願:従来のAO入試と違い、特別な準備・経験・実績は必要ありません。


最新の情報は

北海道大学 物理学科 「フロンティア入試特設サイト

北海道大学 アドミッションオフィスのWebページ(入試案内) をご参照ください。